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99度捨てられ、元彼の兄に嫁ぐ第1話

この話は約1945字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

彼氏・武川裕輝(たけかわ ひろき)が99回目に私の薬指に指輪をはめたその瞬間、彼の義妹・生原蓉子(いくはら ようこ)から電話がかかってきた。

そして彼は、抑うつ症状を起こした蓉子を慰めるため、99回目となる結婚式の最中に私を置き去りにした。

私はもう耐えきれず、その背中に向かって叫んだ。

「もしあなたがどうしても行くというのなら、私は別の人と結婚するわ!」

だが彼は取り合わず、私を責め立てた。

「お前はどうしてそんなにわがままなんだ?結婚なんていつでもできる。でも蓉子は俺にとって唯一の妹なんだ」

そう言い残し、振り返りもせず去っていった。

私はただ、道化のようにその場に立ち尽くすことしかできなかった。

彼は知らない。今回の私は、本気だったのだ。

そして後日――

100回目のプロポーズをして膝をついた裕輝の前で、彼の兄・武川一輝(たけかわ かずき)が片腕で私の腰を抱き寄せ、低い声で告げた。

「悪いな、弟よ。これからは彼女のことを『お義姉さん』と呼ぶんだな」

* * *

ホテルの正面扉がバタンと音を立てて閉まった。

そして、私と十年間付き合ってきた彼氏、武川裕輝(たけかわ ひろき)は、これで99回目にして、私を結婚式の会場に置き去りにした。

彼が飛び出して行ったのは、うつ病を患い、自ら飛び降りようと騒いでいる義妹の生原蓉子(いくはら ようこ)を慰めるためだった。

会場内の参列者たちがざわめき、ささやき声が絶えない。

私は胸の奥から突き上げる絶望と羞恥を必死に抑え、司会者の手からマイクを受け取って大声で告げた。

「皆さま、どうかお静かに。式は続けます。

新郎が逃げたため、私は新しい夫を代わりに選びます。どなたか私と結婚してくださる方はいらっしゃいますか?」

会場は騒然となった。

「何これ、頭おかしいんじゃないの?」

「武川グループは世界有数の企業だよ。誰が武川家の次男の婚約者を奪えるというんだ?」

「いたとしても、彼女は裕輝に十年も弄ばれてきたんだ。誰がそんな女を?」

そういう言葉が針のように私の心を刺した。

長い沈黙の後、私は深く息を吸い、自分に言い訳の余地を作ろうとした。

そのとき、人混みの中から一人の姿が立ち上がった。

「私が君と結婚してもいい」

私は驚いて目を大きく見開いた。

その人は武川一輝(たけかわ かずき)――裕輝の兄で、武川家の長男。

彼にまつわる記憶が一気に脳裏をかけめぐる。

彼に会ったのは数回だけだ――大雨の夜、裕輝が私に風邪を引いた蓉子のために薬を買って来てほしいと言い、私はA市中を走り回ってずぶ濡れになりながら、ようやく開いている薬局を見つけた。その帰りに偶然会った一輝が家まで送ってくれた。

その後、私は一週間も熱が下がらなかったが、裕輝は蓉子のことばかりで、私のところには一度も来なかった。けれど、一輝はそっと温かい水と解熱剤を枕元に置いてくれていた。

さらに、裕輝とその友人たちが賭けをして、私を人里離れた場所に置き去りにし、私がいつ抜け出せるかを見ると言ったとき、私は山中で三日三晩迷い、狼に襲われそうになったが、それを見つけ出して助けてくれたのも一輝だった。

でも、感謝の気持ちを伝えようとすると、彼はいつも黙って顔を背け、一度も私を見てくれなかった。

今、あの沈黙の男が一歩一歩私の前へ進み、その大きな影が私を覆い尽くす。

「私は武川一輝。弟の裕輝に代わって、君と結婚する」

私は彼をじっと見つめ、しばらくして喉の奥からやっと一言を絞り出した。

「はい」

こうして、驚きと戸惑いの視線の中で、私は一輝と結婚した。

婚姻届に判を押した瞬間、私はふと、裕輝との十年間が馬鹿みたいに思えた。

私は彼に十年分の全ての愛を注いだのに、代わりに返ってきたのは、蓉子のために何度も私を置き去りにされることだった。

結婚式がもうすぐ終わろうとするそのときでさえ、蓉子からの一通の電話があれば、彼はすべてを投げ捨てて駆けつけるのだ。

今なら、私も彼のことを簡単に見捨てられる。

スマホを見ると、蓉子がインスタに写真を上げていた。

【ありがとう。何もかも顧みずに駆けつけてくれて、どん底にいる私に差し込んだ一筋の光になってくれて】

写真の中で、二人の手が指を絡め合っている。

コメント欄には、まるで今日結婚したのが彼らであるかのように、誰かが二人の末永い幸せを願う声が寄せられている。

私はその投稿にそっと【いいね】を押すと、すぐに蓉子からメッセージが届いた。

【マリア、変に考えないで。私はただ寂しかっただけよ。

次にまた二人が結婚する時は、絶対にお祝いに行くからね】

彼女はいつもそう言う。

そして、次の機会にまた、私のそばから裕輝を奪っていく。

だが今、彼女の挑発的なメッセージを見ても、私の胸にはただ静けさだけが広がっている。

【いいえ、もう次はない】

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