99度捨てられ、元彼の兄に嫁ぐ第3話
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蓉子の誕生日パーティーはクルーズ船の上で開催された。
道中ずっと、裕輝はまるで私が逃げ出すのを恐れているかのように、手を強く握りしめて離さなかった。
だが、蓉子の姿を見つけるや否や、彼は私をその場に置き去りにし、彼女の腰に親しげに腕を回した。
「誕生日おめでとう、蓉子。これはお前へのプレゼントだ」
小さな箱を開けると、中には美しいサファイアのネックレスが横たわっている。
私はすぐにそれが何かを理解した――世界にただ一つしかない限定品、「深海の心」
その意味は「海よりも深い愛をあなたに」
つい先月、私は裕輝に「このネックレスが欲しい」と言ったことがある。
すると彼は眉をひそめ、冷たく言い放った。
「どうしてそんなに欲張るんだ?俺が買ってやったネックレスはもう十分あるだろう」
だが今、彼は私の目の前で、そのネックレスを自らの手で蓉子の首にかけている。
私は二人から離れて甲板に出て、海風にあたる。
そのとき、背後から蓉子の声が響いた。
「マリア、ごめん。昨日はわざとあなたたちの結婚式を壊そうとしたわけじゃないの」
私は振り返り、言葉を探そうとした。だが、次の瞬間、彼女が突然私の手をつかみ、体ごと甲板の外へと身を投げた。その勢いで、私も一緒に海へと引きずり落とされた。
私は泳げない。冷たい海水の中で必死にもがき、大声で助けを求めた。
意識が朦朧とする中、船から誰かが飛び込むのが見えた。――裕輝だった。
けれど彼はすぐそばにいる私を無視し、ただ蓉子の方へ一直線に泳いで行った。
海水が次々と鼻に入り込み、息ができなくなった。私は必死に手を伸ばして助けを求めた。
しかし、彼が抱き上げて船に戻したのは、蓉子だけ。
私が力尽きて海に沈みかけたそのとき、ようやく救命浮き輪が投げ込まれた。
私は必死に浮き輪にしがみつき、もがきながら何とか甲板に戻ることができた。
だが、命からがら戻った私に向かって、裕輝が放ったのは冷え切った言葉。
「どうして蓉子を突き落とした?今すぐ彼女に謝れ」
私はびしょ濡れで震えが止まらない。肺は焼けるように痛んでいる。
「突き落とした?私は何もしてない……彼女が私を……げほっ!」
けれど裕輝は耳を貸さなかった。
「嘘をつくな。蓉子が、お前に突き落とされたって言ってる。お前が不満を抱えているのはわかるが、こんな卑怯なやり方で仕返しするなんて許されない。すぐに謝罪しろ」
私は信じられない思いで唇を噛みしめ、黙り込んだ。
すると裕輝はスマホを取り出し、武川家の病院に電話をかける。
「ただちに小笠育恵の治療を中止しろ」
その一言で、私は血の気が一気に引いた。
「やめて!謝るから、お願いだから母を巻き込まないで!」
私は震える体で蓉子の前に進み、頭を下げた。
「ごめん、蓉子。あなたを突き落としたんじゃなかった」
だが蓉子はそれだけでは満足せず、裕輝の腕にすり寄って甘えた。
「裕輝、私は危うく死にかけたのよ。彼女は私に土下座して謝るべきじゃない?」
私は驚いて裕輝を見たが、彼は冷ややかにうなずいた。
「聞こえただろう?蓉子に土下座して謝れ」
歯がガチガチと震え、噛みしめた唇から血の味が広がった。それでも私は、よろめきながら膝をついた。
「……ごめんなさい」
母のために、私はそうするほかなかった。
蓉子の瞳には勝者の微笑みが浮かび、わざとらしい寛容さを見せた。
「いいのよ、マリア。許してあげるわ」
私は顔を上げて、裕輝に尋ねた。「これで命令を撤回してくれる?」
私の目に宿る、まるで死んだかのような静けさに、彼は一瞬戸惑い、不安げに眉をひそめた。
彼が電話をかけ直そうとしたその瞬間、蓉子が彼にしなだれかかった。
「裕輝、私、寒いの。服を替えたいから一緒に来てくれる?」
その声を聞いた途端、裕輝はスマホを置き、彼女を抱き上げて立ち去った。
私は追いかけようとしたが、裕輝のボディーガードに阻まれた。
「坊ちゃまの許可なしに、誰も部屋には入れない」
どれほど頼み、叫んでも通じない。
私は諦め、震える手でポケットからスマホを取り出したが、水に濡れて壊れており、電源を入れることができない。
絶望に押し潰されそうになったその時、一人の心優しい女性客がすべてを目撃しており、彼女は自分のスマホを貸してくれた。
けれど病院の電話番号はわからず、母に電話をかけても繋がらなかった。
そのとき、頭に浮かんだのは一輝の顔だった。
婚姻届を書いたとき、彼が記入した電話番号を目にして、私は記憶していたのだ。
通話はほとんど一瞬で繋がった。私は泣き声混じりに叫んだ。
「一輝、お願い……母があなたたちの病院にいるの。裕輝が治療をやめさせようとしてるの……!」
「わかった」
彼の落ち着いた声が電話越しに響き、魔法のように私の混乱を鎮めた。
「すぐに病院に連絡する。君は自分のことを大事にしろ」
通話を切ると、私は糸が切れたかのように、その場に座り込んだ。
心配そうに見つめていたあの女性客が、ハンカチを差し出してくれた。
「あなた、彼氏を変えた方がいいわ。彼はあまりにもひどすぎる」
私は呆然とし、次の瞬間、大粒の涙が頬を伝った。
悔しさ、怒り、屈辱、悲しみ――すべての感情が胸の奥で渦巻いている。
私は泣きながら首を振った。
「いいえ、もう彼とは関係ないの。私は結婚した。
彼じゃない人と」
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