あなたの愛は遅すぎた第2話
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「鶴本!?どうしたの?」
彼は暗闇の中で体をこわばらせ、そっと私の頬に手をあてて、涙の跡がないことを確かめると、怒声をあげた。
「雷も雨もひどいのに、電話も出ないしLINEの返事もない。俺をどうさせたいんだよ!」
彼の言葉を聞いて、ようやく雨が窓を叩く音に気づいた。
迫り来る恐怖に、私は思わず鶴本の手をぎゅっと握りしめ、声を震わせながら呟いた。
「聞こえなかった……」
赤池はまさにこんな雨の夜に亡くなった。
だから雨の夜が来るたび、私は眠れなくなる。鶴本も同じく、こんな日を怖がっていた。だからこの五年間、恐怖に満ちた夜を何度も、二人で手を握り合い、互いを慰めながらやり過ごしてきたのだ。
彼はいつも、繰り返し優しい声で私を安心させてくれた、「怖がるな」と。
でも今、鶴本の顔色は悪い。
彼はしばらく私をじっと見つめ、ようやく口を開いた。「今日、俺のところに来い」
私は彼を押しのけ、首を横に振った。
「もう好きな人がいるんだから、私が行くのはおかしいでしょ」
彼の気遣いに、冷え切った心が少し温かくなった。しかし、彼のシャツの襟元に残っていた唇の跡を見た瞬間、また冷たい世界に引き戻された。
「裕美姉、もういい年なんだから、そんな嫉妬みたいなことはやめてくれよ。
君が怖がってるのを心配して、亜衣を一人でレストランに残してきたんだ。
今、俺と一緒に行かないってことは、俺が帰った後に電話して泣きながら俺を呼ぶつもりだろ? だったら、今すぐ一緒に帰った方が楽だろう」
私は唇を噛んで黙った。
以前、彼を呼ぶために電話をかけたのは、私たちの間にはお互いしかいなくて、彼もこんな雨の夜が怖かったからだ。
でも今、彼には好きな人がいる。私がどんなに彼に対する感情が複雑でも、彼の恋愛に割り込むことはできない。
私は振り返り、寝室に向かって歩きながら言った。「行かないよ。あなたは早く彼女のところに戻って。私は大丈夫だから」
その言葉を言い終わると、鶴本は私の手首を力強く引っ張り、何も言わずに私を外に引きずり出した。
手首が痛くて、私は激しく抵抗した。「何するの? もう行かないって言ったでしょ!」
彼は眉をひそめ、顔に浮かぶのは消えない苛立ちだった。
私が必死に抵抗し続ける中、とうとう彼は我慢できず、私をお姫様抱っこのように抱き上げ、そのまま腕の中に抱え込んだ。
鶴本は私を抱きかかえたまま外に出て、玄関で傘を手に取り、風雨の中を歩き出した。
雨は降りしきっていたが、私の体は一滴も濡れず、ただ鶴本の肩だけがびしょ濡れになっていた。
その様子を見て、私は自然と心配になった。
もし風邪を引いたら……
仕方なく抵抗をやめ、素直に彼の胸に身を預けた。
でも、数歩進んだところで鶴本の足が止まり、元々温かかった彼の体が一瞬で硬くなった。
顔を上げると、亜衣が少し離れたところに立っていた。
亜衣の傘は地面に落ち、雨に濡れた髪や服に、涙と雨水が混ざって落ちている。
彼女は身を震わせ、顔色を青ざめさせながら言った。
「これ、どういうことなの?」
鶴本は腕を緩め、私を下ろした。
私が立ち上がる前に、彼は亜衣に駆け寄り、傘で彼女を守った。
私は地面に倒れこみ、鶴本が亜衣を慰めながらタクシーで家に送ろうとしているのを見ていた。
出発前、彼は一言だけ私に言った。「自分でホテルでも探して。俺たちは先に帰るから」
その言葉を残して、二人は振り返ることなく去って行った。
私の注意は、お腹に走る激しい痛みと、雨に染まる鮮血にすべて奪われた。
いつの間にか意識を失ったのか、全く覚えていない。
目が覚めた時、妊娠と流産の知らせが一気に私を襲った。
私は無意識にお腹に手を当てたが、心の中に湧き上がるべき悲しみは一切感じなかった。
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