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スーパーのポイントで買った愛第2話

この話は約2000字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

志津香の言葉で、はっと思い出す。そうだ、このネックレスは去年の誕生日に、息子がプレゼントしてくれたものだ。

サプライズにしたかったらしく、オークションには匿名で参加してくれていた。だから、あの「子連れの富豪」が誰なのか、世間には知られていない。

志津香のあまりに自信満々な物言いに、幸樹はすっかり彼女の話を真に受けてしまったらしい。彼は眉をひそめ、詰問してきた。

「ただ金にがめついだけの女だとは思っていたが、まさか、金のために愛人にまで成り下がっていたとはな」

私は何も言い返さなかった。こんな人間たちと議論するだけ、時間の無駄だ。

しかし、私の沈黙を、幸樹は「図星を突かれて反論できない」のだと都合よく勘違いしたらしい。彼はスマホを取り出し、電子決済の画面でも開くかのように、わざとらしく溜め息をついた。

「いくら欲しい?払ってやる。ネックレスを壊した『補償』、という名目でな」

「いらないわ。大した金額のものじゃないから」

私は冷たく答えた。嘘は言っていない。このネックレスは息子が「お小遣い」で買ってくれたものだ。私にとっては、値段の問題じゃない。

それに、元カレから金を受け取ったなんて知られたら、あの人がどれだけ嫉妬深いか……想像するだけで恐ろしい。

幸樹は一瞬固まったが、すぐに侮蔑の薄ら笑いを浮かべた。「理嘉、勘違いするなよ。俺が金を出そうとしたのは、お前がこれ以上落ちぶれるのを見ていられないからだ。

それに、ここはチャリティーパーティーの会場だ。元カノに生活費を恵んでやるのも、人道的配慮ってやつだろう?お前に対して他意はない。それは金輪際だ」

私が幸樹をまったく相手にしないのを見て、志津香が幸樹の背後からぬっと現れ、彼の腕にまとわりついた。「ヤダ、こんな女もう放っておきましょう?体を売ってるような人、どんな病気を持っているか分からないわ。うつされたら大変だもの。

それに、一流大学を出ているんでしょう?落ちぶれたと言っても、普通に仕事を探せば食べていけるはずだわ。それをわざわざ男に頼るなんて、ただの怠け者で向上心がないから……」

「堀川志津香!」私は彼女の言葉を鋭く遮った。「口を慎みなさい。公の場でデマを流せば、法的な責任を問われることになるわ!」

志津香は私に一喝され、ビクッと怯えたように幸樹の後ろに隠れた。けれど、すぐに強気に睨み返してくる。「あら?やましいことをしておいて、開き直るつもりなの?」

私は本気で焦ってきた。もう日が傾き始めている。息子の社会科の課題がまだ終わっていないのに、こんな二人に絡まれて時間を無駄にしている場合じゃない。

散らばったペットボトルを拾おうと屈んだ、その瞬間。幸樹が再び、乱暴に私の腕を掴み上げた。

「理嘉、あの時は俺があげたゴム手袋を馬鹿にしたくせに、今のお前はゴミ拾いか!

今さらお前が俺の前で泣いて土下座したって、もう二度と振り向いてなんかやらないからな!」

……もう呆れて言葉も出ない。この人、本気で、あのゴム手袋が原因で別れたとでも思っているの?

当時、志津香は既婚者のパトロンと付き合うために幸樹を振った。絶望した幸樹は歩道橋から飛び降りようとし、それをたまたま通りかかった私が止めたのだ。

私の見えないところで死なれたら迷惑だ――そんな動機だったけれど、私は彼の辛い時期をずっと側で支え続けた。

私の存在が、志津香の穴を埋める「代用品」になったのかもしれない。幸樹の好意は日増しに大きくなり、やがて彼の猛アプローチに根負けする形で、私は交際を承諾した。

……だがある日、例のパトロンに騙されて捨てられた志津香が、彼の元に戻ってきた。

その日を境に、幸樹は私を避けるようになった。電話に出ない。メールも返さない。

そして、迎えた私の誕生日。彼がよこしたのは、スーパーのポイントで交換したゴム手袋。それは、私が「家政婦」程度の存在でしかないという、無言の通告だったんじゃないの?

皮肉なことに、あの時の私はまだ彼に期待していた。メディアがスクープを報じる、その瞬間まで――幸樹が、オークション会場で志津香のために一億円の宝石を落札したと知るまで、私の心は、完全には死んでくれなかったのだ。

彼は、わかっていない。私が傷ついたのは、ゴム手袋そのものの価値じゃない。

私は彼の手を強く振りほどき、赤くなった手首をさすりながら言った。「幸樹。私は今、とても幸せなの。だから、あなたが心配する必要なんてないわ」

幸樹はまだ疑わしげに私を睨んでいる。私は仕方なく、最後の一撃を放つことにした。

「それに……私、もう結婚しているの。夫がいるのよ。私にそうやってベタベタ触っているところを見られたら、ウチのひと、すごく不機嫌になっちゃうから」

幸樹は、まるで殴られたかのように二、三歩後ずさった。その顔には、信じられないという衝撃が浮かんでいる。

「……なんだと?俺に黙って……結婚した、だと!?」

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