あいにく、私はもう別の男の妻です第2話
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お店の入口まで来て、迎えを呼ぼうとした時、背後から急ぎ足の足音が聞こえた。
「梓!」
追ってきた健吾の後ろには、顔色の悪い雪乃が力なくついてきている。
私は眉をひそめた。「どういうつもりですか」
「今日の君は度を越している。僕を何度も拒絶して……」健吾が先手を打ってきた。「カッとなっているのは分かるけど、これ以上やるなら、僕だって本気で怒るぞ」
私は天を仰いで深呼吸した。「私は、最初から本気です。瀬戸さん、プロポーズはお断りします。三年前の時点で愛想は尽きました。それに、私はもう結婚していますから」
健吾は鼻で笑った。「既婚者のふりなんてしなくていい。いい加減、僕の忍耐を試すのはやめろ」
「そうですよ、梓さん」雪乃も便乗して声を絞り出した。「梓さんが健吾さんを愛しているのは誰もが知っていること。他の人と結婚するなんて、あり得ません。健吾さんもあなたを愛しているんです。だから、私が消えればいいんでしょう?」
そう言って、雪乃はまた涙をこぼし始めた。
「あり得ない。君が結婚しているはずがないだろう?」健吾が呟いた。「今日だって、僕の好きな赤いドレスを着て、僕の好きな香水をつけてきた。僕がプロポーズすることを知っていたからじゃないのか?」
この男とはここまで話が通じないのかと、私は呆れ果てた。
「本当に、結婚しているんです。
瀬戸さん、私とあなたは三年前にもう終わりました。
人目につくと迷惑なので、二度とつきまとわないでください。夫とは幸せにやっています。
それからドレスと香水についてですが……残念ながら、あなたの好みなんてとうの昔に忘れましたわ」
「梓さん、どうしてそんな嘘をついて健吾さんを傷つけるんですか?」雪乃が突然割り込んだ。「もし旦那様がいるなら、どうして今日は一人で帰国したんです?」
健吾の瞳に期待の光が宿った。
彼の中では、私が彼に夢中でいるという妄想が、未だに続いているらしい。
幼なじみで、家柄も釣り合い、付き合うのは自然な流れだった。
かつての私は、確かに彼に尽くしていた。家事などしたこともないお嬢様だった私が、彼のために料理を覚え、彼が「妹」を優先するたびに自分を納得させ、両家の親にも彼の顔が立つよう根回しをしてきた。
けれど、彼が返してくれたのは裏切りの連続だった。
妹扱いと言いながら、ベッドの中で世話をする兄がどこにいる?
今にして思えば、あの頃の私はどうかしていた。
でも今は違う。彼を見るたびに湧いてくるのは、うっとうしいだけ。
ただの「他人」だ。
「お好きにどうぞ」私は彼の傷ついたような視線を振り切り、前だけを見て歩き出した。「二度と私の前に現れないでください。顔を見るのも不快ですから」
これだけはっきり言えば、もう可能性がないことくらい理解しただろう、と思っていた。
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