100回目の婚約披露宴:彼氏は私を置き去りにする第1話
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100回目となる婚約披露宴。それだというのに、神崎湊(かんざき みなと)はまたしても、迷うことなく私を置き去りにした。
交際して七年。これまでの99回の婚約でも、彼は「幼馴染がまだ結婚していないから、約束を破るわけにはいかない」と言い続けてきた。
私は手の中にある指輪を握りしめ、初めて彼に問いかけた。
「じゃあ、白川琴音(しらかわ ことね)が一生結婚しなかったら、あなたも一生彼女に付き添うつもりなの?
私はどうなるの?私のことは何だと思っているの?」
湊は瞬く間に顔色を曇らせ、私の手から指輪をひったくると、窓の外へと投げ捨てた。
「琴音とは子供の頃から、一緒に結婚しようって約束してたんだ。彼女を一人残していくなんてできるわけないだろ!
それに、一ノ瀬雫(いちのせ しずく)。お前は紙切れ一枚にそこまでこだわるのか?俺たち、七年も一緒にいるんだ。その紙があろうがなかろうが、同じことじゃないか」
* * *
100回目となる婚約披露宴。それだというのに、神崎湊(かんざき みなと)はまたしても、迷うことなく私を置き去りにした。
交際して七年。これまでの99回の婚約でも、彼は「幼馴染がまだ結婚していないから、約束を破るわけにはいかない」と言い続けてきた。
私は手の中にある指輪を握りしめ、初めて彼に問いかけた。
「じゃあ、白川琴音(しらかわ ことね)が一生結婚しなかったら、あなたも一生彼女に付き添うつもりなの?
私はどうなるの?私のことは何だと思っているの?」
湊は瞬く間に顔色を曇らせ、私の手から指輪をひったくると、窓の外へと投げ捨てた。
「琴音とは子供の頃から、一緒に結婚しようって約束してたんだ。彼女を一人残していくなんてできるわけないだろ!
それに、一ノ瀬雫(いちのせ しずく)。お前は紙切れ一枚にそこまでこだわるのか?俺たち、七年も一緒にいるんだ。その紙があろうがなかろうが、同じことじゃないか」
……
私は式場の中央に立ち尽くしていた。手はまだ、湊に指輪を嵌めようとした姿勢のまま固まっている。けれど、私の指先にあったはずの指輪は、すでに湊によって窓の外へ投げ捨てられていた。
結婚というものを全く意に介さない湊の言葉が、私の心に深く突き刺さる。
まるで頭から氷水を浴びせられたかのような、骨まで凍みる寒さを感じていた。
もっとも、こんな光景はすでに99回も経験してきたことだ。
23歳から30歳まで、私は湊と七年間恋人関係にあり、99回の婚約披露宴を行ってきた。そして今日が、記念すべき100回目だった。
これまでの99回、彼はいつも「幼馴染の琴音がまだ結婚していないから」という理由で私を拒んできた。
そして琴音もまた、毎回示し合わせたかのようなタイミングで電話をかけてくるのだ。
「苦しい、湊くんがそばにいないとダメなの」と。
案の定、湊のスマートフォンが再び鳴り響いた。
画面に「琴音」の名前が表示された瞬間、湊は迷わず通話ボタンを押した。
電話の向こうから聞こえる琴音のすすり泣く声が、会場中の人々の耳にはっきりと届いてしまう。
「湊くん……また発作が出ちゃったの。早く来て、そばにいてよぉ。湊くんがいないと治らないの……」
琴音の猫なで声を耳にした瞬間、私は吐き気をもよおした。
私と湊が付き合い始めてからというもの、琴音は「分離不安症」を患っていると言い出した。湊がそばにいないと発作が起きるのだという。
世界広しといえど、特定の男一人にだけ反応する奇病などあるものか。
しかし、あろうことか湊はそれを信じて疑わなかった。
そのため、琴音はいつでもどこでも、電話一本で彼を呼び出すことができた。たとえそれが、私たちの婚約披露宴の最中であっても例外ではなかった。
湊は慌てて彼女を慰めた。「琴音、もう少しだけ頑張れ。すぐに行くから」
湊の声がマイクを通して会場に響き渡る。言い終わるや否や、彼は踵を返して出て行こうとした。私はとっさに彼の手首を掴んだ。
参列していた親族や友人たちがざわつき始める。彼らの値踏みするような視線が、まるで私を晒し台に釘付けにしているかのように感じられた。
今日は100回目の婚約披露宴であると同時に、私の30歳の誕生日でもあった。
「女性の30歳は一つの節目だ」とよく言われる。その節目を越えれば、また新しいステージが待っていると。
だからこそ、私はあえてこの100回目の婚約披露宴を30歳の誕生日に選んだのだ。新しい年齢の始まりと共に、湊と人生の新しい段階へ進むことを願って。
今回こそは、無事に婚約ができると思っていた。
しかし予想に反して、彼はまたしても非情に私を拒絶し、私を置き去りにしようとしている。
爪が掌に食い込むほどの強さで拳を握りしめ、イライラしているような表情を浮かべる湊を見つめた。私はもう一度、彼に問いかけた。これは自分自身に対し、完全に諦めるきっかけを与えるための問いでもあった。
「湊、私たち七年も一緒にいて、これが100回目の婚約披露宴なのよ。冗談もいい加減にして」
湊は鼻で笑った。その口調には、隠しきれない軽蔑と無関心が滲んでいる。
「それがどうした?俺と琴音の二十数年の絆は、お前とのたかだか七年ごときに劣るとでも言うのか?
もう99回も言ったはずだぞ。これが100回目だ。よく聞け。琴音が結婚しない限り、俺も結婚はしない。これは俺たちの子供の頃からの約束なんだ。
今、琴音は分離不安で苦しんでる。俺なしじゃダメなんだよ。こんな時に彼女を一人見捨てるなんてできるわけないだろう。
それに、俺たちの愛を証明するのに、あんな紙切れ一枚がどうしても必要なのか?」
私がまだ何か言いかけて、彼の考えを変えようとしたその時、湊は力任せに私の手を振り払い、大股で会場を後にしてしまった。
これまでの99回と同じように、その背中はあまりにも決然としていて、私に彼を引き止める隙など微塵も与えてくれなかった。
遠ざかっていく彼の背中を見つめながら、ついに私は堪えきれず、目頭を熱くした。
湊、琴音はあなたがいないとダメなのかもしれない。でも、あなたは一度でも私のことを考えたことがあるの?
あなたはもう100回も、親戚や友人たちの嘲笑の中に私を一人置き去りにした。私は、いつでも捨てられていい存在だと言うの?
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