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この7年、彼は一度も私に一番のものをくれなかった第1話

この話は約2307字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私の名前は皆月渚(みなつき なぎさ)。

桐生要(きりゅう かなめ)の借金を返済し、彼が社長になるまで支えてきたこの7年間、私の生活用品は、ほとんどが中古品かお下がりだった。

スマホは十数年型落ちのもので済ませ、綿が抜けた古いコートは繕って着ていた。

雑巾に至っては、隣人が引っ越す際に捨てた古着から切り出したものだ。

あの時の要は、いつも私を抱きしめ、心配そうな目でこう言った。

「渚、もう少しだけ待ってくれ。

必ず盛大な結婚式を挙げてやるから」

私はそれを信じた。

だが、7年目。結婚式のリハーサル会場で。

要は私に中古ウェディングドレスを投げ渡した。

「これは江里子の家族が十年前の結婚式で着たものだ。

普段倹約に慣れているお前には、高級ドレスは似合わない。この旧式のほうがいい」

反論する間もなく、私が選んだスーツの代わりに、父はみすぼらしいジャケットを無理やり着せられていた。

「お前の父親も田舎出で、スーツのマナーなんて知らないだろう。

江里子の叔父さんが着ていたこのジャケットが、ちょうどいい」

東雲江里子(しののめ えりこ)は、要の初恋の相手だ。

先月離婚して帰国したばかりで、今は要の隣に立っている。

私は手にした、誰かが着古したドレスを見下ろし、顔を上げて父のぎこちない笑顔を見つめた。

その瞬間、ふと思った。

7年も待ったこの結婚式は、もう必要ないのだと。

「一番高いドレスを一着頼む」

私はそう言って、誰かに電話をかけた。

このドレスを着て、別の人に嫁ぐのだ。

* * *

試着室から出てくると、父がまだおずおずと説得していた。

「要さん、俺はこの服で構わないんだが、渚の結婚式は一生に一度のことなんだよ」

傍らで江里子が寂しげに俯いた。

「おじ様、私が離婚したから、私の物を蔑んでいるのですか?

それなら、持ち帰りますわ」

「皆月さん、江里子も善意でやってるんですよ。そこまで酷いこと言う必要はないでしょう」

要は警告を込め、冷酷な口調で言い放った。

「彼女は繊細なんですよ。そんなこと言えば、彼女を傷つけるだけです」

父の顔色がさっと青ざめた。

私は手にしたドレスを強く握りしめ、胸の奥に鋭い痛みが走った。

繊細?

じゃあ、私とお父さんは?私たちは傷ついてもいいっていうの?

「渚、どうしてまだドレスに着替えていないんだ?」

要は振り返り、私のそばに来て低い声で言った。

「あのドレスは少し古いが、生地はいいんだ。

普段からそういう『ヴィンテージ風』の服を着るのが好きだろう?

お前が一番聞き分けがいいのは分かっている。いいから、早く着替えて見せてくれ」

聞き分けがいい?

私は彼の手を振り払った。

確かに聞き分けが良かった。良すぎて、この7年間自分に新しいスカートを一着も買ったことがなかった。

私の持っている服の多くは古着か、格安でかき集めてきたものばかりだった。穴あきのセーター、黄ばんだ上着を、7年間ずっと着ていた。

だが、要に罪悪感を抱かせないよう、いつもわざと冗談めかして言っていた。

「これが『ヴィンテージ風』って言うのよ。好きで着てるんだから!」

当時の要は、何度も私に誓っていた。将来、世界中のドレスを私の目の前に届け、好きに選ばせてやると。

私も長く待った。

だが、江里子が帰国してまだ一ヶ月しか経っていないのに、要は彼女に高級ドレスを十数着も送り、彼女の「新生」を祝った。

それなのに、私が待たされたのは、お下がりのボロ切れだった。

私は前に進んだ。

「着替えないわ。

お父さん、その服を脱いで。帰りましょう」

「渚!」

要の声には、すでに不機嫌が滲んでいた。

しかし私は無視して、父のジャケットを脱がせるのを手伝った。

その時、一枚の癌の診断書が、突然ポケットから落ちた。

「これ……」

私の手が激しく震えだした。

「お父さんの診断書じゃないわ!これ、どこの誰が死んだときの古着なの?!洗濯すらしてないのに、よくも平然とお父さんに着せられたものね!

今日は結婚式なのよ!?縁起でもないにも程があるわ!」

「あ、ごめんなさい。多分、叔父さんが亡くなった時に、整理するのを忘れていたんだわ……」

江里子はおどおどと言った。

「要さん、わざとじゃないよ」

「服は綺麗なんだから、そんなに酷いことを言うな」

要は江里子を庇うように前に立ちはだかった。

「時代遅れの迷信もいい加減にしろ」

私の心は、ついに少しずつ砕けていった。

父の手を引き、そのまま背を向けた。

帰り道、スマホをマナーモードにし、彼からのメッセージに一言も返さなかった。

「渚、俺と要さんのことで喧嘩しないでくれ」

父は私を見て、不安そうな表情を浮かべた。

鼻の奥の痛みを堪え、淡々と笑った。

「お父さんと関係ないわ。

私が目を覚ますべきだったの」

父と食事を済ませ、私は住まいに戻った。

それから3時間後、江里子がSNSを更新した。

【要さん、ありがとう。また私の夢を叶えてくれて】

写真の中の江里子は、私のものであるはずのドレスをまとい、恥じらいながら要に寄り添い、冷やかしの声の中で彼とキスをしていた。

友人の「いいね」が多く付いており、そこにはかつて私の名前を親しげに呼んでいた顔ぶれが並んでいた。

私も「いいね」を押した。

次の瞬間、画面の上部に要からの新しいメッセージが表示された。

【あいつのSNSはからかい半分だ。離婚したばかりの人間を相手にするな。

今日の結婚式のリハーサルは、江里子が代わりにやってくれたんだ。高級ドレスも彼女にぴったりだったから、彼女にあげてくれ。お前はやはり、あの古いほうがいい】

【要、私に一番いいものをくれるって言ったはずよ】

私は静かにそう打ち込み、送信ボタンを押した。

相手は長い間、沈黙していた。

そして、ボイスメッセージを一通送ってきた。

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