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不倫夫に父を殺された私、即座に離婚第2話

この話は約1679字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

父との思い出にふけりながら、誰もいないがらんとしたリビングに座っている。

スマホの画面が再び明るくなり、真一からの着信を知らせた。

呼び出し音が長く鳴り響き、一度切れてはまた鳴り出した。

その名前を見つめる私の目は、まるで赤の他人を見ているかのようだ。

ようやく音が止んだ。

数秒後、友人から音声メッセージが届いた。

再生してみると、騒がしい物音の向こうから、あゆの声がうっすらと聞こえてきた。

「社長、あんなの放っておけばいいんですよ。女を甘やかすと、調子に乗るだけですから」

続いて、真一の冷ややかな声が響いた。

「美奈子、変な勘違いをするな。あの一億円の広告は、あゆが新しく入社したからだ。俺の秘書として、周りに示しをつける必要があったんだ。

さっさと反省して、明日までに家の中をきれいに片付けておけ。

さもないと、あの二千万円もなしにするからな」

私は無表情でそれを聞き終えると、画面を指でなぞって音声を保存した。

それから、一言メッセージを送った。

【明日、役所で会おう】

翌朝早く、私は役所へと向かった。

ロビーは行き交う人々で溢れ、笑顔で籍を入れる者もいれば、黙り込んで離婚手続きを待つ者もいる。

隅のベンチに腰掛け、受付番号の紙をぎゅっと握りしめている。

九時。

九時半。

十時。

真一は現れなかった。

彼にメッセージを送った。

【役所で待ってる】

昼近くになってようやく、真一の秘書・日野徹(ひの とおる)から電話がかかってきた。

「奥様、社長は今、会議中です。お遊びに付き合っている暇はありません。

社長がおっしゃっていました。子供のようなわがままはいい加減にしろ、と。

それから、社長は夜、家で食事をされますので、大好物の唐揚げを用意しておくようにとのことです」

ツーツーと音がして、電話が一方的に切れた。

騒がしいロビーの真ん中でスマホを握りしめて立ち尽くす私に、周囲の視線が針のように突き刺さった。

――わがままって?

父がひどく苦しめられ、亡くなったというのに、彼の目には私がただ拗ねているようにしか映らないのか。

激しい怒りが全身を襲い、すべての理性を焼き尽くした。

私は電話をかけ直した。徹が出ると、苛立ちを隠そうともせずに言った。

「奥様、さっきも申し上げましたが……」

「丸岩真一を出して!」

私がスマホに向かって怒鳴り声を上げると、その声の大きさにロビー全体が静まり返った。

「彼に伝えなさい。出ないなら、丸岩グループの本社ビルから飛び降りてやるって!

彼にはっきり見てもらうね!」

私の口調があまりに尋常ではないからか、あるいは「飛び降りる」という言葉に徹が怯えたのか。

ガサゴソという雑音の後、真一の声が聞こえてきた。

抑えきれない怒りが滲んでいる声だ。

「美奈子、いい加減にしろ。いつまで狂った真似を続ける気だ?

大声を出すな。お前にプライドがなくても、俺には世間体があるんだ!」

その声を聞いた瞬間、私はかえってすっと冷静になった。

激しい怒りの果てに訪れたのは、燃え尽きた後の静けさだ。

「真一、私は正気よ。

一つだけ聞かせて。離婚するの、しないの?」

真一は鼻で笑った。

「離婚?お前にそんな資格があるか?

美奈子、よく思い出せ。お前の衣食住も、お前の父親の医療費だって、すべて俺がお金を注ぎ込んできたんだぞ。

あゆはただの秘書だ。彼女はお前より優秀で、向上心もある。それを妬んでるのか?

俺の妻はいつだってお前だ。大人しく従いさえすればな。

二度と離婚を盾に俺を脅そうとするな。そんな手は通用しない」

彼は確信に満ちた口調で、私が自分から離れられないと高を括っている。

――けれど残念ね。あんな美奈子はもう死んだのよ。

私はポケットの中にある、くしゃくしゃになった預金通帳に手を触れた。

それは、父が私に遺してくれたものだ。

中にはわずか四十万円しか入っていない。父が爪に火をともすようにして貯めたお金だ。

父は言っていた。

「美奈子、もし丸岩家で辛い目に遭ったら、このお金でチケットを買って、いつでも家に帰ってくるんだぞ」

――お父さん、私、すごく辛い。

だけど、もうお家には帰れないの。

だって、お家がなくなっちゃったんだもの。

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