和紙文離婚後、息子が名家の唯一の継承者になった · 第3話設定≡

離婚後、息子が名家の唯一の継承者になった第3話

この話は約1845字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

庭の中で咲いていたバラが雨に打たれて、ばらばらになっていた。

そのバラは時雄が結婚前に自分で植えたもので、「バラはお前にぴったりだ」と言っていた。

今、そのバラはもうすぐ枯れそうだ。

私は玉実のベッドのそばに歩み寄り、彼の額に軽くキスをした。

「玉実」私は静かに言った。「ママは負けないよ」

その時、書斎から物が壊れる音が聞こえた。

戦争が始まった。

時雄と親権を争う訴訟の話は、あっという間にJ市の上流社会に広まった。

「真由のやつ、財産を欲しがらないって?頭がおかしいんじゃないか?」

「駆け引きしようとしているんだろう。この手の女は見慣れてる」

私の親友の神原晴美(かんばら はるみ)まで、遠方から駆けつけて私を非難した。

「真由、頭おかしいんじゃないの?江口時雄が浮気したのよ。全部は彼のせい。財産分与は、きっちりと行うべきなの!

訴訟費用、どれくらいかかるか知ってる?子供を育てるためにどれだけのお金が必要か知ってるの?」

私は彼女の涙で赤くなった目を見つめながら、心の中に温かい気持ちが湧き上がった。

この世には、私を本当に心配してくれる人もいるんだと感じた。

私は彼女の手を引いて言った。「晴美、私は私なりの考えがある」

開廷の日、時雄の弁護士が証拠を大量に提出した。

私が医師としてしばしば残業していて、安定した付き添い時間を確保できないことを説明した。

そして、私名義の物件は結婚前に買った小さなアパートだけで、貯金は200万に満たなかったが、時雄は数百億の資産を持っている。

さらに、彼らは私が大学時代、学業のプレッシャーで3ヶ月間心理カウンセラーに通っていた記録まで見つけ出した。

裁判官は私を見て、同情の眼差しを向けていた。

被告席に座っている時雄は、スーツを着て、余裕の態度で、時折投げかける眼差しには軽蔑がにじみ出ていた。

休廷の間、私は廊下で時雄と雨音に出くわした。

雨音は甘ったるい笑みを浮かべて言った。

「真由さん、玉実の親権を取りたいですか?どうしてですか?一人で子供を育てるのは大変でしょ」

「雨音さん、まだ江口家に嫁いでもいないのに、どうして他人の家庭事情を心配しているの?」

私は彼女に構わず、時雄を見た。「私は玉実を引き取る」

彼は冷たく言った。「お前、養えないだろ。彼の1年分の学費だけで、お前の数年分の給料だ」

「それは私の問題」

彼は私をじっと見て、突然笑った。「わかった。法廷で会おう」

第二回の裁判前、私の弁護士は顔を曇らせて言った。

「相手はあなたの3年前の医療ミス記録を見つけてきました」

私は驚いて言葉を失った。

あの時、私ができる限りの処置をしたが、患者は助からなかった。

鑑定結果では私に責任はないとされている。

弁護士はため息をついた。「江口家は何でも調べてきます。あの時、トラブルを起こした家族を見つけ出し、証言を引き出そうとお金を出しています。あなたの医術の未熟さと、責任感の欠如を証明しようとしています」

その瞬間、私は書類を握る手が少し震えているのを感じた。

怖かったわけじゃない。ただ心が冷たくなった。

時雄は本気で私を追い詰めようとしている。

勝つだけではなく、私を奈落の底に突き落とそうとしているのだ。

第三回の裁判で、私は立ち上がり言った。「私は全ての財産を放棄します。ただ、玉実の親権だけをください」

会場がざわめき立った。

「私は何もかも捨てて、養育費もいりません」

時雄は複雑な表情を浮かべていた。

雨音の顔からは得意げな表情が消え、代わりに困惑の色が浮かんだ。

彼女はおそらく、なぜ江口家の財産を放棄するのか理解できなかったのだろう。

最終的に、裁判所は玉実の親権を私に与えると判決を下した。しかし、私は玉実の生活水準を保つ責任を負い、時雄にはいつでも面会する権利が保障された。

裁判所を出ると、雨音はにっこりと笑って言った。「真由さん、これから大変でしょうけど、困ったことがあったらいつでも言ってくださいね」

時雄は何も言わず、ただ私を見つめていた。

晴美が古びた車で私たちを迎えに来た。

後部座席で、玉実はおもちゃで遊びながら言った。「ママ、どこに行くの?」

「お家に帰るよ」私は彼の額にキスをした。

バックミラーの中で、江口家の黒いロールス・ロイスがどんどん遠くなっていった。

時雄と雨音の姿もだんだんと小さな黒い点になって消えていった。

晴美は車を運転しながら涙を拭った。

「真由、本当に何もいらないの?服もほとんど持ってきてないじゃない。あなたのクローゼットにあるバッグ、どれも数十万はするのに……」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

R43310
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。