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まだ花嫁になれない私第1話

この話は約2104字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

結婚式で、夫の秘書・西野若菜(にしの わかな)が新郎新婦の写真を間違えて映し出してしまった。

スクリーンに映し出されたのは、私・柴田蛍(しばた ほたる)とのウェディングフォトではなく、夫・柴田礼司(しばた れいじ)と若菜が伝統的な婚礼衣装で手を取り合い、見つめ合っている、とても幸せそうな姿だった。

会場が騒然となった。

ミスをした若菜が泣きじゃくりながら、式を延期してほしいと私に懇願する。

礼司は慌てる様子もなく、低く落ち着いた声でこう耳打ちした。

「みんなもう来てるんだから、今さら延期なんてしたら面目丸つぶれだし、縁起も悪い。それに、どうせ誰も花嫁の顔なんて詳しく知らないだろう。だったら、とりあえず若菜に代理で式に出てもらえばいい」

参列した友人たちは、礼司のそんな身勝手な発言を聞いて、私が怒り狂うのではないかと唖然としていた。

しかし私は淡々と頷き、その提案に乗ることにした。

私の冷静さに気を良くした礼司は、どうせ入籍も済ませているんだからと、いずれ日を改めてちゃんと挙式してやる、と言い残した。

だが、彼は決定的な勘違いをしている。

他の女を花嫁の代役に立てたあの瞬間、私の中ではすでに離婚の決意が固まっていたということに。

* * *

結婚式で、夫の秘書・西野若菜(にしの わかな)が新郎新婦の写真を間違えて映し出してしまった。

スクリーンに映し出されたのは、私・柴田蛍(しばた ほたる)とのウェディングフォトではなく、夫・柴田礼司(しばた れいじ)と若菜が伝統的な婚礼衣装で手を取り合い、見つめ合っている、とても幸せそうな姿だった。

会場が騒然となった。

ミスをした若菜が泣きじゃくりながら、式を延期してほしいと私に懇願する。

礼司は慌てる様子もなく、低く落ち着いた声でこう耳打ちした。

「みんなもう来てるんだから、今さら延期なんてしたら面目丸つぶれだし、縁起も悪い。それに、どうせ誰も花嫁の顔なんて詳しく知らないだろう。だったら、とりあえず若菜に代理で式に出てもらえばいい」

参列した友人たちは、礼司のそんな身勝手な発言を聞いて、私が怒り狂うのではないかと唖然としていた。

しかし私は淡々と頷き、その提案に乗ることにした。

私の冷静さに気を良くした礼司は、どうせ入籍も済ませているんだからと、いずれ日を改めてちゃんと挙式してやる、と言い残した。

だが、彼は決定的な勘違いをしている。

他の女を花嫁の代役に立てたあの瞬間、私の中ではすでに離婚の決意が固まっていたということに。

ベールを外し、それを礼司の手に託すと、彼と周囲の気まずそうな視線などお構いなしに、私は式場を後にした。

式場の外に出るまで、礼司が私を追いかけてくることはなかった。

背後からは歓声が沸き起こり、礼司と若菜は人だかりの中心で壇上に上がっていた。

それがミスではないと、私は知っている。

あれは、若菜からの挑発だ。

あいにく、礼司にはその策略が見抜けない。あるいは、気づいていてもあえて泳がせているのだろう。

昔の私なら傷ついていたかもしれないが、今は驚くほど穏やかな気持ちだった。

私は帰宅し、何も考えずに寝直した。

礼司は面倒なことを嫌うため、結婚式の準備から何まで、すべて私一人で背負い込んできた。

間違いのない式にしようと、最近は仕事を終えて帰宅するや否や、ホテルの選定、招待状のチェック、引き出物選びと走り回っていた。昨日は最終確認のために未明までリハーサルを繰り返し、そのせいで今も胸が痛む。

今となっては、全てが無駄に思える。

そんなことなら、私も最初から手を抜いておけばよかった。

うとうとしていると、礼司からの電話で目が覚めた。

「蛍、式が終わったんだが、どこにいる?」

弾むような声を聞いて、滑稽な気分になった。私が帰ってからこんなに時間が経っているのに、彼は私がいないことにすら気づいていなかったらしい。

気づいていないというより、最初から私に意識など向けていなかっただけなのか。

あくび混じりに返事をした。「家にいるわ」

電話の向こうが、一瞬沈黙した。

「蛍、まさかまだ式のことで拗ねてるのか?」礼司はいつものように、分かっていながら白々しく尋ねた。

けれど今回は外れだ。怒ってなんかない。ただ、馬鹿らしくて無関心になっただけだ。

「ううん、違うわ」と答えた。

礼司は鼻で笑って信じない。「拗ねているんだろうが、あれは会社のために必要な処置だったんだ。

今日来ているゲストは主要な取引先ばかりなんだ。写真くらい間違えるようなお粗末な組織だと判断されたら契約に関わる。お前に恥かかせたくなくてそうしたんだぞ。

それに、若菜だって今日は相当な重圧の中で頑張ったんだぞ。周りからどれだけ酒を飲まされたか、お前は知らないだろう?お前の代わりにあれだけ飲んでくれたんだから、感謝するのはお前のほうだ」

私は呆れてものも言えない。

式の最中の喧騒に乗じて、礼司は誰かに脳みそでも奪われたのではないかと疑いたくなった。

私の言葉を待たずに、隣で若菜が控えめな声を出した。「礼司さん、そんなこと言わないでよ。私の当然の務めだから」

「そんなことはない、若菜。機転の利いた対応だったよ。後日、経理に言って昇給させる」

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