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過去にさよなら第3話

この話は約1412字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

誰かが笑いながら賭け金を差し出した。沢人はそれを受け取って、琴美に渡した。

そして私のほうを見て、嘲るような目を向けた。

「時音、本当に俺なしじゃ生きられないのか?俺が危ないって聞いたら、身なりも整えずに駆けつけてくれたんだな」

周りの連中が一斉に盛り上がり、笑い声が弾けた。

ひとりの男が茶化すように言った。

「時音さん、沢人はもうお前のこと嫌いだって言ってたぞ?別れたのに、まだ追っかけて来るのか?そんなに男に困ってんの?」

別の男がすぐに続けた。

「沢人、見て、こいつ焦ってるぞ。きっとまたお前に尽くしたくて、復縁でも頼みに来たんだぜ!」

「そうそう、前は気取ってたくせに、結局こうなるんだな!」

「別れたなんてウソだろ。どうせ、駆け引きのつもりだったんじゃね?」

その言葉を聞きながら、私はその場に立ち尽くし、堪えていた涙がついに頬を伝って落ちた。

私が泣くのを見て、沢人の顔に浮かぶ嘲りの色はさらに濃くなった。

彼は膝の上にいた琴美を押しのけ、数歩で私の目の前まで来ると、私の顎を掴み、無理やり顔を上げさせた。

「何を泣いてんだ?」

酒の匂いを漂わせながら顔を近づけ、彼は私の唇を軽く触れた。

そして、軽蔑するように言った。

「後悔してるんだろ?懇願すれば、俺は……」

言い終わらないうちに、私は思い切り彼の頬を叩いた。

「パシンッ」という音が部屋中に響き、笑い声が一瞬で止まった。

全員が息をのむ音だけが残った。

沢人の表情が固まり、次の瞬間、目つきは一瞬で冷たくなった。そして、眉をひそめて、私を押しのけた。

「時音、俺を殴ったのか?たったこれっぽっちのことで?」

琴美が慌てて駆け寄り、彼の腕をつかんでなだめるように言った。

「沢人さん、怒らないで。彼女、嫉妬してるだけ。ちょっとおかしくなってるの」

そう言いながら、彼女は私を冷ややかに一瞥して続けた。

「寮にいたときからそうだったじゃない。いつもクラスの男子と仲良くしていて、わざと誤解させている。どうせ、男に囲まれたいだけでしょ?今さら純情ぶっても無駄だよ」

私は涙を拭い、真っ赤に腫れた目で彼らを見据えながら、声を張り上げた。

「沢人、私がバカだったから、あんたと一緒にいたのよ!今日からもう二度と会わない。あんたが死んでも、私には関係ないわ!」

沢人は一瞬、驚いたように目を見開いた。

だがすぐに鼻で笑い、あざけるように言った。

「前回拗ねた時、3日も経たずに、俺があげたぬいぐるみ抱えて泣きついてきただろ?

またそのパターンか?いいよ、俺は待ってる。

でもな、後で後悔しても知らねえぞ」

そう言うと、彼はソファにふんぞり返り、琴美の肩を抱き寄せた。

その後、親友に何か耳打ちすると、まるで私が振り向くのを確信しているかのように、一度もこちらを見返さなかった。

私はリビングの騒がしい様子をもう見ず、そのまま振り返って外に向かった。

階下に降りると、自分の自転車が道端に傾いて倒れていた。

後輪のタイヤはぺちゃんこで、誰かに刺されたような跡があった。

仕方なく、私は必死に自転車を押しながら、寮へ向かって歩いた。

道は真っ暗で、ときおり酔っ払いがふらつきながら通り過ぎていく。

背筋がぞくりとするたび、私は歩く速度を少しずつ早めた。

ようやく無事に寮へたどり着くと、玄関前の段ボールがまだそのまま置かれていた。

その光景を見た途端、悔しさと怒りが一気に込み上げた。私は箱を蹴飛ばして壁際に押しやり、ベッドに倒れ込むようにして眠った。

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