すれ違った愛第2話
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女の押し殺した喘ぎ声が、男の動きに合わせて途切れ途切れになる。
遼真の唇が寧音の眉や瞼に触れ、優しく囁いた。
「寧音、綺麗だよ」
次の瞬間、彼はふと気配を感じたのか、こちらを見て皮肉げに笑った。
「覗き癖でもあったのか?だったら、今まで本番をやるの時も外に出すんじゃなかったな」
寧音が小さく悲鳴を上げ、慌てて遼真の胸にしがみつく。
「紗世……いつから起きてたの?びっくりするじゃない……遼真、彼女を部屋に戻らせて」
遼真は笑いながら彼女の髪を撫で、私が動かないのを見ると、眉をひそめて私の肩を押した。
「寧音が部屋に戻れって言ってるだろ。耳が聞こえないのか?それとも足が動かないのか?」
……夢じゃなかった。
買い物から戻って、ソファで遼真を待っていた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
私は足の痺れを我慢して立ち上がり、無言で寝室へ入った。リビングからは断続的に声が漏れてくる。
どれくらい経っただろう。寝室のドアが開き、上半身裸の遼真が現れた。声は行為の後のようにかすれている。
「寧音の体、拭いてやれ」
私は動かなかった。
遼真が眉を寄せ、冷たく言い放つ。
「紗世、二度言わせるな」
私は深く息を吸い込み、彼の目を真っ直ぐ見返した。
「遼真、もう……私を解放して……あなたは寧音を娶るんでしょう?彼女と幸せになって」
遼真の顔に暗い影が差す。
「解放?笑わせるな。お前が俺を地獄に落としたんだろ。何だ?これくらいでもう限界か?
じゃあ、俺と寧音が結婚して子どもができたら、お前が産後のを世話する番になった時、どうするつもりだ?」
視界が滲む。
遼真の指が乱暴に私の涙を拭った。
「泣いてどうなる?紗世。俺の気持ちを踏みにじったのはお前だ。あの時、命を懸けてもお前を守るつもりだったのに。
まだ始まったばかりだ。母親の治療を続けたいなら、大人しく言うことを聞け。逆らうな」
――浴室。
私は麻痺したように手を動かし、寧音の背を洗っていた。
誰も口を開かなかった。
やがて、寧音が静けさを破る。
「紗世、怒ってる?」
私は少し考え、首を横に振った。
彼女は微笑んだあと、小さく息を吐いた。
「ねぇ、遼真には真実を絶対に言わないでね。……私、妊娠してるの。子どもに『家』をあげたいの」
私はぼんやりと彼女のお腹を見つめた。
あの時のことを、一番よく知っているのは彼女だ。
父の会社が突然倒産し、自殺。
母はショックで寝たきりになった。
私は父の携帯で脅迫メッセージを見つけた。
破産は偶然じゃなかった。誰かの仕業だった。
真相を突き止めようと警察に相談した直後、車に轢かれかけた。
その時、ようやく悟った。
――私も狙われている、と。
そして脅迫状が届いた。
「次は遼真を狙う」と。
だから、私は彼に別れを告げた。
熱を出して倒れた彼を一晩中看病し、朝になってようやく落ち着いた時、私は寧音を呼び、彼女に遼真を世話するよう頼み、すべてを隠すように頼んだ。
まさか、こうなるなんて――
寧音は妊娠し、遼真は彼女を娶るという。……これで、みんな幸せ。
もう、言うべきことなんてない。
「分かった。秘密は守る」
そう答えると、寧音はぱっと笑顔になり、私に抱きついた。
「さすが紗世。ねぇ、最後にもう一つだけお願い。遼真が、完全にあなたを諦めるようにして」
笑みが一瞬で歪んだ。
何が起こったのか理解する間もなく、彼女は私の手を掴んだまま、体を沈めた。
水面が激しく揺れ、彼女の悲鳴が響く。
――遼真が駆け込んできた時、
彼の目に映ったのは、私が寧音を水に沈めている光景だった。
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