二度目の人生、私はもう中隊長の夫に執着しない第2話
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実際のところ、慧奈は軒也をキープしていただけだった。だって、あの頃の軒也なんて、ただの中隊長にすぎなかったから。もっといい相手が現れるのを待っていたのだ。
私は学校まで足を運び、大学進学に必要な手続きや、生活費がどれくらいかかるのかなど、色々と確認した。その上でようやく安心して帰路についた。
軒也の家族寮に戻ると、ドアを開けた瞬間、慧奈が甘えた声を出した。
「軒也、お姉さんをほっといて私のところに来てくれて……お姉さん怒らないかな?」
「大丈夫、いつだって彼女の相手はできるさ。
でもお前は、生理のたびに辛そうだから、放っておけないんだよ」
慧奈は嬉しそうに笑い、でもすぐにわざと寂しげな顔をした。
「ねえ、軒也、お姉さんと結婚しても、今みたいに私に優しくしてくれる?」
「もちろんさ」軒也はきっぱりと言った。「お前以外に誰を大事にするっていうんだ?」
「もしお前のお姉さんが、お前に冷たくするようなことがあったら……俺は彼女と離婚するよ」
私はギュッと拳を握りしめ、どうにかして胸の痛みを堪えた。
人生をやり直しても、やっぱり、夫がこんなにも冷たくなるのを聞くと、心が痛むものだ。
気持ちを整えて、何食わぬ顔で部屋に入った。
しばらくして、軒也が慧奈の部屋から出てきた。顔には少し気まずそうな表情が浮かんでいる。
「俺は……慧奈の具合が悪そうだったから、ちょっと様子を見てきただけだ」
私はそっけなく「うん」とだけ返し、部屋へ戻ろうとした。
前世では、こういう曖昧な関係に何度も腹を立てて喧嘩した。
でも、今世ではもう、そんなことに時間も気力も使いたくない。
「楓花(ふうか)」彼が私を呼び止めた。
「ちょっと、家族寮のみんなに、結婚祝いのお菓子を配ろうか?」
私は彼を驚いた目で見た。きっと、私が怒らずに静かにしているから、何か埋め合わせのつもりなのだろう。
「別にいいよ、そんな形式だけのこと、必要ない」
彼は一瞬きょとんとした。まさか私が断るとは思わなかったのだろう。
「お姉さん、軒也が私のことばかり気にしてるから、怒っちゃったの?」
慧奈が部屋から出てきて、いかにも傷ついた、無垢な顔をして言った。
しかも彼女が着ているのは――私が結婚写真のためにわざわざ買ったドレスだった。
それは、前世で半年も節約してようやく買った、大切な一着。一度も着ることなくしまっておいた。
私の視線に気付いた慧奈は、慌てて言い訳した。
「今日、お姉さんのベッドの横にこのドレスがあって、可愛いなと思って……ちょっと着てみたかっただけ。脱ぐのを忘れちゃったの」
うつむいて、指をいじりながら、子供のようにしょんぼりしている。
軒也も思わず口を開いた。「楓花、お前は……」
私はそれを遮り、淡々と告げた。「よく似合ってるよ。あげるわ。私、一度も着てないし」
そのドレスから、ほのかに汗の匂いがした。前世のこの夜、泣きながら家に駆け戻ったことを思い出す。
今思えば、本当に嫌な思い出だ。
二人の驚いた視線を背に、私は自分の部屋へ戻って鍵をかけた。
カバンから書類袋を取り出す。中には深南大学の合格通知書が入っていた。
前世から南の土地が好きだった。特に、あの大学の経済学部は私の憧れだった。
前世では、軒也のために学業を諦め、家に引きこもって義両親の世話をした。
でも、今世はまだ間に合う。もう、私の人生は私だけのものにしたい。
カレンダーをめくる。あと十日で、私はこの場所から出て行ける。
時間はない。一秒でも無駄にせず、準備しなければ。
トントン、と突然ドアがノックされた。私は少しイライラしながらドアを開ける。
軒也が、両手でラーメンを持って立っていた。優しい声で言う。
「お腹空いただろ?ラーメン作ったよ」
一瞬、心が揺れた。
前世では、彼が私に優しくしたことなんて、ほとんどなかった。冷たくされたり、傷つく言葉を浴びせられたり、そればかりだった。
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