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まだ花嫁になれない私第2話

この話は約1380字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「ありがとうね、礼司さん」

二人は息の合ったやり取りをしている。

そのやり取りを聞いているだけで吐き気がしたが、私はもう慣れてしまった。

礼司は、若菜のやることにいつも甘かった。

会社では誰もが礼司を「社長」と呼ぶのに、若菜だけは特別に「礼司さん」と呼ぶことを許されていた。他の社員なら些細なミスで容赦なく怒鳴られるのに、若菜がいくら大きな損害を出しても、礼司はいつも見て見ぬふりをしていた。

1ヶ月前も、若菜の失策で億単位の取引が台無しになった。

社内から批判の声が上がる中、礼司は議論すらせず、その全責任を私に押し付け、1年分の給料を減額した。

腹を立てた私が抗議すると、彼は悪びれる様子もなく言った。「長年一緒にやってきた仲なのに、なぜこんな小さなことで責めるんだ?

たかだかその程度の金、お前にとっては大したことないだろ?若菜は生活が厳しいんだ、給料まで減らされたらどう生きていくんだ?

そんなに気に入らないなら、あとで埋め合わせしてやればいいんだろ?」

今回のこの結婚式も、その「埋め合わせ」のひとつだった。

沈黙する私に、礼司は溜め息をついた。「蛍、少しは若菜を見習ったらどうだ?彼女の方が年下なのに、ずっと大人だぞ。

若菜はずっと前向きに解決策を探しているし、結婚式が完璧になるよう、わざわざ自分の両親まで招待したんだぞ。

お前は親がいないんだから、来られないのは仕方ないとしても。嫌なことがあるたび不機嫌になって対話を放棄して、後始末を投げ出すのはもうやめろ」

両親について触れられ、私から思わず皮肉な笑みがこぼれた。

礼司が子供の頃、自宅で火事があった。私の父は礼司を救おうと炎に飛び込み、重傷を負ってそのまま亡くなった。母もそのショックから立ち直れず、早逝してしまったのだ。

母が亡くなったその夜、礼司は泣き崩れる私を抱きしめ、絶対に離れないと何度だって誓ったはずだ。

それからまだ8年。今の礼司にとって、私の両親の死は、若菜より劣っていると言うための材料でしかなかった。

昔なら泣きわめいて大喧嘩していただろう。でも、今は違う。礼司が若菜のためにあまりに理不尽な行動を繰り返してきたおかげで、私の心は驚くほど冷めていた。

「そうね、私が間違っていたわ」私は低くつぶやいた。

穏やかな口調だったからか、礼司の態度も少し緩んだ。

「悪かったと分かればいいんだ。素直に謝って若菜と和解すれば、この話は……」

最後まで言わせず、私は冷淡に話を遮った。

「勘違いしているみたいね。

言いたいのはね、そもそも私があなたと入籍なんてするべきじゃなかった。何より、父があなたみたいな恩知らずを助けるんじゃなかった、ということよ」

礼司は呆気に取られ、顔を赤くして怒鳴った。「蛍、それどういう意味だ?」

彼が怒り出す様子を見て、昔のように必死に謝って機嫌を取るような真似はやめた。

ただ静かに、こう告げた。

「礼司。離婚しよう」

離婚という言葉に、礼司の動きが止まった。

「なんだと?

蛍、いつからそんなに器の小さい女になったんだ?たかがこんな小さなことで、俺と離婚するつもりなのか?」

私はてっきり、礼司がこのまま怒りに任せて、離婚を承諾するものだと思っていた。

先日も彼は寝言で若菜の名前を呼んでいた。若菜のことがこれだけ好きなのなら、私が別れて二人が結ばれるようにお膳立てしてあげれば、礼司だって願ってもないはずだ。

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