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隠し妻三年、夫が連れ帰ったのは想い人だった第3話

この話は約1951字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

蓮司のマンションでの生活が始まった。

翌日、私の銀行口座とクレジットカードはすべて凍結された。

瑛太の仕業だ。

兵糧攻めにすれば、私が泣いて縋り付いてくるとでも思っているのだろう。

画面に並ぶ凍結通知を一瞥し、私はスマホをソファに放り投げる。

もう一台のスマホを取り出し、仕事用の裏アカウントにログインして、ストックしていた資金でデリバリーを頼んだ。

お金なら、自分で稼げばいい。

午後になると、ネットニュースは私の話題で埋め尽くされた。

#桐生グループ社長夫人、泥沼の不倫劇

#豪邸を追われた元妻、妊娠逃亡。お相手はまさかの……

センセーショナルな見出しと共に、昨日私が蓮司に守られて屋敷を出る写真が掲載されている。

背後には、顔面蒼白の瑛太が写り込んでいた。

コメント欄は阿鼻叫喚だ。

恥知らずだの、ふしだらだの、散々な罵詈雑言が並ぶ。

金目当てで桐生家に潜り込み、今度はさらに太い客に乗り換えた悪女――それが世間における私の新しい肩書きらしい。

この炎上の裏で、真香が糸を引いているのは明白だ。

彼女の望みは、私が社会的に抹殺され、瑛太の世界から永遠に消えること。

私はスマホを閉じ、求人サイトで履歴書を送り始めた。

だが数日経っても、梨のつぶてだ。

瑛太が手を回しているに違いない。彼は私の退路を断つつもりだ。

八方塞がりの中、知らない番号から着信があった。

静江だ。

彼女の声は、耳障りなほど甲高い。

「由衣、手切れ金として2000万円あげるわ。とっととそのお腹の汚らわしいものを処理しなさい!」

私は無言で通話を切った。

すぐにメッセージが届く。

【調子に乗らないで!蓮司が本気だとでも思ってるの?あの子は瑛太への当てつけで、あんたみたいな中古品で遊んでるだけよ!飽きられたらもっと悲惨なことになるわよ!】

【金を持って、神南市から出て行きなさい。二度と戻ってくるな!】

私は画面を一瞥し、静江の番号を着信拒否に設定した。

……

夜、蓮司が顔を見せに来た。

妊婦用のサプリメントをいくつか持って。

「ネットの件、俺が動こうか?」

彼はそう言った。

「いいえ」

私は首を横に振る。

「人の口に戸は立てられないもの。言いたい連中には言わせておけばいいわ」

私が気にするのは、見ず知らずの他人の評価ではない。

蓮司は複雑な色を帯びた瞳で私を見る。

「瑛太は、このまま引き下がらない」

「わかってる」

私は答えた。

「彼は納得できないだけよ。言いなりだった人形が意思を持って逃げ出したこと、それも一番屈辱的な方法でね」

結局は、彼の独占欲とプライドの問題だ。

そこに愛などひとかけらもない。

翌日、ある小さな会社が面接をしてくれることになり、私は出かける準備をした。

ドアを開けた瞬間、招かれざる客と鉢合わせる。

静江と、見知らぬ中年女だ。

静江は私を見るなり、ヒステリックに手を振り上げた。

「この売女!どの面下げてこの街にいるのよ!」

私は警戒していたため、さっと身を引いてその手をかわす。

「何しに来たの?」

「決まってるでしょ!病院へ連行して、その腹の汚物を掃除するのよ!」

彼女が叫ぶと、横にいた女が私を捕らえようとする。

手首には病院のIDバンド。

無理やり中絶させる気だ。

背筋が凍る。

瑛太、これがあなたのやり方なの?

恥をかかせたからって、私の子供まで殺そうというの?

私は必死に抵抗するが、大人二人の力には敵わない。

ずるずると引きずり出されそうになったその時、エレベーターの扉が開いた。

蓮司だ。

惨状を目にした瞬間、彼の表情が能面のように冷徹になる。

「離せ」

決して大きな声ではない。だが、絶対的な命令だった。

静江は蓮司の顔を知らないらしく、喚き散らす。

「何よあんた!桐生家のことに口出しする気?」

蓮司は彼女を一瞥もせず、私に歩み寄ると、強引に彼女たちの手から引き剥がし、自分の背後に隠した。

二人の女は彼の圧倒的な威圧感に気圧され、思わず手を離す。

「失せろ」

蓮司が口にしたのは、その一言だけ。

静江はまだ何か言いたげだったが、蓮司の氷のような視線に射抜かれ、言葉を飲み込んだ。

彼女は悔しそうに私を睨みつけると、連れの女と共に逃げるように去っていった。

静寂が戻る。

壁に寄りかかった私の足は、恐怖で震えていた。

蓮司が肩を支えてくれる。

「もう大丈夫だ」

私は彼を見上げる。

「……また、あなたね」

一日で二度も救われた。

「奴らには指一本触れさせないと言ったはずだ」

私の目を覗き込み、彼は真摯に告げる。

不覚にも、胸が高鳴った。

「どうして?」

私の問いに、蓮司はふいと視線を逸らす。

「理由なんてない……今日は休め。面接先には断りの連絡を入れておいた」

「え?」

なぜ面接のことを知っているの?

そこまで気にかけてくれていたのか。

呆気にとられていると、再びインターホンが鳴った。

蓮司がドアを開ける。

そこに立っていたのは、瑛太だ。

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