和紙文8年の恋より秘書を選ぶ?同窓会で結婚を大発表 · 第2話設定≡

8年の恋より秘書を選ぶ?同窓会で結婚を大発表第2話

この話は約1410字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

瑞樹の動きがピタリと止まり、彼はテーブルの上のジュースを手に取って私のグラスに注いだ。

「もういい加減にしろよ、瑠夏。他人を騙すならともかく、自分自身を騙しても虚しいだけだぞ」

その声は先ほどまでの優しさを失い、むしろ冷ややかさを帯びていた。

「結婚のことなら、この前はっきり言ったはずだ。すでに結論が出ていることに、これ以上労力を使いたくない」

彼が言う「この前」とは、半月前の交際8周年記念日のことだ。

私は、これだけ長く付き合ってきたのだから、そろそろ人生の次の段階へ進むべき時だと思っていた。

起業してからのこの2年余り、彼が目の回るような忙しさであることは分かっていた。だからこそ、私から彼にプロポーズしようと決意したのだ。

結婚式の準備はすべて私一人で引き受けてもいい。瑞樹は結婚式当日に花婿として来てくれるだけでよかった。

その日の夜、私は用意していたペアリングを取り出し、頬を赤く染めながら「私と結婚してくれるの?」と尋ねた。

しかし、瑞樹の反応は、私が想像していたような感激や幸福に満ちたものではなかった。

「瑠夏、今の俺には結婚する余裕がないんだ」

彼は指輪ケースを閉じると、再び私の前へと押し戻した。

「それに、プロポーズは俺からするべきだ。もう少しだけ待ってくれ。絶対に盛大な結婚式を用意するから、な?」

その声は、聞き慣れた親密で優しい響きだった。

けれど、私の心は少しずつ冷えていくのを感じていた。

「待ってくれ」という言葉は、もう嫌というほど聞いてきた。

私と瑞樹は幼馴染で、親同士も懇意にしており、私たちが付き合うことを当然のように喜んでくれていた。

卒業するとすぐに、親たちは結婚の話を進めたがった。

その時、瑞樹は私に「まだ若いし、まずは2年間仕事に専念してから結婚したい」と言った。

私はそれに同意した。

自ら両親に「結婚はまだ急がない」と告げたのだ。

両親は私の意思を尊重し、それ以来結婚を急かすことはなかった。

2年後、彼は会社を辞め、自ら起業の道を歩み始めた。

起業したばかりの頃は、毎日深夜の2時や3時まで残業が続いた。

深夜に帰宅すると、彼は私の腰を抱きしめ、「事業が成功したらお前を妻にするから、今は辛いだろうがもう少し待っていてくれ」と言った。

彼の苦労は痛いほど分かっていたから、私も結婚については二度と口にしなかった。

そして今年。私たちが付き合って8年になった年。

会社も徐々に軌道に乗り、相変わらず忙しいとはいえ、起業当初のように24時間会社に籠りきりだった頃に比べれば、ずっと余裕ができていた。

そろそろ、結婚してもいい頃だと思った。

たとえ彼に結婚式の準備をする時間がなくても構わない。ただ彼と結婚できれば、それでよかった。

しかし、彼の口から出たのは、またしても「待ってくれ」という答えだった。

「私たち、付き合って8年にもなるのに、私と結婚したくないの?」私はたまらず、支離滅裂になりながら訴えた。「どちらからプロポーズしたっていいじゃない。結婚式が盛大じゃなくてもいい。私たち二人と、一番大切な家族さえいてくれれば、それでいいの。私……」

「菊地」

交際して8年、彼がそんな他人行儀な呼び方をしたのは、これが初めてだった。

彼の顔から優しさが完全に消え去り、代わりに底知れない疲労の色が浮かんでいた。

「俺は毎日会社のことで疲れ切っているのに、どうしてこれ以上俺を追い詰めるんだ?

お前はそんなに、結婚に焦っているのか?」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)