一番の選択第1話
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桐谷蓮(きりたに れん)と結婚して五年目、彼がホテルで囲っていた女性の存在が暴露され、世間に知れ渡った。
あの女性に「不倫相手」のレッテルを貼られるのを防ぐため、蓮は離婚届を持ち込んだ。「桜井(さくらい)先生には昔世話になったんだ。先生は亡くなる前に、栞里(しおり)のことを頼むと言い残された。今、こんなことが明るみに出て、放っておくわけにはいかない」
ここ数年、桜井栞里(さくらい しおり)は常に蓮にとって最優先だった。
一周目の人生でこの言葉を聞いた時、私は取り乱して大騒ぎし、どうしても離婚したくなかった。
重度のうつ病を患うまで......
蓮は栞里の「なんか病気には見えないね」という一言を鵜呑みにし、私が仮病を使って気を引こうとしているだけだと決めつけた。そして、私が浮気したかのように画策し、直接離婚訴訟を起こしたのだ。
その時になってようやく、私は結局、彼が口にする恩師への恩義の前では、私の存在など無力なのだと悟り、絶望して自ら命を絶った。
再び目を開けると。
私はためらうことなく、離婚届に署名した。
* * *
「ハルカ、この件が落ち着いたら、また再婚しないか?」
別荘の庭で、私が石のベンチに座ってぼんやりしていた時、桐谷蓮(きりたに れん)が桜井栞里(さくらい しおり)を連れて目の前にやってきた。
ほんの三時間前のことだ。
栞里が蓮の不倫相手ではないかとパパラッチに報じられた。記事で彼女の過去を暴き立て、私と蓮の間に割り込んだ不倫相手だ、邪魔者だと罵っていた。
蓮の愛妻家というイメージはガラガラと崩れ落ち、桐谷グループの株価は揺らぎ始めた。
一周目の人生で、蓮が離婚届を持って現れた時、私は憎しみのあまり、庭に彼が私のために育てていた薔薇をすべて引っこ抜き、ヒステリックに彼と栞里の関係を問い詰めた。
ただの恩師の娘にすぎないのに。解決する方法なんていくらでもあったはずなのに。
それなのに、彼はよりにもよって私たちの結婚を犠牲にすることを選んだ。
それはただ、栞里のうつ病を悪化させたくないという理由だけからだった。でも蓮はネットで騒ぎが大きくなっていたその時期、私も中程度のうつ病と診断されていたことを知らなかった。
「ハルカ」蓮が再び私を呼び、ぼうぜんとしていた私を現実に引き戻した。
私は目を伏せ、石のテーブルの上に置かれた離婚届に視線を向けた。
蓮は私の足元に片膝をつき、深い瞳で私を見つめ、熱い手のひらで私の手を包み込んだ。
その口調には、なだめるような響きがあった。
「ハルカ、頼む。俺のためだと思ってくれないか?」
「俺たちの結婚はとっくに形だけで、一年前から離婚するつもりだったけど、タイミングがなかっただけだって、公表するんだ」
私がなかなか口を開かないでいると、彼の後ろにいた栞里が白いワンピース姿で、肩には蓮の上着を羽織り、唇を白くさせ、目の周りを赤くしていた。
「ハルカさん、お願い、助けてくれませんか?」
「母はネットでの誹謗中傷が原因でうつ病になり、自殺したんです。母と同じ道を歩みたくない。ハルカさん、土下座しますから、どうか助けて......」
言い終わるか終わらないかのうちに、栞里が膝をつこうとした瞬間、蓮が素早く立ち上がって彼女を支え、慣れた手つきで彼女を腕の中に庇った。
顔色を悪くし、低い声で叱る。「何してるんだ?」
栞里は言葉を詰まらせ、か弱い声で、泣きじゃくりながら、涙を浮かべた瞳を伏せた。
「私......ただ、ハルカさんの気持ちが少しでも楽になればと思って」
蓮は顔にたちまち苛立ちの色が浮かんだ。私に向けた視線からは、先ほどの優しさは完全に消え去っていた。
「ハルカ、今は相談しに来たわけじゃない」
「この件はもう決めたことだ。もし離婚したくないなら、俺を責めるなよ......」
私が静かに顔を上げて彼の視線を受け止めると、彼の言葉は途中で途切れた。
でも、彼が何を言おうとしていたかは分かっていた。
彼はこう言うつもりだったのだ。「ハルカ、俺のやり方は知っているだろう。君に大人しく署名させる方法なんていくらでもある」
「わざわざ訴訟まで持ち込みたいならそれでもいいが、桐谷グループの弁護士に勝てるわけがない」
これは、一周目の人生での彼の言葉そのものだった。その後、私は罠にはめられ、数人のホストのベッドに送り込まれ、浮気の証拠は揺るぎないものとされた。
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