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あなたと永遠の別れを第2話

この話は約2079字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「清枝、早く彼女に謝って」

「基成……」

「黙れ。今すぐ謝れ!」

月美は彼の胸の中で小さく震え、音もなく涙をこぼしていた。その姿は、見る者の同情を誘うほどに哀れだった。

私の腕はすでに青黒く腫れ上がり、皮膚の下には内出血が広がっていた。

目を背けたくなるような傷。

けれど、基成は一瞥すらしなかった。

彼の目に映る私は、まるで罪深き犯罪者のようだった。

私は口元に苦笑を浮かべ、それ以上言葉を発さなかった。

「ごめんなさい」

基成はわずかに驚いたように目を見開いた。

だがすぐに、その視線はより冷たく鋭くなった。

「謝罪の気持ちが足りない」

私は背筋を伸ばし、深く頭を下げた。

「これで……満足?」

月美は私を見つめ、唇の端をわずかに持ち上げた。

そしてすぐに泣き出しながら基成に訴えた。

「もういいの、基成くん……

こんな謝罪、受け取れるはずないわ」

基成の表情は一変し、優しさを帯びた。

「清枝、前にも言っただろう。月美は他の女とは違う。

君が彼女を傷つけるほど、俺は君を嫌いになる。

そして彼女を、もっと愛するようになる」

そう言い残し、彼は月美を抱いたまま背を向けた。

私はその場にひとり立ち尽くした。どれほどの時間が経ったのかも分からない。

腕の痛みは針で刺されるように鋭かったが、心は驚くほど静かだった。

やっと分かった。

この瞬間、長年抱き続けてきた淡い夢想が、音もなく崩れ去った。

すべてが幻だった。煙のように、あとかたもなく。

その夜、基成はSNSにいくつも投稿をしていた。

すぐに、彼の投稿がスクリーンショットで私の元に届いた。

特にキャプション部分には赤線が引かれていた。

皆が私に何を伝えたいのか、私はすぐに理解した。

これまでなら、私はすぐに基成のもとへ駆けつけ、声を荒げて責め立てていた。

彼はいつも嫌そうな顔をしていたけれど、最後には私に折れてくれた。

だから私は、彼も私を気にかけているのだと錯覚していた。

そしてその錯覚が、私の歯止めを失わせていた。

だが今回は、私は沈黙を選んだ。

代わりに、一週間前の不在着信にかけ直した。

「陸田さん、私です。清枝です。

以前お話しされていた件、もう考えがまとまりました」

十三歳のとき、両親が事故で亡くなった。

墨谷家とは昔から親しい付き合いがあり、家も近かったことから、私はそのまま墨谷家に引き取られることになった。

しばらくして、陸田理恵(りくだ りえ)さんから電話があった。

彼女は母の若い頃からの親友だった。

だが、恋を追って遠方に移り住んだことで長年連絡が絶えていた。

彼女が江松で落ち着いた頃には、私の両親はすでにこの世を去っていた。

理恵さんは、私を江松市に迎えたいと言った。

そして、母と交わした若き日の約束を果たしたいと。

――私を自分の息子と結婚させ、陸田家の嫁に迎えること。

一週間前、私はすぐに返事をせず、「少し考えさせてください」と答えた。

だが今夜、私ははっきりと悟った。

これまでの片想いが、どれほど愚かだったか。

他人の話のネタになるような恋など、もう沢山だ。

半年前、基成は婚約を解消したいと言った。

私は泣きわめいて拒んだ。何度も。

だが、彼の意思が変わることはなかった。

今にして思えば、それが最良の決断だったのかもしれない。

運命というものは、きっとあるのだ。

電話越しに理恵さんが嬉しそうに言った。

「清枝ちゃん、周吾はずっとあなたの返事を待っていたのよ。

彼、もうすぐ江松に戻ってきて、あなたにプロポーズするつもりらしいわ」

スマホを握る手が熱くなり、頬もほんのり火照っていた。

けれど、耳元で響く彼女の笑い声は、なぜか遠く感じられた。

十年も想い続けた人。

でも、たった七日で忘れられるなんて。

基成と月美は、私が江松へ向かう日に婚約発表をした。

だから、私を見送ってくれる人はほとんどいなかった。

飛行機が着き、スマホの電源を入れると、通知音が鳴り止まなかった。

どれも、基成と月美の婚約に関する話題ばかりだった。

私は小さく笑って、すべての連絡先をブロックした。

江松に来る前に、私は陸田周吾(りくだ しゅうご)と会った。

目立つことも、噂になることも避けたかった。

彼は、そんな私の気持ちを理解してくれた。

そして、静かにプロポーズしてくれた。

指輪を交換し、簡素ながらも婚約を交わした。

口座には一億の結納金が振り込まれ、左手には控えめなダイヤの指輪が輝いていた。

陸田家の車に乗ろうとしたとき、携帯が鳴った。

発信者は基成の従妹、墨谷安芸(すみや あき)だった。

「清枝、お兄さんの婚約式、もうすぐ始まるよ!今どこにいるの?」

「ちょうど江松に着いたところ」

「早く戻ってきて!まだ間に合うから!」

「戻って何をするの?」

私は淡々と答えた。

安芸は言葉に詰まった。

「まさか、本当に諦めたの?

このまま何もしなかったら、お兄さん、ほんとに他人のものになっちゃうよ!」

「それはあなたの兄の問題でしょ?私には関係ないわ」

「清枝?」

安芸の声が一段と大きくなった。

「まさかとは思うけど、本気で頭おかしくなったんじゃないでしょうね!?」

電話を切ろうとしたその時――受話器の向こうから、月美の声が聞こえてきた。

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