3年悼んだ息子は、親友をママと呼んだ第3話
この話は約1154字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
直人は頬を押さえたまま、離婚、とつぶやいた。それから、鼻で笑った。
「腹立ちまぎれにそんなこと言うなよ。美緒と僕は、本当に君が思ってるような関係じゃない」
話しだしたところで、直人の携帯がけたたましく鳴った。
「高瀬さんのお電話でしょうか。汐丘総合病院ですが、藤代美緒さんが今、こちらに……」
最後まで聞きもせず、直人は家を飛び出した。
その背中を、冷めた目で見送った。
システムが反応する。
(離脱まで、残り48時間です)
……
夜になっても、直人は帰ってこなかった。
うとうとしていた私は、夜中、煙にむせて目を覚ました。部屋中に火が回っている。
「助けて――!」
ドアに飛びついたが、ノブを回しても開かない。必死に扉をたたいた。
「お父さん!お母さん!悠真!みんな無事なの?」
不意に、扉の向こうから悠真の声がした。
「なんで僕を連れていこうとするんだよ!なんでママを悲しませるの!悪い女なんか、燃えて死んじゃえ!ママの仕返しだ!」
ドアの隙間から、悠真が見えた。外に立ち、憎しみを込めた目でこちらを見ている。
「火をつけたの、悠真なの?」
目を見開いた。
悠真は得意げだった。
「どうせ、おばさんなんか誰も好きじゃないもん。燃えて死んじゃえばいい!おばさんが悪いんだから!」
煙が喉の奥まで入り込む。私は床に膝をつき、激しくせき込んだ。
システムが激しく点滅した。
(ユーザー様、もう少し耐えてください。直人様が戻ってきました!)
間もなく、ドアが蹴破られた。直人が飛び込んできて、消火器が床に転がる。私を抱き締める腕が震えていた。
再び目を開けると、白一色の景色が広がっていた。
ベッドのそばで、直人が眉間をもんでいる。ひどく疲れた顔をしていた。
「気がついた?医者に診てもらったけど、大したことはないって」
彼が水の入ったコップを差し出した。
「悠真のことは責めないでやってくれ。わざとじゃないんだ。君に連れていかれるのが怖かっただけだよ」
かすれた声を絞り出した。
「わざとじゃない?私を焼き殺そうとしたのよ。こんな子に育てた美緒には、責任がないとでも言うの?」
直人の顔がさっと険しくなった。
「もういい!結局、美緒の育て方が悪いって言いたいんだろう?」
彼は勢いよく立ち上がった。
「今日、君が一緒に来るかなんて聞かなきゃ、悠真だってあんなことはしなかった!」
彼を見つめるうち、言い返す気力さえなくなった。何を言っても、直人は聞こうとしない。
「帰って。もう疲れたの」
目を閉じて拒んだのに、直人はいつまでも動かなかった。
突然、彼が私の手首をつかんだ。
「美緒が急性白血病だって分かったんだ」
すがるように私を見つめ、かすれた声で続けた。
「君が意識を失っている間に、医者に適合検査を頼んだ。君なら、美緒のドナーになれる可能性が高いそうだ。紗季、彼女を助けてくれないか?」
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R15855- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。