あざとい女を選んだ元カレ、私の結婚を知ると絶望第1話
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中村浩平(なかむら こうへい)は、また家の前でひざまずいていた。
雪が彼の体に降りつもっていく。彼の顔は真っ青で、倒れそうだった。
いつもなら、私が彼をひっぱたいて、怒鳴りつけて、それで終わりだったはず。
こんなおかしい状態で、めちゃくちゃな関係のまま、浩平と斎藤紬(さいとう つむぎ)の二人と、一生も収拾がつかないんだと思っていた。
でも、今日、妊娠したのがわかった。
私は、自分の名前である白石夏美(しらいし なつみ)が記された診断書を握りしめ、初めてこんなに穏やかな気持ちになった。
「私、妊娠した。あなたの子じゃない。別れよう、浩平」
* * *
中村浩平(なかむら こうへい)は、また家の前でひざまずいていた。
雪が彼の体に降りつもっていく。彼の顔は真っ青で、倒れそうだった。
いつもなら、私が彼をひっぱたいて、怒鳴りつけて、それで終わりだったはず。
こんなおかしい状態で、めちゃくちゃな関係のまま、浩平と斎藤紬(さいとう つむぎ)の二人と、一生も収拾がつかないんだと思っていた。
でも、今日、妊娠したのがわかった。
私は、自分の名前である白石夏美(しらいし なつみ)が記された診断書を握りしめ、初めてこんなに穏やかな気持ちになった。
「私、妊娠した。あなたの子じゃない。別れよう、浩平」
浩平は震える手でエコー写真を受け取ると、それをビリビリに引き裂いた。
彼はひざまずいたまま私の前ににじり寄り、かすれた、でもきっぱりとした声で言った。
「そんなはずないよ、夏美。前に流産した時、お医者さんからもう妊娠するのは難しいって言われたじゃないか!
付き合って7年の記念日に、君を一人にして紬さんに会いに行ったのは悪かった。でも仕方がなかったんだ。8年前、俺はトラックにはねられそうになって、紬さんのお父さんが俺をかばって死んだ。死ぬ前に、彼女のことだけは頼むって。
彼女は重いうつ病で、発作が起きたんだ。ほっとけるわけないだろ……
約束する、もう二度とこんなことはしないから!」
浩平の約束を聞いて、私は思わず涙が出るほどに笑ってしまった。
「浩平、その約束、あなた自身は信じてるの?」
私が取引先からセクハラまがいの嫌がらせを受けていた時、浩平は紬の誕生日を祝っていた。
私が流産してしまった時、浩平は紬の卒業旅行に付き合っていた。
私が病気で入院した時、浩平はオークションで紬のために大金を使っていた。
いつだって彼はそう約束したじゃない。
何度も何度も、でも結局いつも「次」があった。
浩平は視線をさまよわせ、気まずそうに私の手を掴んだ。「ごめん、夏美、俺は……」
「触らないで、汚れるから!」私は咄嗟ににその手を振り払った。
浩平の目がさっと赤くなった。「汚くなんかない。俺は紬さんと何もやましいことはしてない。彼女に優しくするのは、ただ恩返しのためなんだ……」
そのセリフを、この何年間、彼は飽きるほど繰り返してきた。
私はもううんざりだった。「もうその話はいい。別れよう、浩平」
「夏美、別れるなんてひどいこと言わないでくれ。俺には耐えられない。君、会社を作りたいって言ってただろ?俺の会社の株を全部譲るから、な?」
浩平は私の手を掴もうとして、よろめきながら立ち上がった。
でも、その手が私に触れる前に、彼はそのまま倒れこんでしまった。
私は慣れた仕草で、すぐに119番に電話した。
浩平は意識がないのに、私の袖を強く握り締めて離さず、何度も私の名前を呼び続けた。
仕方なく、私も一緒に病院へ向かった。
でも、ベッドで真っ青な顔をしている浩平を見ても、もう心は痛まなかった。以前なら心苦しかったのに、今になっては何も感じなくなった。
私たちは、小さいころから同じ施設で育った。
私が他の子に半殺しにされても平気だったのは、浩平に一口でも多くご飯を食べさせるためだった。
一方、浩平は私の治療代のためにお金を盗んで、自分の人生を台無しにしそうだった。
紬が現れるまで、私たちはお互いにとって、唯一の恋人で、家族なんだって。愛し合って、一生、そうやって生きていくんだって、信じていた。
「夏美、やっぱり君は俺を見捨てられないって、わかってたよ」
目を覚ました浩平のうれしそうな声に、私ははっと我に返った。
私は近寄ってくる彼の体を押し返した。「浩平、これが最後だから」
「まだ怒ってるんだろ?だったら罵ってもらっていい。殴ってくれてもいい。それで君の気が済むなら、何でもするから」
浩平は無理に笑ってみせて、ベッドから起き上がろうとした。
私は冷めた目で彼を見た。「浩平、バカなふりはやめて。意味ないから。紬がいるかぎり、私たちの問題はなくならない。もうこれ以上、あなたに付き合うのはもう無理なの」
浩平は目を真っ赤にしていた。「そんなことない、夏美。約束する。これから紬さんがどんなにわがままを言っても、もう甘やかしたりしない。彼女のせいで君を悲しませることは、もう絶対にしないから」
彼がそう言い終わると、紬が病室に現れた。「浩平さん、具合が悪いの。そばにいてほしい」
浩平は、びくっとしたように私をちらりと見た。「今は夏美のそばにいないといけないんだ。だから、その……」
「父が死ぬ前に、あなたが父とした約束を忘れたの?やっぱり男なんてみんな嘘つき!父も亡くなじゃって、私にはもう誰もいない。もう死んだほうがましよ!」
紬はじだんだを踏むと、泣きながら病室を飛び出していった。
途端に浩平は私のことなど上の空になった。「夏美、話はあとだ。戻ってきたら聞くから」
彼は慌てて紬を追いかけ、またも私を一人にした。
私が相変わらず待っていると、浩平は信じて疑わなかった。
そして、私自身も、少し前まではそう思っていた。
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