あなたを知りません、六年後の再会第2話
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大学一年目の冬、私は学内ラジオのパーソナリティを務めることになった。
雪が舞うクリスマスイブの夜、あるうつ病患者からの電話相談を受けた。
彼は言った。
「今日の雪は、本当に綺麗ですね。
学校では恋人たちが幸せそうに寄り添っていて、温かい家庭では家族が集まって笑っている。
でも……僕だけは、この世界の片隅に置き去りにされている」
彼は語った。
幼い頃に両親を亡くし、祖母に育てられたこと。
祖母は彼にとても優しく、いつもこう言っていたこと。
「一生懸命勉強すれば、人生は変えられる」
彼はその言葉を信じでいた。けれど、故郷の田舎を出て初めて知った。
この世界は、彼が想像していたほど優しい場所ではなかった。
裕福な家庭で育った同級生と比べると、自分はあまりにも惨めで、何も持っていないように感じた。
その埋めようのない劣等感は、同級生の優しさによって消えるどころか――
むしろ、日に日に深くなっていった。
卒業が近づき、就職活動で何度も壁にぶつかった時、彼はようやく気づいた。
この世界は、決して真面目に生きる人間にだけ優しくしてくれるわけではないのだと。
面接官は笑いながら言った。
「地方出身で受験勉強だけしてきた学生なんて、ただの頭でっかちだ。社会に出れば、何の役にも立たない」
そして、大学四年の時、唯一の家族だった祖母までも、突然この世を去った。
彼は思った、もう何も残っていない。
この世界にあるのは、冷たい現実だけ。自分を気にかけてくれる人は、もう誰もいない。
「やっと分かったんです。
貧しい人間は、本当に運命を変えることなんてできないんだって。
仕事も見つからない。手元に残った生活費は、たったの1000円だけ。
だったら……この世界で生きている意味って何なんでしょうね。
もし校舎の屋上から飛び降りて、雪の中に赤い花を咲かせることができたなら……きっと、とても綺麗ですよね」
その時の私は、必死だった。
すぐに警察へ通報し、学内ラジオの仕事も放り出して、彼を止めるため校舎へ向かった。
その時の男子は宗弥だった。
冷たい風の中に立つ彼の顔は、あまりにも孤独で、胸が締め付けられるほど痛々しかった。
彼が目を閉じ、今にも飛び降りようとした瞬間、私は後ろから駆け寄り、彼の身体を強く抱きしめた。
宗弥は声を上げて泣き崩れた。
「どうして助けるんだ……僕みたいな役立たずを、どうして救うんだよ……」
私は彼の涙を拭いながら言った。
「あなたは役立たずなんかじゃない。この世界には、あなたを気にかけている優しい人がたくさんいる。
私も、その一人だから」
その後、私が低体温症で意識を失った時、宗弥は私を背負い、大雪の中を歩いて病院まで連れて行った。
彼は財布に残っていたたった1000円を取り出し、地面に跪いて医者に懇願した。
「どうか……彼女を助けてください。お願いします……」
目を覚ました時、病室の傍で一晩中私を見守っていた宗弥の姿を見て、私は鼻の奥がツンと痛くなった。
宗弥は、死にたいほど苦しんでいた。
でも私だって、同じだった。
私は袖をまくり上げ、腕に残った、無数の傷跡を彼に見せた。
両親が離婚した後、私は父に引き取られた。
父は浮気相手だった女子大学生と再婚し、可愛らしい男の子をもうけた。
その日から、私はもう、家族にとって大事な娘ではなくなった。
父は私にいくらでもお金を与えた。
けれど、もう愛情をくれることはなかった。
それどころか、継母の言葉を信じ、仕事の失敗までも私のせいにした。
父はよく、私を棒で殴った。傷だらけになった私の姿を見て、いつも笑いながら罵った。
「お前みたいな疫病神は、殴られて当然だ。
お前さえいなければ、俺が投資に失敗することなんてなかった。
全部、お前のせいだ!」
私だって、死にたかった。何度も、すべてを終わらせたいと思った。
でも分かっていた。私は死ぬわけにはいかなかった。
父のお金で大学を卒業し、父の支配から逃げ出す。
そして本当の意味で、自分だけの自由な人生を手に入れる。
宗弥の目が赤く染まった。彼はただ、一言だけ呟いた。
「これからは、僕たちがお互いの支えになろう」
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