5年もの隠れた恋の末、彼は本命彼女にプロポーズした第1話
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20年間ずっと「いい子」として生きてきた私・蘇我思乃(そが しの)が、唯一犯した過ちは、母と継父の目を盗んで、神原俊行(かんばら としゆき)とこっそり恋愛していたことだった。
昼間の私たちはよそよそしい義理の兄妹だったが、夜になると同じベッドで貪るように肌を重ねる。
その秘密の恋が5年目を迎えた頃、私は偶然、彼が友人たちと話しているのを耳にした。
「20歳で妹さんの初めてを奪って、もう5年も遊んでるんだろ?そろそろ恋愛関係を明かす気はないのか?」
胸がぎゅっと締めつけられ、私は俊行の返事をかすかに期待していた。
俊行はライターを弄びながら、どうでもよさそうに笑った。
「あんなの、所詮は『妹』だ。表に出せるような女じゃない。
そもそも最初から、あいつの母親が俺の家庭を壊したことへの復讐のためじゃなきゃ、俺があいつを選ぶわけないだろ。
もう若葉(わかば)にはプロポーズした。俺の妻になる資格があるのは、彼女だけだ」
私は取り乱して問い詰めたりはしなかった。ただ聞かなかったふりをして、その場を立ち去った。
俊行の結婚式の日、彼はわざわざ友人たちに会場をしっかり見張るよう言いつけていた。私が騒ぎを起こしに来ないようにするためだ。
けれど彼は知らなかった。私はすでに海外へ向かう飛行機に乗っていて、二度と戻ってくるつもりはなかったのだ。
* * *
神原俊行(かんばら としゆき)の誕生日パーティーで、私・蘇我思乃(そが しの)は彼に隣の人気のない個室へ連れて行かれた。
焼けつくような吐息とともに、貪るようなキスが降ってくる。
ドアの外からは、かすかに見知らぬ人たちの話し声が聞こえていた。
私は恥ずかしさで顔を真っ赤にし、覆いかぶさってくる彼を押し返そうとした。
だが、彼に両手首を掴まれ、頭上に押さえつけられて動けなくなった。
「思乃、拒まないで。頼むから」
いつも冷静な彼の声に、少し甘えるような響きが混じっていて、それだけで私は心が揺らいでしまった。
私はおとなしく彼の首元に腕を回した。
けれど、熱い掌がスカートの裾から少しずつ上へ這い上がってきて、身体が震えた瞬間、私は我に返った。
息を乱しながら、さらに先へ進もうとする俊行の手を掴む。
「こんなところじゃ……だ、だめ」
俊行はかすれた声で誘惑するように囁いた。
「誰も入ってこないよ」
私は彼の、人を惑わすような瞳を見る勇気がなくて顔を背けた。見つめたら、きっと断れなくなってしまうから。
「だめ。お母さんが帰りを待ってるの」
俊行の身体が一瞬固まり、それから丁寧に、外されたボタンを一つずつ留め直してくれた。
「こっちはまだ終わりそうにないから、先に運転手に送らせる。家に着いたら連絡して」
彼の失望した様子に気づき、私は唇を噛みしめながら、蚊の鳴くような声で呟いた。
「よ、夜……帰ってくるの待ってる。今日急いで出てきたから、プレゼントを寝室に置き忘れちゃって……」
俊行の動きがぴたりと止まり、目にからかうような笑みが浮かんだ。
「思乃が用意したプレゼント、当ててみようか。まさか……お前自身?」
付き合ってもう5年になるというのに、彼のこんな大胆な言葉には、私は今でも顔が真っ赤になるほど恥ずかしくなってしまう。
私は慌てて乱れたスカートを整え、「帰ってきたらわかるよ」とだけ言い残して、逃げるように個室を飛び出した。
背後から俊行の低い笑い声が聞こえた。
私は思わず足を速めた。
初春の夜はまだ少し肌寒く、クラブの外で冷たい風に吹かれてようやく激しく高鳴っていた心臓が落ち着いていった。
あのプレゼントを思い出すと、胸に甘い気持ちが込み上げた。俊行が今夜それを見た時、どんな顔をするだろうと期待していた。
車に乗り込み、俊行にメッセージを送ろうとしてスマホを取り出そうとした時、彼に隣の個室へ引っ張られた際にソファへ置き忘れてきたことを思い出した。
私は仕方なく個室へ引き返した。
ドアの前に着いた時、からかうような声が聞こえてきた。
「20歳で妹さんの初めてを奪って、もう5年も遊んでるんだろ?そろそろ恋愛関係を明かす気はないのか?」
ドアを開けようとした私の手が止まった。
胸がぎゅっと締めつけられ、呼吸まで浅くなった。
俊行と5年間、秘密の恋を続けながら、私はずっと彼と堂々と人前に立てる日を夢見ていた。
個室の中が静まり返り、全員の視線が隅へ向けられた。
俊行は鼻で笑い、ライターを弄びながら、赤い火がその彫りの深い横顔を照らしていた。
「お前だって、妹って言っただろ。その関係を明かすわけがない。
もう若葉にはプロポーズした。俺の妻になる資格があるのは、彼女だけだ。
昔、あいつの母親が愛人になって俺の母親を死に追いやった時、自分の娘が俺の下で喘ぐことになるとは思ってもみなかっただろうな」
私の血が一瞬で凍りついた。
期待で激しく高鳴っていた心臓も、その瞬間すべての力を失ってしまった。
誰かが面白がるように言った。
「長く一緒にいれば情が移るなんて言葉、俊行には通じないな。5年一緒にいても、まったく情が湧いてないとは」
俊行はタバコの煙を吐き出し、嘲るように笑った。
「復讐のためじゃなきゃ、気持ち悪さを我慢してまであいつと付き合うわけないだろ。
可愛い娘が俺の愛人になっていたって知った時、あの女はどんな顔をするのか、もう楽しみで待ちきれない。絶対面白い」
ほんの数分前まで私に甘い言葉を囁いていた男が、煙の向こうでまるで別人に見えた。
俊行の瞳には、ほんの欠片の愛情もなかった。
そこにあるのは、底知れない冷たさと、長年の復讐が叶うことへの期待だけだ。
個室には次々と口笛が響き、皆が囃し立てた。
「さすが俊行だな、そんな完璧な復讐思いつくなんて」
「でも損はしてないだろ。蘇我ってダンス専攻だし、あのスタイル……たまんねえよな」
「さっき、蘇我を慌てて隣の部屋に連れ込んだだろ。何してたか、俺らがわからないとでも思ってんのか?」
「こんな早く戻ってきたのは、毎晩やりすぎて身体壊したんじゃね?若葉お嬢様が可哀想だな」
……
耳を塞ぎたくなるような言葉が、一つ一つ心臓に突き刺さった。
私は必死に手のひらを握りしめ、息が詰まりそうなこの場所から慌てて逃げ出した。
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