あざとい女を選んだ元カレ、私の結婚を知ると絶望第2話
この話は約1888字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
これまでに私は、何度も挫けて彼を追いかけて喧嘩ばっかしてた。浩平と紬を「恥知らず!」とののしり、約束を破った彼をさんざん責めたんだ。
いちばんひどかった時は、彼らが入ったホテルまでつけていって、花瓶で浩平の頭を殴って病院まで搬送した。
友達の陣内凛(じんない りん)が、「夏美、もう……やめてよ。一人の男の人のために、あなたがボロボロになっていくのを見たくない」と心配してくれたこともある。
でも、どうして私が諦めなきゃいけなかったんだろう?
浩平が食べるものにも困っていた時、助けたのは私だった。
彼が会社を立ち上げる時も、狭いアパートで一緒に暮らして、私の貯金を全部つぎこんで支えた。
どん底の頃からずっと一緒にいて、彼が徐々に成功していく姿をすぐ隣で見てきたんだ。
浩平が愛してるのは私だけだって、分かっていた。紬に優しくするのは、昔の恩を返してるだけだってことも……
私を愛してくれる人と、やっと手に入れたこの良い生活も、どうして他の女の人にゆずらないといけないの?
でも2ヶ月前、紬に薬を盛られて、私は陣内大輝(じんない だいき)と一夜を共にしてしまった。
そのことを紬に問い詰めたら、浩平に初めて、ビンタされた。
その時、私は決めた。
世の中に男はいくらでもいる。浩平なんかに、もうこれ以上、時間を無駄にしたくないって。
「夏美!」
大輝の声で、私ははっと我に返った。
ふと顔を向けると、彼のキラキラと輝く瞳が私を捉えている。
大輝はいつもこうなんだ。まるで世界に私しかいないみたいに、まっすぐ見つめてくれる。だから、私の気分も少しは軽くなった。
「どうしてここに?」と私は聞いた。
大輝は、少し遠慮してるかのようにに近づいてきて言った。
「君と、お腹の赤ちゃんに会いたくて。それと、ウェディングドレスや式場の準備について、もう一度打ち合わせしたかったんだ。もしかして、邪魔だったかな?」
大輝は凛の兄で、いつもはクールで口数が少ない人だ。
ただ私に対してだけは内気で優しく、何ごとも私を一番に優先してくれた。
そんな、私にだけ見せてくれる特別なところが、私は好きなんだ。
私は首を横に振った。「ううん、そんなことない。ただ、一度うちに戻って荷物を片付けなくちゃいけなくて」
途端にぱっと顔を輝かせて、大輝が言った。「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
彼はお腹の赤ちゃんに優しく話しかけると、車で私を家まで送ってくれた。
浩平とは昔、本当に仲が良かったんだ。ツーショットの写真も、恋人のグッズも山ほど。彼がくれたラブレターだって、たくさんある。
大輝が「俺がやるよ」と言って、そんな思い出の品を全部処分してくれた。
浩平が紬のことで私を怒らせるたび、ごきげん取りで買ってきたブランド品も、すべて売り払った。
私がそんな片付けをしていると、紬から写真が2枚送られてきた。
一枚目は、浩平がエプロンをつけて、彼女にご飯を作っている写真。
もう一枚は、浩平がひざまずいて、彼女の足をマッサージしている写真だった。
【浩平さんが料理とかマッサージを覚えたのって、あなたのためなんでしょ?でも見て。あなたにしてあげたこと、全部私にもしてくれるんだよ!】
彼女の言う通りだった。
お花や、服やバッグのプレゼント。浩平が私にしてくれたことは、すべて、紬にもしてあげていたんだ。
浩平と私が付き合うことになった、あの思い出の桜の木の下にまで紬を連れていって、二人で写真を撮っていた。
そのことで、浩平は今まで何度、私に土下座して謝ってきたか分からない。
そのたびに私はおかしくなりそうで、絶望して、狂ったみたいに泣きわめいた。
でも今は、もううんざりするだけだ。
私はその画面をスクショして、友達がいるグループラインに投稿し、浩平と紬をメンションした。
【もう別れたんだから、私の前に顔出さないでくれる?マジでうざい】
メッセージを送った瞬間、浩平から電話がきた。
10回以上かかってきたが、全部すぐに切った。
今度はラインが届いた。
【夏美、怒らないでくれ。俺が愛してるのは、本当に君だけなんだ。誓うよ】
【カッとなってるのは分かる。でも、別れるなんて言わないでくれ。頼む、それだけは耐えられないんだ】
浩平はいつもこうだ。私を怒らせると、許してくれるまで大量にメッセージを送ってくるんだ。
うんざりして、私は浩平をブロックした。
大輝はハネムーンの休みを取るため、会社へ戻った。私は一人で、新しい家に向かう。
でも、まさかその途中で浩平の友達にばったり会うなんて。しかも、おどけて車に乗せられてしまった。
車が停まったのは、とあるホテルの前。私はそのまま、宴会場の中に押しこまれた。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)