過去にさよなら第2話
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沢人と出会った当初、私はまだ彼の素性を知らなかった。
彼がボロボロのワンボックスカーでふらふらと私の前に現れたとき、弟は彼を人さらいと勘違いして殴ってしまった。
後になって知ったのは、沢人のベントレーが農業用トラックにぶつけられて修理に出しており、その間の代車としてあの車に乗っていたということだった。だから、彼はその車で私の村に来た。
彼は怪我の療養だと言って、しばらく私の家に居座った。ときどき道端の花を摘んできて、私に差し出したりもした。
ある日、私が畑でトウモロコシをもいでいると、彼が笑いながら近づいてきて言った。
「お前がトウモロコシをもいでる姿、結構いいな。俺と付き合えよ。そうしたら、もうこんな仕事しなくていい」
私は冗談だと思って、適当に返事した。
しかし、彼が怪我を治してベントレーで迎えに来たとき、初めて彼が裕福な家の御曹司だと知った。
瑠々が箸を置きながら聞いた。「それで、どうして急に別れたの?」
「いつも彼、学校まで高級車で迎えに来て、みんなが金持ちに取り入ってるって噂するの……
でも彼はそれを聞いても何も言わなかった。むしろ友達に『あいつの方からくっついてきたんだ』なんて冗談を言ってた」
私は唇を引き結び、視線を落とすと、鼻の奥がまたつんと痛んだ。
「この前、2か月バイトして貯めたお金でワンピースを買ったの。そして、2時間かけてメイクして会いに行ったのに、彼は一瞥もくれなかった。
ホテルで、ワンピースが彼の時計に引っかかって、鬱陶しいって言われて破かれたの。
彼はいつもそう。あとでぬいぐるみとかネックレスを買ってくれて、それで償ったつもりになるの」
私は冷めたスープを見つめながらつぶやいた。
「今回もまた、彼は学校の前で私の名前を呼んだ。周りの人がみんな私を見ていて、そこでふと目が覚めた。8年も経った。もう彼の機嫌を取るのはやめようと思った」
瑠々はため息をつき、それ以上何も聞かなかった。
食事を終えると、彼女は私をカラオケに誘った。
私はマイクを握りしめ、喉が枯れるまで歌い続けた。気づけば、もう涙は出なかった。
個室で、私はビールを2杯飲んだら、少し頭が重くなった。
瑠々は私の様子がおかしいと気づいて、あまり長居せず、10時過ぎには私を寮まで送ってくれた。
廊下の電気はついておらず、私は暗闇の中で手探りでドアを押し開けた。
琴美のベッドに誰もいないのを見て、私の心も一瞬で沈んでいった。
しかし、もう考える余裕もなく、私は上着を脱いでそのまま倒れ込むように眠った。
次の日の昼、スマホの着信音で目が覚めた。
私は着信の表示を見ずに電話に出た。
向こうから聞こえてきたのは沢人の親友らしく、声は慌てていた。
「時音さん!早く沢人の家に来て!昨夜、彼は酒を大量に飲んで、時音さんがいないと生きていけないって言ってた!今は意識がもうろうとしてる!」
私は頭が真っ白になり、心臓が激しく跳ねた。
電話を切ると、私は髪も整えず、服も着替えずに、自転車に乗って、沢人の家へ向かった。
道中、私は慌てて道を間違えてしまい、トラックに轢かれそうになった。運転手が何か怒鳴っていたが、耳には入らなかった。ただ必死にハンドルを握り、前へ前へと進んだ。
ようやく沢人の家の前までたどり着いたとき、私は息も絶え絶えで、ただ少しでも早く着きたいという思いしかなかった。
しかしドアを開けた瞬間、体が凍りついた。
部屋の中では、人々がソファを囲んで笑っている。
沢人は真ん中に座り、琴美が彼の膝の上に乗って、手に持ったブドウを彼の口元へ運んでいる。
彼は当然のように口を開けて、それを食べた。
以前、彼はいつも、ぶどうが嫌いと言って、私にマンゴーを剥かせた。
だが、私が切って持っていくと、結局彼は食べずに私の頭を撫でて、「ほんとにお利口だな」と一言言うだけだった。
沢人は私に気づくと、眉を上げて、親友たちに向かって笑った。
「ほら言っただろ?絶対来るって。俺の勝ちだ」
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