闇に紛れる見知らぬ顔第1話
この話は約1577字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
羊の皮をかぶった狼の話、聞いたことある?
私は聞いたことがある。
実は、人の皮をかぶった人を見たこともある。
覚えておいて、
見知らぬ人が助けを求めてきたら、すぐに警察に連絡するだけでいい。
* * *
「萌香、家賃の支払いがもうすぐだよ」と、大家から電話がかかってきた。
私は田舎で一生を過ごすつもりはなかった。だから、両親が反対する中、単身で大都市に出てきた。
両親は、学歴もスキルもない私には、大都市でうまくいかないと言って非難した。
でも、7年が経ち、財布は相変わらず空っぽだけど、ここには一つ、狭いながらも自分だけの場所がある。
スマホの残高を見て、「姉さん、ちょっと待ってください。必ず後日支払います」と伝えた。
大家は少し沈黙した後、少し強い口調で言った。「萌香、物価が上がりすぎて、光熱費も厳しくてね。だから、家賃を少し上げさせてもらうことになった。2万円増しだよ」
「そんなに上がるんですね。でも、私、安定した仕事がないので......」
この地域は、市内から少し離れた静かな場所で、都会の喧騒から離れたまるで異次元のような感じだ。
ここに住むと、外の世界から隔離されたような気分になり、なんとなく安心する。故郷で抱えていた自信のなさや不安感が、ここでは少し楽になる。
「でもね、萌香、他の人はもっと家賃が上がったよ。3万円も」と、大家が言った。
私は少し迷ったが、結局同意した。
「ブーン」と、携帯が震える。接客グループからメッセージが届いた。
「女性、25歳から28歳、16000円で即決」
私は迷わず1を押した。これで家賃が払える。
自分ではこの仕事は良心的だと思っている。
他人の家庭を壊すことはしないし、金銭を騙し取ることもしない。
ただ、男性のパートナーとして一緒にいるだけ。家族や親戚の前で取り繕う仕事をする。仕事が終われば、きっちり報酬をもらうだけだ。
これまで、特に問題なく仕事が順調に進んでいた。
今回の依頼主は大きなもので、年末だからか報酬は以前の3倍にもなった。
申し込み後、すぐに出発の準備をした。この仕事を終わらせたら、ようやく家に帰って年を越せる。
細い路地を抜けて、街角に黒い影がゴミ箱の近くでうずくまっているのを見つけた。
暗くてよく見えないが、きっとホームレスの子供だろうと思った。
突然、その黒い影が私の偽ブランドバッグを引っ張った。驚いて、私は思わずその場で飛び上がった。
それは乞食の少女だった。
4、5歳くらいで、髪は乱れ、寒い冬の中、ボロボロの毛布を巻いていた。
「お腹すいてる?」と、私はバッグからチョコレートを取り出し、少女に差し出した。
少女はそれを受け取らず、無害そうな目で私を見て言った。「お姉ちゃん、家まで送ってくれませんか?」
私は一瞬、鳥肌が立った。すぐに反応して、「これは何かの詐欺だ」と思った。
私はチョコレートを投げ捨て、少女を強く押しのけて、大通りに向かって走った。
タクシーに乗ってからも、まだ心臓がバクバクしていた。少し後悔しながら振り返ると、運転手が言った。
「誰かに追われてるのか?大丈夫、足で追いかけられるより車のほうが早いから」と、後ろの鏡を見ながら優しく言った。
私は恥ずかしくなり、「あ、過剰に警戒してしまいました」と答えた。
運転手は優しい顔で、「警戒するのはいいことだよ。最近は昼間でも強盗がいるから、何があるかわからない」と笑った。
本当にそうだろうか?小さな子供がそんなトラップに使われることがあるだろうか。子供は言うことを聞かないし、予測できないことが多すぎる。
私は自分に自信があった。お客様を満足させ、報酬をもらう。それで、4万円も余分に手に入った。
家賃を払った後、残りのお金で年末の買い物をする予定だ。
帰宅したのは深夜。冷たい風が身に染みる中、寂しい道を歩いていた。影だけが私の周りを包んでいた。
いや、違う。まだ彼女がいる。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)