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雲の如く、自由な空へ第1話

この話は約2392字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

小野寺司(おのでら つかさ)の誕生日、彼の「欲しい」という一言に応えるため、古泉雫(こいずみ しずく)は映画館の暗闇の中で、一糸まとわぬ姿になった。

しかし、革ベルトで椅子に縛り付けられた雫を残し、司は女秘書からの電話一本で、振り返ることもなくその場を去っていった。

雫は、そのあまりにも屈辱的で無様な格好のまま、夜が明けるまで拘束され続けた。

一晩中もがき続け、手首が血に染まるほど擦れて、ようやくベルトを解くことができた雫は、命からがら家へと辿り着いた。

だが、ボロボロになりながら帰宅した雫を待ち受けていたのは、リビングに集まった大勢の来客と、大型モニターに映し出された――映画館で見知らぬ肥満男と情を交わす、彼女自身の淫らな映像だった。

目を凝らせば、それがAIによって精巧に作られた動画であることは明らかだ。

* * *

小野寺司(おのでら つかさ)の誕生日、彼の「欲しい」という一言に応えるため、古泉雫(こいずみ しずく)は映画館の暗闇の中で、一糸まとわぬ姿になった。

しかし、革ベルトで椅子に縛り付けられた雫を残し、司は女秘書からの電話一本で、振り返ることもなくその場を去っていった。

雫は、そのあまりにも屈辱的で無様な格好のまま、夜が明けるまで拘束され続けた。

一晩中もがき続け、手首が血に染まるほど擦れて、ようやくベルトを解くことができた雫は、命からがら家へと辿り着いた。

だが、ボロボロになりながら帰宅した雫を待ち受けていたのは、リビングに集まった大勢の来客と、大型モニターに映し出された――映画館で見知らぬ肥満男と情を交わす、彼女自身の淫らな映像だった。

目を凝らせば、それがAIによって精巧に作られた動画であることは明らかだ。

「意外ですね。普段はあんなに清楚で上品な雫さんが、裏ではいやらしい遊びをなさっているなんて」

秘書の西内美咲(にしうち みさき)は司に寄り添い、わざとらしく甘えた声を出した。

「社長、奥様とは結婚して五年間、一度も夜を共にしたことがないと伺いましたけど、それってもしや……」

美咲が言い終える前に、司はその体を抱き寄せた。薄い唇が侵略的とも言えるほど迫ったが、理性に縛られるように、美咲の唇のすぐ傍に、キスを落とした。

彼の黒い瞳には情欲が渦巻き、含みのある声で囁いた。

「五年間、あいつに指一本触れなかった理由は、君がいるからだ」

その一言で、場にいた人々は一斉に騒ぎ出した。

雫はそのおぞましい光景を目の当たりにし、玄関にあったアンティークの花瓶を力任せに叩き割った。

一瞬にして室内は静まり返った。雫は目を真っ赤に腫らし、花瓶の破片を踏みつけながら中へと歩を進めた。

彼女はスクリーンを指差し、枯れた声を絞り出した。

「あなたが、やったの?」

しかし、美咲は恐れる様子もなく、勝ち誇ったように笑った。

「奥様、社長を責めないでください。あの動画は……私が作ったんです」

そして、わざとらしく言葉を付け加えた。

「でも、素材を提供してくださったのは社長ですわよ」

再び沸き起こる嘲笑の中、雫の表情はますます険しくなっていった。

司は美咲をかばうように自分の背後に引き寄せると、冷徹な眼差しを雫に向け、軽々しく言った。

「美咲はまだ若くて遊びたい盛りだ。このAI動画、ただの悪ふざけに過ぎない。

そこまで目くじらを立てる必要がないだろう?」

雫はあまりの言い草に失笑した。鼻の奥がツンと痛み、激しい悲しみがこみ上げてきた。

彼女の声は震えていた。

「悪ふざけ?なら、彼女の顔をAIでアダルト動画のヒロインに差し替えるのはどうでしょうか?」

司の顔が瞬時に険しくなった。彼は雫に向かって大股で歩み寄った。

初めて自ら雫に伸ばした手は、情愛ではなく、彼女の襟元を力任せに掴むためのものだった。

「雫、貴様……やれるものならやってみろ」

司の瞳に宿る剥き出しの殺気は、氷の楔となって雫の心臓を深く突き刺した。

美咲は司の背後に隠れ、いかにも無実だと言わんばかりの表情を浮かべた。

「奥様、どうしてそんなに私を嫌うのですか?

昨夜、映画館で社長と楽しんだあの『プレイ』は私が提案したものですが、悪気はなかったんです。

社長が奥様を嫌っているからこそ、私を口実にして、全裸の奥様に触れることさえ拒んだのでしょうに」

雫の心は極限まで冷え切った。彼女は司の手を振り払い、傍らにあったスマホを手に取って電話をかけた。

背後からは司の氷のように冷たい脅し文句が響いた。

「言ったはずだ、美咲はただの冗談だとな。もしどうしても通報すると言うなら、この動画を京川市の人間にバラまいても構わないんだぞ」

そう言い捨てると、司は美咲を連れて部屋を出ようとした。

雫とすれ違いざま、美咲はわざとらしく口を開いた。

「社長、そんなに優しくしないでください。奥様がまた怒ってしまいますわ」

司の態度は依然として硬く、雫について語るその口調は、まるで縁もゆかりもない他人について話しているかのようだった。

「あいつは名ばかりの妻だ。俺が求めてるのは、最初からあいつじゃない。

美咲、あの時、M国の暴動から命懸けで俺を救い出してくれたのは君だ。

俺の体も、命も、すべて君のものだ」

過去の出来事を口にする彼を背に、雫が瞬きをすると、堪えていた涙がスマホの画面に音もなく落ちた。

それと同時に、雫がかけた海外の電話がつながった。

スマホの向こうから、男のからかうような声が聞こえてきた。

「おや、M国で助けた男といちゃつくのに忙しいんじゃないのか?俺に電話なんて、何の用だ?」

雫の声には、隠しきれない疲弊と決意が滲んでいた。

「そこは、まだ人手が足りていないわよね?

……急いで彼との関係をすべて断ち切ってから、そちらへ向かうわ」

雫はカレンダーを見上げた。

七日後の日付には、丁寧に赤い印がつけられている。その日は、彼女と司の五周年の結婚記念日だ。

「七日後のフライトよ。必ず、時間通りに行くわ」

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