あなたを知りません、六年後の再会第3話
この話は約1565字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私は、瞬く間に赤く染まった宗弥の頬を見つめ、思わず小さく笑った。
すると彼は、堰を切ったように何度も何度も謝り始めた。
その時、私は初めて知った。男子でも、ここまで繊細で傷つきやすい人がいるのだと。
宗弥は、手元にあったたった1000円で、私のためにお菓子を買ってきた。それを命を救ってもらったお礼だと言った。
残ったお金は、一週間分の生活費として綿密に計画した。
毎日、水と醬油だけでうどんを食べて一週間を耐え抜き、その間に仕事を見つけるつもりだった。
でも私は知っていた。宗弥のような純粋すぎる人間は、厳しい社会の中ではきっと傷ついてしまう。
そして、彼の自尊心を守るためにも、私は彼に、一回につき2000円の報酬を払うという条件で、私のラジオ番組の台本を書いてもらう仕事を提案した。
宗弥は、心から感謝しながらその仕事を引き受けた。
彼が書く台本の質はとても高かった。私は彼に大学院進学を勧め、研究の道へ進むよう背中を押した。
けれど、一年目、宗弥は大学院試験に合格できなかった。
彼は部屋に閉じこもり、長い間、何も言わずに過ごした。
そんな彼の扉を、私は叩いた。
「私は、ずっとここにいるよ」
そう伝えるために。
宗弥はまた、長い間泣き、そして言った。
「どうしてこの世界には、君みたいに優しい人がいるんだろう」
その夜、私たちは校舎の屋上に座り、一晩中星空を眺めていた。
宗弥は、おそるおそる用意していた指輪を取り出した。それは、彼が作った缶のタブを使ったリングだった。
そして、顔を真っ赤にしながら、たどたどしく尋ねた。
「……これ、つけてみてくれる?」
私は彼の瞳を見つめ、そして、一言も言わなかった。
彼が立ち上がって帰ろうとした時、その指輪は、もう私の人差し指にはまっていた。
後になって、宗弥は私に聞いた。
「僕は何も持っていないし、何も良いところなんてないのに……どうして僕と付き合ってくれたの?」
私は彼の耳元で、小さな声で答えた。
「だって、あなたが言ったでしょう。お互いの支えになろうって」
大学四年の時、宗弥と私は、同じ大学の大学院に合格した。
私たちは後輩たちから羨ましがられる、理想のカップルになった。
一緒に奨学金を受け取り、国際学術誌に論文を発表した。
指導教授でさえ言っていた。
「君たちの未来は、きっと輝いている」
けれど運命は、私に残酷な冗談を仕掛けた。
弟にそそのかされた継母は、大学まで押しかけてきて、私の顔に硫酸を浴びせた。
警察に取り押さえられた時、彼女は狂ったように叫んだ。
「どうしてこの疫病神を殺せなかったの!こいつさえいなければ、正弘が財産を奪われる心配なんてしなくて済むのに!」
その後、父は私に示談書へ署名させて、200万円を渡して言った。
「もし母さんと弟を訴えるなら、お前とは親子の縁を切る」
私の左顔はひどく焼けただれてしまった。
医師は言った、皮膚移植には少なくとも2000万円が必要だと。
何度も、悲しみのあまり死にたいと思った夜、宗弥はいつも私を強く抱きしめてくれた。
そして、一番優しい声で言った。
「何があっても、僕はずっと君のそばにいる」
彼は私のために、3Dプリンターで仮面を作ってくれた。そこには、私が一番好きだったキャラクターの絵が描かれていた。
星空の下、宗弥は私の顔を両手で包み込み、優しく口づけた。
「卒業したら、結婚しよう。君を海外へ連れて行く。
世界で一番優秀な医者を探して、必ず君の顔を治してもらう」
私は、星空のように真っ直ぐで澄んだ彼の瞳を見つめた。涙が止まらなかった。
その夜、私は彼を抱きしめ、長い間泣き続けた。
彼の胸の温もりは、この世界で、何よりも大きな慰めだった。
私は思っていた。彼の誓いは、夜空の恒星のように、ずっと変わらないものだと。
けれど――
真実はいつだって私が想像するよりも早く、そして、残酷な形で訪れる。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
S35096- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。