パーティーで死にかけている第3話
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まさに指先が薬袋に触れようとしたその瞬間、ハイヒールの鋭い踵が薬袋を踏みにじり、地面に擦りつけた。
「あら、死にそうだった割には、ずいぶんと素早く動けるのね?」
シャーロットはウェイターを押しのけ、声を張り上げた。
「アメリア、ちょっと目を離した隙にこれ?バレバレよ。さっきの演技を褒めたのは取り消させてもらうわ!」
彼女の大声により、再び全員の注目が集まった。
案の定、イーサンは一度だけ振り返って私を一瞥したが、さらに苛立ちを募らせて再び背を向けた。
だが、私はそれどころではない。焼け付くような苦痛に耐え忍び、シャーロットの足元にある薬袋を取り出そうと手を伸ばした。
彼女は私にだけ聞こえる低い声で嘲笑った。
「心臓が苦しくて、もう死にそう?なら、もっと苦しい思いをさせてあげるわ」
長いテーブルクロスの下に鋭いハイヒールの踵を隠し、彼女は目を細めながら、私の伸ばした腕を全力で踏み抜いた。
鈍い音がして、重いヒールが肌に食い込んだ。
感覚が麻痺している私は、呻き声すら上げられない。
その時、傍らに押しのけられたウェイターがテーブルの下を指さし、悲鳴を上げた。
「血だ!血が出てる!」
その声に反応し、眉をひそめたイーサンは客たちをかき分けて私の前に駆け寄ったが、その光景を見て言葉を失った。
可哀想な私の腕には、先ほどのガラス片による傷があったが、それがシャーロットのハイヒールによって深く抉られ、鮮血が噴き出している。
芝生を赤く染める凄惨な光景に、イーサンは私の蒼白な顔を見て、突然動揺した。
「アメリア!今すぐ病院へ運ぶぞ!」
彼は迷うことなく、私を抱きかかえようとした。
シャーロットの顔に一瞬の恐怖がよぎったが、すぐに冷静さを装い、彼を制した。
「大丈夫よ、イーサン。ただのかすり傷よ。救急科に行くまでもないわ。医者の私がここで手当てしたほうが早いもの」
シャーロットはわざとらしく丁寧に私の腕を持ち上げた。傷口からはどくどくと血が流れ、彼女のハイヒールの底についていた泥や草が混じって、見るに堪えないほど汚れている。
「アメリア、注目を集めるために自分を傷つけるなんて。わざとここまで来て、ガラス片で自分の腕を切ったんでしょう?イーサンに愛されてるからって、こんな傷で彼を屈服させたいわけ?彼の代わりに私が怒りたくなるわ!」
イーサンは血まみれのガラス片の山を見つめ、瞬く間にシャーロットの嘘を信じ込んだ。彼の表情は氷のように冷え切った。
「本当なのか、アメリア?お前は、俺が大切な人の病気や怪我を恐れてると知りながら、自分の体を傷つけてまで俺を脅すのか?」
死にかけて視界も定まらず、表情すら動かせない私を見て、イーサンはさらに激昂した。
「お前は俺のために、少しの我慢もできないのか!いいか、アメリア。決まったぞ!俺たちはパーティーが終わるまでここを動かない!シャーロット、お前が手当てしろ!
今後、アメリアを特別扱いする者がいれば、ロールストーン全体を敵に回すと心得ろ!」
その言葉は、私への死刑宣告と同じだ。
それを聞いて勝ち誇ったシャーロットは、壊れた人形を扱うように私の傷ついた腕を乱暴に引っ張り上げた。
「イーサン、心配しないで。こういう怪我には慣れてるから。まずは消毒ね!」
彼女はウイスキーを手に取り、そのまま傷口に注ぎ込んだ。
焼け付くような激痛に襲われ、弱っている心臓が止まりそうになったが、逆に意識は少しはっきりした。
私は血を吐き出し、喉の奥から声を絞り出した。
「私の……私のパパは……レイシーだ……あなたたちを……決して許さない……」
しかし、シャーロットは大笑いした。
「パパ?西区の薬中か、東区の酒浸りかしら?
私のパパはこの街の病院を牛耳ってて、ロールストーンとも深い繋がりがあるのよ。私に喧嘩を売るなんて、百年早いわ!」
私の視界は何度も暗転し、心臓は苦痛の限界を超えて麻痺し、窒息しそうになっている。
だが、シャーロットの取り巻きの一人が、突然声を震わせた。
「レイシー……まさか、全国のマフィアを支配してる、あのレイシー家のこと?」
「バカね、彼女は嘘つきよ!イーサンが言ってたわ。この女は落ちぶれた三流役者だって。イーサンに拾われなかったら、今頃どこかで立ちんぼをやってるに違いないって!
レイシー家だって?命惜しさに呆れた嘘をつくものね!」
シャーロットの言葉に、取り巻きたちは一斉に笑い声を上げた。
イーサンは最悪の表情を浮かべて振り返り、死にかけている私を見捨てて遠ざかっていった。
体が徐々に硬直し、意識が遠のく中、突然、遠くに見覚えのある人影が揺れた。
涙で視界はぼやけているが、たとえ幻覚であっても構わないと、私はその影に助けを求めた。
「パ……助けて……」
シャーロットは傲慢に笑った。
「自分のことを本気でマフィアのプリンセスだと思ってるの?どこの誰のこと?あなたのファンか、それとも新しいパトロンかしら?」
イーサンの姿が見えなくなると、取り巻きたちは私の髪を掴み、何度も頬を平手打ちした。
世界が暗転し、耳鳴りと彼女たちの大きな笑い声だけが響く。
「目を覚ましたら?あなたが私たちに殺されたところで、誰も助けになんて来ないわよ!」
体が最後の警報を鳴らし、私は冷や汗の海の中に横たわり、絶え間なく震えている。
絶望して目を閉じようとしたその時、聞き覚えのある凄まじい怒号が響き渡った。
「よくも俺の娘を……レイシー家の娘を辱めてくれたな!一人残らず、地獄へ送ってやる!」
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