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雪が舞い、あの少年はもういない第3話

この話は約1511字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

渉が胡桃とチャリティーパーティーに出席した写真が、その日の夜、香市のニュースでトップ記事になった。

マスコミは面白がって、こんな見出しをつけた。【#斉藤渉、新恋人と公の場に妊娠説浮上で離婚危機か?】

写真の中の渉は、胡桃をそっと支えている。そして胡桃の首には、ピンクダイヤのネックレスが光っていた。

あれは、私たちの結婚3周年の記念日に、渉がオークションで競り落として、私に贈ってくれたものだった。

彼は、このダイヤは「天使の心」っていう名前で、私への永遠の愛を表してるんだって言ってたのに。

笑っちゃう。

次の日、私はいつものようにエステに行った。

中に入るとすぐ、何人かのマダムたちが噂話をしているのが聞こえてきた。

「ねえ、ニュース見た?斉藤家のあの方、今回はさすがにヤバいんじゃない?」

「ほんとよね。『天使の心』まで、あの愛人の首にかかってるんだも。完全に本妻への当てつけじゃない?」

「ふん、でも斉藤社長の奥さんも自業自得よ。昔、斉藤社長がまだ日陰の身だったころ、彼女が必死に支えたんじゃない。実家の内田家の財産までつぎ込んでね。お金を持った途端にダメになる男に尽くした報いってわけ」

「それに、今じゃあの愛人のために三食まで作ってあげてるって噂じゃない?女の恥だわ。私なら、恥ずかしくて生きていられない」

ここまで聞いて、私はドアを開けて中に入った。

休憩室は一瞬で静まり返った。

マダムたちは私を見ると、一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐに面白いものを見るような表情に変わった。

「あら、斉藤さんじゃないですか。今日はどうしましたか?お家にいる大事なお客さんにご飯を作らなくていいんですか?」

声をかけてきたのは松田絵美(まつだ えみ)だ。家は建材業で、ずっと渉に取り入りたがっていたけど、私が間を取り持たなかったせいで逆恨みされている。

私は平然とした態度でいつもの席に座ると、エステティシャンが出してくれたお茶を受け取り、そっと口をつけた。

「ご飯作りなんて、たまにするから愛情表現になるんです。毎日なら、ただの使用人ですよ。私は松田さんとは違いますから。外で女子大生を囲っている旦那さんの気を引くために、わざわざ料理教室に通っているそうじゃありませんか?」

絵美の顔色が変わった。「何、何を言ってるんですか!」

「松田さんご本人が一番よくご存知でしょう」

私はティーカップを置き、その場にいる全員に視線を巡らせた。

「夫が誰にネックレスを贈ろうと、彼の自由ですよ。しょせん斉藤家にとって、ネックレスの一本なんてはした金ですから。でも私の持ち物については話が違います。たとえ私がそれを誰かにくれてやるとしても、他の方々にとやかく言われる筋合いはありません」

そう言い放つと、私はもう彼女たちを相手にせず、そっと目を閉じた。

口ではうまく言い返したけれど、あの人たちの目には、私が笑いものに映っていることは分かっていた。

実家の後ろ盾をなくし、夫の愛も失いかけている、哀れな女だと。

エステが終わって外に出ると、渉から電話があった。

「玲奈、今夜、昔からの仲間で集まるんだ。お前も来ないか?」

彼の声は上機嫌で、昨日のビンタのことなんてすっかり忘れているようだった。

「坂本さんは行かないの?」と、私はそっけなく聞いた。

「あの子は今日、妊婦健診で疲れたから家で休んでるよ。それに……渡辺社長たちも来るんだ。お前も知ってるだろ?彼女を連れて行くのはちょっとまずい」

私は鼻で笑った。男って、本当にこういう時だけ都合がいい。

体裁を整えたい時、彼が思い出すのは、家柄が良くて振る舞いも完璧な、私という本妻なのだ。

一方の胡桃は、快楽にふけるための、ただの遊び道具に過ぎない。

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