五百円診察料を巡る冤罪、追い詰められた医者の逆転劇第3話
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その言葉を合図に、群衆の怒りは完全に爆発した。
いつも僕のところで無料のマッサージを受けていた青木陽子(あおき ようこ)が、よろよろと前に出てきて、震える手で僕を指さしながら罵った。
「この前、腰が痛いって言ったら、あんた半月もかけて治しただろう!わざと効きの遅い治療をして、金を多く取ろうとしたんじゃないのかい!」
僕は言葉を失った。
あれは彼女の体に負担をかけないよう、最も穏やかな施術を選んだ結果だった。
あのとき彼女は、僕の手を握りしめて何度も感謝していたはずなのに。
続いて渡辺京一郎(わたなべ きょういちろう)が息子を連れて押し出てきた。険しい顔で怒鳴りつけた。
「この前、うちの息子が足を骨折したとき、お前が接骨しただろう。あれもぼったくってたに違いない。
さっさと金を返せ!さもなきゃ、クリニックを叩き壊すぞ」
はっきり覚えている。あの事故は真夜中に起きた。
僕は寝床から飛び起き、応急処置を施し、夜明けまでかかってようやく手当てを終えた。それでも受け取ったのは材料費の六千円だけだった。
それだけではない。
かつて僕が死の淵から引き戻した佐藤悠(さとう はるか)までが、今ではへらへらと笑いながら未桜の配信カメラの前に立ち、僕を指さして見世物のように扱っている。
「みなさん、こいつが俺に違法な手術をした悪徳医者です!
今でも傷が痛むんですよ!腕が悪かったせいで後遺症が残ったに違いない!」
彼の手は機械に巻き込まれて無残に損傷していた。あのとき僕はやむなく屋外で緊急のデブリードマンと縫合を行い、なんとか彼の手を救ったのだ。
だが今、その命を救った事実が、逆に僕を罪に陥れる「証拠」として語られていた。
「あなたたち……よくもそんな無情なことを」
母が駆け出してきた。痩せた体で僕の前に立ちはだかり、怒りに震えていた。
「この子がどんな人間か、私が一番よく分かってる。
みんなのために大病院の仕事を捨てて、こんな貧しい村に戻ってきたのに……どうしてこんな仕打ちをするの」
しかし、誰一人として耳を貸さなかった。
彼らの目にあるのは、煽られて膨れ上がった怒りと欲望だけだった。
そのとき、一台の車が道端に止まった。制服姿の職員たちが降りてきて、厳しい表情で告げた。
「住民からの通報を受けました。無資格医療および薬価の不当吊り上げの疑いがあります。
ただちにクリニックを閉鎖し、調査に協力してください」
配信の画面では、コメントが一斉に沸き立った。
【ついに当局が来た!完全にクロだ】
【痛快だな!徹底的に処罰しろ】
目の前のこの騒動に、視界がぐらりと揺れた。
何度か深呼吸をして、僕は引き出しを開け、この数年分の仕入れ伝票と帳簿をすべて取り出した。
「証拠が欲しいんでしょう?これが証拠です!
全部の仕入れ記録と料金帳です。ご確認ください!
僕は一銭たりとも余分に取ってはおりません。
それどころか、母が老後のために貯めてくれた六十万円をつぎ込んだのです」
机の上に積み上げられた伝票と帳簿の山を見て、その場にいた全員が一瞬言葉を失った。
だが未桜はすぐさま前に出て、甲高い声で反論した。
「そんな帳簿、どうせ自分で適当に書いたんでしょ?伝票だって偽造できるわ。
金額だって全部あなたの言い分次第じゃない」
「外に出て聞いてみてください。市立病院でいくら取られるか」
僕は目を血走らせて彼女をにらみつけた。
「この書類には全部、製薬会社の印が押されています。どうやって偽造するのですか?疑うなら調べてください」
これだけの証拠を出せば、さすがに言い返せないはずだった。
だが、未桜は冷笑を浮かべ、さらに決定的な一撃を放った。
「たとえ外より少し安かったとして、それが何だっていうの?それを隠れ蓑にして、女性患者にセクハラが許される理由になるの?」
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