8度目の入籍失敗、別の人と結婚第3話
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礼人は莉乃をかばうように前に立ちふさがり、周囲の友人たちを睨みつけた。
「もういいだろ。莉乃だって良かれと思ってやってるんだ。そうやって寄ってたかって責め立てるなよ」
そして、私の方へ視線を向けた。
「茉央、あと2分だけ待ってくれ。莉乃に紐を結び直させたら、すぐに中へ入って婚姻届を出そう」
待つ、ですって?
それを聞いて、私は思わず乾いた笑いを漏らした。
「礼人、前回のことを覚えてる?」
彼は一瞬、言葉に詰まった。
私は構わず言葉を重ねた。
「前回の交際5周年記念日、一緒に役所へ行く約束だったのに、あなたは『莉乃が低血糖で倒れたから、ロビーで10分待っててくれ』って言ったわよね。
結局、私は窓口が閉まる時間まで待たされて、最後にあなたから来たメッセージは『彼女の具合が悪いから先に家まで送る。入籍はまた今度にしよう』だった」
礼人はわずかに顔色を変え、弁解するように言った。
「あの時は特殊な状況だったんだ。莉乃は本当に苦しそうだったから」
私は静かにうなずいた。
「じゃあ、私の誕生日の時は?莉乃が足を捻挫したからって、あなたが彼女を抱えて病院へ行って、私には役所で合流しようって待たせたわよね。
バレンタインデーの時は、莉乃の元カレが騒ぎを起こしたからって、彼女が怯えてるから入籍は数日待ってくれって言った」
私が事実を一つ口にするたびに、礼人の顔色はどんどん険しくなっていった。
だが、莉乃は涙声で口を挟んできた。
「茉央、そうやって昔のことを一つひとつ蒸し返して、私のことを責めてるの?でも、あれは全部ただのハプニングで、私にもどうしようもなかったんだよ……」
私は彼女を見て、静かに首を横に振った。
「あなたのことは責めてないわ」
そう言ってから、うつむいてスマートフォンの画面に目を落とす。
16時51分。
役所の窓口が閉まるまで、残り9分。
私は手元の書類をゆっくりとバッグにしまい、淡々と言った。
「編んでていいわ。もう急かさないから。でも今日、私は絶対に入籍する」
16時53分。両親から電話がかかってきた。
電話口の母の声は、とても弾んでいた。
「茉央、無事に入籍は終わった?お父さんと一緒にご馳走の準備もできたし、あなたのおじさんたちももうすぐ着くわ。二人が帰ってきてお祝いするのを待ってるからね」
その言葉を聞いた瞬間、喉の奥に何かがつかえたように、一文字も言葉が出てこなくなった。
見かねた彩音が、目を赤くして代わりに口を開いた。
「おばさん、まだ終わってないんです。礼人の幼馴染のお守りブレスレットが切れちゃって、礼人は彼女が編み終わるのを待ってから入籍するって言ってるんです」
電話の向こうが、不自然なほど静まり返った。
数秒ほど経ってから、父が怒りを押し殺したような低い声で尋ねた。
「礼人くんは、そばにいるか?」
礼人は眉をひそめたが、それでも電話に向かって返事をした。
「います」
父の声はひどく沈んでいた。
「礼人くん、お前と茉央は7年間も付き合ってきた。女の身で28歳になるまでお前を待ち続けて、 一番大切な時期を全部お前に捧げてくれたんだぞ。
何度も入籍すると言いながら、その度に他人のせいで引き延ばす。これがまともな男のやることか?」
母もたまらず口を挟んだ。
「礼人くん、茉央が今日のために、朝の5時に起きて身支度をしたのを知ってるの?家にはお祝いの飾り付けも済ませて、ご馳走もテーブルに並べて、親戚や友達もみんな、あなたたちが今日入籍することを知っているのよ……」
母は最後まで言うと、その声は微かに震えていた。
「それに、もうこれで8回目じゃないの!とりあえず茉央と先に入籍を済ませられないの?入籍が終わってからでも、お守りくらい編めるでしょう?」
礼人は言葉に詰まった。
しかし、莉乃が泣きながら横から口を出した。
「おばさん、そんな風に言わないでください。このお守りは二人の結婚がうまくいくように守るためのものなんです。切れたままなんて縁起が悪いじゃないですか。
私、もう直しているところで、すぐに編み終わりますから。二人の入籍の邪魔にはなりません。
ごめんなさい、私もただ二人を祝福したかっただけで、こんなハプニングが起きるなんて思わなくて……」
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