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8度目の入籍失敗、別の人と結婚第1話

この話は約1662字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

役所の婚姻届の受付時間終了まで、あと15分。

私、白川茉央(しらかわ まお)と佐伯礼人(さえき あやと)はようやく駆け込んだ。

階段の下に集まっていた友人たちが、急かすように声をかけてくる。

「早く入りなよ!やっとこの日が来たね。8回目の正直でようやく入籍に間に合ったじゃない!」

親友の松本彩音(まつもと あやね)は目を潤ませながら、私のメイクを直してくれた。

入り口に向かおうとした途端、突然、後ろの車の後部座席から礼人の幼馴染である桜井莉乃(さくらい りの)の声が聞こえた。

「ちょっと待って、お守りの組紐ブレスレットが切れちゃったの。編み直さなきゃ」

礼人は立ち止まってこう言った。

「分かった。急がなくていい」

莉乃はうつむいて紐を整えながら、私に向かって笑みを浮かべた。

「茉央、焦らないで。すぐに編み直すから。これ、あなたたちの結婚生活がうまくいくようにって、私が特別に用意した開運のブレスレットなんだよ」

そう言うと、彼女はごく自然な動作でスマートフォンを礼人に差し出した。

「ちょっと持ってて」

礼人はそれを受け取った。

その場が急に静まり返った。

ついさっきまで囃し立てていた友人たちも、皆顔色を変えた。

私は彼を見た。「礼人、役所の窓口は17時で受付終了なの。今入れば、ちょうど間に合うわ」

礼人は眉をひそめた。「俺はもうここに来てるんだ。数分くらい待っても変わらないだろ」

車のそばに立ち、莉乃がブレスレットを編み直すのを待っている彼を見て、私はふと笑みがこぼれた。

うつむいてスマートフォンを取り出し、ある番号にメッセージを送った。

【8回目の入籍もダメなら、自分も候補に入れてって言ってたわよね?17時までに、役所に来て】

* * *

メッセージを送信すると、スマートフォンはすぐに振動した。

相手からの返信は、たった一言だった。

【わかった】

私はその文字をしばし見つめてから、画面をロックした。

役所の入り口にある電光掲示板の時計が、ちょうど16時46分に切り替わった。

業務終了まで、残りわずか14分。

彩音が焦り出した。「茉央、これ以上は引き延ばせないよ。前回のことを忘れたの?あんたが冷たい木枯らしの中で丸1日待たされて、最後はあと5分のところでシステムが締め切られて、入籍できなかったでしょ!

婚姻届の提出って、パッと出して済む話じゃないんだよ?書類の記入にも確認にも、すごく時間がかかるんだから!今入らないと、今日もまた無駄足になっちゃう」

そばにいた友人も一緒に説得し始めた。

「礼人、先に入れって。ブレスレットなんて後回しでいいだろ。入籍より大事なことなんてないはずだぞ」

入り口に立っていた警備員も、親切に注意してくれた。

「婚姻届を出される方は急いでください。窓口は17時きっかりに閉まります。システムが落ちたら、誰が来ても対応できませんよ」

その言葉が響き、周囲はさらに静まり返った。

皆が礼人を見つめていた。

しかし、彼はまだ車のそばに立ち、莉乃のスマートフォンを持ったままだった。

莉乃はうつむき、ほどけた組紐をのんびりと編んでいる。

「礼人、この結び方で合ってる?ちょっと見てくれる?」

礼人はうなずき、ただ一言答えた。「ああ、合ってる」

私は呆れのあまり、思わず声を上げて笑ってしまった。

「礼人、今日が何の日か本当に分かってるの?」

彼の顔に一瞬、罪悪感がよぎった。

「茉央、安心しろ。ちゃんと計算に入ってる、遅らせたりはしないから」

遅らせたりはしない?

しかし今日という日は、すでに彼と約束した8回目の入籍日なのだ。

1回目、私は3日前にメイクさんを予約し、完璧にメイクを済ませて彼を待っていた。

莉乃が突然胃痛を訴えた。彼は「莉乃を病院へ連れて行く」と言い出し、私との約束をあっさりとすっぽかした。

2回目、私が一人で書類を抱えて彼のところまで足を運び、役所で順番待ちの番号札まで取って待っていた。

莉乃は今度、家の電球が切れて暗いのが怖いと言い出した。

礼人は私に、また今度にしようと言った。

……

7回目、私はすべての書類を準備し、彼さえ来れば入籍できる状態だった。

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