和紙文一番の選択 · 第2話設定≡

一番の選択第2話

この話は約1742字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

一夜にして、私は夫を裏切った女となり、世間の非難を浴びた。

一方、彼と栞里は罪のない被害者と見なされた。

「署名はするわ。でも、一つだけ約束してほしいの」

しばらくして、私は言った。

蓮はちらりと私を見て、同意するように頷いた。

彼がペンを差し出し、私はそれを受け取ると、何の感情も見せずに離婚届に自分の名前を書き込んだ。

「もう一度、書類を確認しないのか?」蓮は眉をひそめて尋ねた。

私は微笑んだ。「必要ないわ」

蓮は実質的身一つで家を出ることにして、全財産を私に譲った。ただ栞里のため、恩師への恩義に報いるためだけに。

「明日、時間を作って役所に行こう」

「ええ」と私は答えた。

離婚届を持つ蓮の手がわずかに止まり、私を見る彼の瞳にはいくらかの戸惑いが浮かんでいたが、結局何も言わなかった。

彼らが去る時、栞里は振り返って嘲るように私を一瞥し、薄い唇が声もなく、「あなたの負けよ」と形作った。

確かに私は負けた。

一周目の人生では、すべてを失ったのだから。だから、今度はもう負けたくない。

しばらくして、私のスマホの画面が光った。蓮からのメッセージだった。

【今日のことは、辛い思いをさせたな。ハルカ、すまない】

【この件が落ち着いたら、改めて盛大な式を挙げて、再婚しよう】

【栞里のうつ病が悪化するのを、黙って見ているわけにはいかないんだ。君なら理解してくれるだろう?】

私はこの言葉を見て、思わず笑ってしまった。目尻には涙が浮かんでいた。

一周目の人生でもそうだった。

蓮は私に離婚を迫るため、友人の江川源英(えがわ げんえい)に相談して策を練り、泥酔するまで飲んだ。

しかし蓮は忘れていた。彼の友人は、私の友人でもあったことを。

源英は、一方では栞里のために結婚を犠牲にするなと蓮を懇々と諭した。その一方で、私のところへも来て、蓮は情に厚い人間だから理解してあげてほしいと取りなしたのだった。

当時、もし栞里の父親が蓮の能力を見込んで投資し、起業を助けていなければ、今日の蓮はなかっただろう、とも言っていた。

その時の私は泣きながら反論した。

「蓮には、この件をはっきりさせる方法がいくらでもあったはずよ。どうして離婚じゃなきゃいけないの?」

源英は黙り込んだ。

源英は蓮に尋ねたことがあった。その時の蓮の答えはこうだった。

「どちらか一人には、すまないと思わなければならない。ハルカに辛い思いをさせるしかない。彼女は俺を愛しているから、理解してくれるはずだ」

私が彼を愛しているから、私を犠牲にする。

そんな理屈があるものか。

幸い、私には二周目のチャンスがある。

栞里に関することなら、蓮はいつも素早く処理する。

昼間に私から離婚届に署名をもらったばかりなのに、夜には記者会見を手配し、さらにアシスタントをよこして、私に釈明のための出席を求めてきた。

私がまだ口を開かないうちに、アシスタントは私がてっきり断ると思ったのか、蓮から託された言葉を私に伝えた。

「浅野(あさの)さん、この記者会見には、出席なさるべきです。桐谷社長のためでなくとも、あなた自身の評判のためにも」

私は一瞬呆気に取られ、やがて鼻で笑った。

蓮は私を脅している!

またしても、一周目の人生で私に使った手口で私を屈服させようとし、汚名を着せ、世間の非難の中で私がもがくのを放置するつもりなのだ。

最終的には、私が頭を下げるしかないように。

ずっと理解できなかった。蓮は一体、私を妻として見ていたのか、それとも敵として見ていたのか......?

今、彼は私との関係を公に明らかにしたいと思っている。

それは、私も望むところだった。

記者会見は、京北(ケイホク)で最高級ホテルのロビーで開かれた。招待されたのは業界内で最も影響力のある記者ばかりだった。

栞里が華やかなドレスを着て蓮の腕を組み、並んで現れると、記者たちは瞬く間に殺到した。

蓮はとっさに栞里を背後にかばい、笑顔で彼女に向けられたマイクを遮った。「後ほど、皆様の質問には一つずつお答えします」

「今はどうか、少し場所を空けていただけませんか?」

蓮の声は穏やかだったが、顔を上げた瞬間、同じように記者たちに囲まれている私と目が合った。

二人の目が合った時、私は心のどこかで、蓮が私の窮地も救ってくれるのではないかと、密かに期待していた。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)