二度目の人生、私はもう中隊長の夫に執着しない第3話
この話は約1445字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
こんなにも優しげな軒也の姿を見るのは、もうずいぶん久しぶりだった。
「結構よ、外で食べてきたから」
「そんなはずないだろ?いつもお金にシビアだったじゃないか」
その一言が、胸にチクリと刺さった。
確かに、私は昔はお金を惜しんでいた。食費も生活費も切り詰めて、バイトで稼いだお金のほとんどを彼のために使って、色々買ってあげていた。
でも、これから私は大学生になる。お金がかかることなんて山ほどあるし、一円だって無駄にはできない。
私は彼を見上げて、落ち着いた声で言った。
「そういえば、数日前に結婚用品を買うよう二万円渡したよね。
あなた買ってないみたいだから、返してもらえる?」
彼は一瞬動きを止めたが、すぐに気まずそうに言い訳した。
「そのお金……慧奈のために靴を買ったんだ」
私は思わず口をへの字に曲げた。本当にこれだもの、呆れてしまう。
「もういい。用はないから、私は寝るね」
「明日ちゃんと返すよ」
彼は少しイラついた声で言った。「俺たち夫婦なのに、そこまで細かくする必要ある?」
私は冷たく鼻で笑った。「じゃあ、私が苦労して貯めたお金で他の女に物を買ってあげても、文句の一つも言っちゃいけないわけ?」
彼は自分が悪いのを分かっているはずなのに、まだ強がって「理不尽だな」とぼそっと呟いた。
私はもう関わる気もなく、バタンと勢いよくドアを閉めた。
数日後、私は家にあるガラクタをいくつか売り払った。前世では思い出が詰まった品々だったけど、今となっては安物のゴミにしか見えない。
全部まとめて、安値で回収業者に売った。手に入ったのはほんのわずかなお金。
午後も引き続き荷物整理をしていると、軒也がやってきた。
手にはあの二万円を握りしめて、ぶっきらぼうに言う。「ほら、返すぞ」
私は黙って受け取って、うなずいた。「ありがとう」
彼は複雑そうな目で私を見て、それから荷物の山に目をやった。
「慧奈を先に連れて、京市に行こうと思う。お前はもう荷造りしなくていい」
私は手を止めずに、軽くうなずいた。
彼は私の態度に戸惑ったのか、少し落ち着かない様子で言った。
「最近……どうしたんだよ。まるで別人じゃないか」
私は煩わしさに顔をしかめ、そっけなく答えた。波風を立てたくなかった。
軒也は私を愛していない。でももし彼が、婚姻届に慧奈の名前が書かれていると知ったら、慧奈のためにまた私と再婚するかもしれない。
そんなクズ男女と、もう二度と関わりたくない。
「別に。ただ荷物をまとめたいだけ。あなたが京市に行ったら、私は田舎に戻るつもりだから」
彼はほっとしたように息をつき、言い訳めいた口調で続けた。
「お前を連れて行かないわけじゃないんだ。ただ慧奈が京市を見てみたいって言うから、しばらく二人で行ってくる。数ヶ月したら迎えに来るさ」
私は上の空でうなずいた。
前世では、八年もの間、彼は私を迎えに来なかった。
慧奈が京市の名家出身の軍官と結婚して、ようやく私を京市に呼んだのだ。
彼は落ち着かない様子で私を見た。
昔なら、二人きりになれば私はずっとおしゃべりしていたのに。
今の私は必要なことしか話さない。それが逆に彼を不安にさせているようだった。
「お前、ずっと結婚写真を撮りたかっただろ?明日写真館に行こうか?」
それは困る。明日は大学生活のための買い物に行く予定なのだ。
私は断る理由を考えていると、慧奈が部屋に入ってきた。甘えるように軒也の腕に絡む。
「軒也、写真館って何?慧奈も一緒に写真撮りたいなぁ」
軒也は笑いながら慧奈の頭を撫でた。「いいよ、明日みんなで行こう」
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