5年後から親友の後悔が届く第2話
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征司は顔を真っ青にし、慌てて救急車を呼んだ。
佳澄も気が気ではない様子で、そのまま病院までついてきた。
運び込まれてすぐに処置を受け、私はどうにか峠を越えた。
「産後間もない時期に強いストレスがかかり、転倒したときの衝撃も重なって、大量出血を起こしたようです。
今回はすぐに搬送されたので大事には至りませんでしたが、しばらくは安静にしてください」
医師はそう言って、病室を出ていった。
佳澄はティッシュで額の汗を拭き、征司はおかゆをひと口ずつ、ゆっくり食べさせてくれた。
ぼんやり2人を見ていると、ふと、3人の仲が一番よかった頃に戻ったような気がした。
あの頃の征司は、私が本格的な鍋料理を食べてみたいと口にしただけで、遠く離れた街まで連れていってくれた。
私の悪口を言う人がいれば、普段は気の弱い佳澄まで顔を真っ赤にして言い返してくれた。
そんなことを思い出しているうちに、スマホがまた震えた。
【冬香、今の私たちにほだされないで】
【その後も、私と征司は何度も、もう会わないってあなたに約束したの。でも結局、隠れて会い続けた。私のせいであなたの息子が亡くなったときも、征司は私をかばった】
【そのあと、あなたは重いうつ状態になって、自ら命を絶った】
【あなたが死んだあと、私は本当に後悔した。征司も、あなたを失ってからやっと、まだ愛してたんだって気づいたの】
【でも、だからって私たちが許されていいわけじゃない】
私、そんなふうに死ぬの……?
思い返せば、征司は昔からそうだった。
私と佳澄が揉めるたび、最後には決まって佳澄をかばった。
そう思うと、あのメッセージも、もうただの嘘とは思えなかった。
込み上げる気持ちをこらえ、差し出されたおかゆを押し返して、痛む体をゆっくり起こした。
「征司、離婚しよう」
征司は返事をせず、真っ先に佳澄を見た。まるで、佳澄が何と言うか待っているみたいだった。
佳澄はみるみる顔を青ざめさせ、慌ててベッドのそばへ駆け寄ってきた。
「離婚なんてやめてよ。冬香、私、2人を別れさせるつもりなんてなかったの。私……」
佳澄が言い終わる前に、私は遮った。
「私の夫と不倫して、子どもまで産んでおいて、まだそんなこと言えるの?あなたの継母みたいに、お母さんを死なせてお父さんと一緒になるくらいしないと、自分が何をしたかわからないの?」
佳澄は目を見開いたまま私を見つめ、ぽろぽろと涙をこぼした。
征司はすぐに佳澄を抱き寄せ、私を睨みつけた。
「冬香、いくらなんでも言いすぎだろ!」
涙をこらえながら、思わず鼻で笑った。
「もう隠す気もないんだ。佳澄に優しくしてるのは私の親友だからだって、ずっと言ってたくせに」
征司は顔を背けた。
「騙すつもりなんてなかった。佳澄がお前に嫌われたくないって、黙っていてくれって頼んだんだ」
「じゃあ、隠れて不倫してたことまで、ありがとうって言えばいいの?少しは恥ずかしいと思わないの?」
傷つけられたのは私のほうなのに、征司はまるで私が悪いとでも言いたげに眉をひそめた。
「お前ってほんと、人の気持ちがわからないよな。言い方はきついし、意地っ張りだし。そんなんだから、佳澄以外には誰にも好かれないんだよ。実の母親にまで嫌われるわけだ」
その一言に体がこわばり、シーツを握る手に力が入った。
ずっとそばにいた征司だからこそ、私が一番傷つく言葉をよく知っていた。
「冬香にそんなこと言わないで!」
佳澄は征司に向かって声を上げると、慌ててベッドのそばにひざまずいた。
「冬香、お願い。私、もう征司とは会わない。連絡もしない。絶対に征司を取ったりしないから……だから、私のこと嫌いにならないで」
征司の顔が曇った。
「佳澄……」
佳澄は征司を見ようともせず、首を振った。
「もういいの、征司。私、決めたの」
これ以上、2人のやり取りを見ている気にはなれなかった。
赤ん坊が実家にいるとわかると、私はすぐに病院を出た。
けれど、実家に着いても、母は赤ん坊を渡そうとしなかった。
「この子、泣き出したらいつまでも止まらないのよ。ほんと、あんたそっくりでうっとうしい!」
赤ん坊は声がかれるほど泣いていて、見ているだけで胸が痛んだ。
それなのに母は、その小さな腕を何度もつねった。
「いつまで泣いてるの、このクソガキ!うるさくてたまらないわ!」
あまりのひどさに涙があふれた。
「そんなに嫌なら返してよ!こっちだって、お母さんに面倒見てもらおうなんて思ってない!」
赤ん坊を取り返そうと手を伸ばしたが、母は抱いたままさっと身をかわした。
「返してほしいなら、これからは佳澄ちゃんの言う通りにしなさい」
「嫌だって言ったら?」
「じゃあ、この子は返さない」
一瞬、息が止まった。
「お母さん、私が実の娘でしょ!」
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