離婚後、永遠におさらばだ第1話
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四年間の結婚生活を終わらせたのは、彼自身が記した一筆だった――彼は何も知らないまま、私は自由の身となった。
私はソフィア・モレッティ、都市一のマフィア、モレッティ家の後継者ジェームズ・モレッティの、誰にも知られざる妻。
しかし、彼の幼なじみで輝くばかりのヴィッキーが戻ってきた時、ついに分かった。私は最初からキープ女でしかなかったのだと。
そして、私は最後の一手を打った。
離婚届を大学の提出書類に見せかけて彼の机に差し出すと、ジェームズはその内容も確かめようともせずにサインをした。まるで私との結婚の誓いと同じように、無造作に扱った。それで私たちの結婚は、あっけなく終わりを告げた。
だが、私が手にしたのは自由だけではない。この腹には彼の後継者が宿っている――やがて彼が失ったものに気づいた時、この秘密は奴を地獄へと引きずり込む。
かつて私を無視したあの男が、今、この世界を引き裂いてでも私を探し出そうとしている。彼の高級ペントハウスから暗黒街の底辺まで、ありとあらゆる手を尽くして。だが、もうおとなしく待つつもりはない。私は獲物なんかじゃない。
私はモレッティ一族の手の届かない場所で、新たな自分を築き上げた。
今回こそ、私が彼の愛を乞うことはない。
彼の方が、私の愛を乞う番だ。
* * *
離婚届を握りしめ、私は法律事務所へ向かう。この四年間――ソフィア・モレッティとして、街で最も強大なマフィア一族の後継者ジェームズ・モレッティの妻として過ごした四年間は、今日終わる。
中に入っても、担当の弁護士は書類から視線を上げようともしなかった。
「離婚の手続き、お願いします」
書類を机に置いて伝えると、弁護士はやっと私を見上げた。乱れたポニテに色あせたジーンズ、リュックは肩にかけたまま。
彼の表情がこわばった。「すみません、離婚ってのはな、気まぐれで申し込むもんじゃないんですよ」
彼がまともに取り合わないのも無理はなかった。私は確かにうっかり違う事務所に迷い込んだ女子大生のように見えた。四年も人妻になっていた者には、とても似合わない姿だった。
だが、それも想定内だった。
「どうか判子を押してください。夫のサインは問題ありません」と、私は冷静に言った。
……
モレッティ家に戻ると、不自然なほど静かだった。ゲートで立っている警備員も、私が通っても目もくれなかった――ジェームズの世界では、私はもはや見えない存在なのだ。
私はまっすぐジェームズの書斎へ向かった。ドアは少し開いていて、中から笑い声が聞こえた。
そして、ある香りがした。
トリュフの香りだった。
ジェームズは家中に匂いがこもるのを嫌うと言っていた。ニンニクも魚も、匂いの残るものは一切駄目だと。だが今、部屋には上品な白トリュフの香りが濃厚に漂っていた。これは、本命の者だけが楽しめる特権だ。
ドアを押して中へ。
そこには私の夫、ジェームズ・モレッティがいた。その机にくつろいでいる姿は、私の前では見せないものだった。その横には幼なじみのヴィッキー・ロッシが寄り添っている。彼女が離婚してこの街に戻ってきたのはつい最近のことだった。
彼女はトリュフをたっぷりのせたパンを彼に食べさせていて、その指が微妙に長く触れた。
ジェームズは私に気づいて、その笑顔が一瞬で消えた。
「ソフィア、早いな」って冷たい声で。
ヴィッキーが振り向くと、赤い唇をほころばせた。「あら、ソフィア!ちょうどおやつを食べていたところなの。二人分しかないんだけど、よかったら…」
「結構です」
ピカピカに光るマホガニーの机に書類を滑り込ませると、張り詰めた空気の中、紙の音が不自然に大きく響いた。ジェームズはウイスキーのグラスを口元で止めたまま、わずかに目を細めた。
「何これ」
「大学の同意書です。署名をお願いします」
私は署名欄を見せながら、うつむいた。
「私の研究のプロジェクトに対する同意書です。だって今、あなたが私の、唯一の家族ですから」
この事実が確実にそこにある。数年前に起きた不審な交通事故で両親を失い、そのせいでジェームズの世界に引き込まれた。私の孤独を、彼は誰よりもわかっている。
ジェームズが眉をひそめて「ちょっと見せてくれ」と言った瞬間、私の背筋が凍った。え、まさか……書類を読む気?普段なら大学の書類って聞いただけで、中身も確認せずにサインするくせに。
なんで今日に限って?なんで今?!
「ジェームズ、もう」ヴィッキーは彼の腕に手を置いて笑った。「大げさすぎじゃない?ただの書類ですよ。先月のチャリティーだって、同じような書類いっぱいサインしたでしょう?」
モレッティ家の重要取引先であるロッシ・エンタープライズのお嬢様ヴィッキーは、戻ってくるやすぐにジェームズの世界にすんなりと入り込んでいた。
二人はいつも一緒だった。パーティー、オークション、そして取引が行われる煙たい裏部屋のポーカーゲームに至るまで。今やジェームズの行く先には必ずヴィッキーの姿がある。彼女のデザイナードレスは、ジェームズの仕立て服とまるでお揃いのようにお似合い。
彼は一瞬ためらったが、万年筆を手に取り、あっさりとサインをした。日頃の死亡宣告書も契約書も、いつもこんな感じだ。表紙の「離婚届」という文字が彼の目に入る前に、私は書類をスッと引き戻した。
ヴィッキーが嗤った。「彼女、妻ってより妹みたいに扱ってるじゃない」
ジェームズは黙ったままウイスキーを一口飲んだ。
震える手がバレる前に、私は背を向けて去った。
背後でドアが閉まる音がした。
私は自由になった。
モレッティ家のマーブルの廊下を歩きながら、サイン済みの離婚届をぎゅっと握る。インクがまだ乾いてないけど、この結婚はとっくに終わっていたのだ。
あの頃のジェームズは違った。眠ったふりをする私の背中をそっと撫でたり、家族のパーティーでも、私を独占物のように、暗がりに引き寄せて熱い口づけを重ねたりした。
だが今の彼の目には、私なんて映っていない。
私が16歳の時に両親は亡くなった。当時モレッティマフィアの親分、ドン・モレッティは、私を引き取ってくれた。父はドンさんの元運転手で、ドンを弾丸からかばったことがあるらしい。そんなわけで、私はジェームズ・モレッティと同じ屋根の下で暮らすことになった。
ジェームズは、私が望まない、冷たくて、危険で、非情な男だ。25歳にして、彼はすでに父の組織の半分を掌握していた。新聞は「若き実業家」と呼んだが、その本当の姿は裏社会の連中しかわからない。
最初は距離を置いて、目立たないようにしていた。四年前のあの夜、ジェームズが別人の血だらけで帰ってくるまでは。
キッチンでナイフの傷を手当てしている私を、ジェームズは見つけた。傷は彼の父親の部下からの「贈り物」だ――親分に拾われた女は狙いやすい獲物と判断したらしい。
ジェームズは何も言わず、震える私の手から包帯を奪い、自ら傷の手当てをした。彼の親指が私の太ももの内側をかすめた時、押しのけるべきだった。
なのに、私は彼を抱き寄せた。
三週間後、私たちは結婚した。ジェームズは「ビジネス契約だ」と言った。私には保護、彼には体裁を整えるためだと。彼の言葉を信じかけていた――ヴィッキー・ロッシが街に戻るまでは。急に彼の夜の残業が倍増した。
ヴィッキー・ロッシはロッシ家の後継者だ。ロッシ家はモレッティ家とビジネスにより、深く結びついていた。フランス人の夫と離婚して帰国した今では、その存在感はさらに強まっていた――ジェームズの会議にも、車にも、生活にも、すっかり入り込んでいた。
先月、それは証明された。
ジェームズがフロント企業で経営するレストラン「ダンテズ」で、結婚記念ディナーを六時間も待った。深夜零時、ようやく現れたのは右腕のマイケルで、ダイヤのブレスレットと「仕事のトラブル」という言い訳を置いていった。
翌朝、ゴシップコーナーに写真が載せられていた――ジェームズとヴィッキーがオペラで、彼女の指が彼のタキシードポケットに突っ込まれているショット。普段あのポケットには拳銃がしまわれていたのに。
それが、私が脱出の計画を始めた瞬間だった。
離婚届は最終の難関。ジェームズは読むこともなくサインした――ヴィッキーの色目とキスに完全に気を取られた。
今、屋敷の豪華な玄関に立って、公証人の押した印鑑を指でなぞっていた。一ヶ月もすれば、これが私の自由へのチケットだ。
豪華な牢獄とも、偽りの日々とも、おさらば。
ジェームズはその帝国も、暴力も、ヴィッキーもそのまま持って生きればいい。
私は私の人生を取り戻す。
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