轢殺から始まるやり直し第1話
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前の人生、一ノ瀬安澄(いちのせ あずみ)の幼なじみの安藤雅也(あんどう まさや)は、名家の御曹司を装って外で好き放題遊び回り、俺・葉山恒一(はやま こういち)に正体を暴かれると逆上して、車で俺めがけて突っ込んできた。
瀕死の俺を前に、安澄の姉・一ノ瀬美和(いちのせ みわ)は膝をついて「助けて」と懇願した。けれど安澄は、最後まで心を動かさなかった。
「あり得ないでしょ。雅也は身分の高い人よ。どうしてあんな小物のために、わざわざ手を汚さなきゃいけないの?恋人だからって勘違いしないで。自分の立場をわきまえなさい」
三日三晩、地に伏して願い続けた美和は、やがて雅也に引きずられていき、暴力と屈辱の果てに命を奪われた。
俺の心臓が止まるその瞬間まで、安澄は雅也をかばい続け、人を轢き殺し、姉を踏みにじった現実から目を背けたままだった。
――そして、俺は今世へと戻ってきた。もう二度と、安澄に縋って「会いに来てくれ」なんて願わない。真っ先に電話をかけた相手は、兄さんだった。
「兄さん、俺の名を騙って外で好き放題やってる奴がいる。人を回して、処理してくれ。
それから――一ノ瀬家との縁組の相手を替えたい。安澄じゃない。姉の美和だ」
何年もの間、一ノ瀬家に注ぎ込んできた金も、コネも、情も。結局育ったのは、恩を仇で返す、救いようのない女だった。
さあ、俺が手を引いたあとで、安澄とあの幼なじみが、どこまで偉そうに生きていられるのか――じっくり、見せてもらおう。
* * *
前の人生、一ノ瀬安澄(いちのせ あずみ)の幼なじみの安藤雅也(あんどう まさや)は、名家の御曹司を装って外で好き放題遊び回り、俺・葉山恒一(はやま こういち)に正体を暴かれると逆上して、車で俺めがけて突っ込んできた。
瀕死の俺を前に、安澄の姉・一ノ瀬美和(いちのせ みわ)は膝をついて「助けて」と懇願した。けれど安澄は、最後まで心を動かさなかった。
「あり得ないでしょ。雅也は身分の高い人よ。どうしてあんな小物のために、わざわざ手を汚さなきゃいけないの?恋人だからって勘違いしないで。自分の立場をわきまえなさい」
三日三晩、地に伏して願い続けた美和は、やがて雅也に引きずられていき、暴力と屈辱の果てに命を奪われた。
俺の心臓が止まるその瞬間まで、安澄は雅也をかばい続け、人を轢き殺し、姉を踏みにじった現実から目を背けたままだった。
――そして、俺は今世へと戻ってきた。
……
「恒一!今夜は大勢の前で俺に恥をかかせやがって……後悔ってやつを味わわせてやる!あの時、俺を晒したときは随分イキってたよな。今日が来るって、考えたか?
お前はただの貧乏人だ。安澄だってお前なんか眼中にねぇ。たとえ今日この人里離れた場所で轢き潰して泥みたいにしても、あいつは俺を庇う。分かるか?」
聞き慣れた安藤雅也の声が耳に刺さり、俺は反応する暇もなかった。
眩いヘッドライトがみるみる近づき、唸りを上げたエンジンごと車体が俺の上を押し潰した。全身に激痛が走る。
そこでようやく悟った。俺は――生き返っている。
雅也の車に容赦なくはね飛ばされた、まさにその瞬間へ。
そばに転がる画面の割れたスマホは、いつの間にか恋人の一ノ瀬安澄へ発信中で、受話口からは嫌悪を含んだ冷たい声が流れていた。
「恒一、もう電話してこないで。あなたが私と雅也の関係を妬んで、口実つくって引き裂こうとしてるだけなのは分かってるの。
雅也が、二億円もする車を台無しにするリスクを冒してまで、あなたをひき殺すはずないでしょ。そんな価値、あなたにあると思う?今回は、何を言われても私は信じないわ」
言い切ったあと、彼女は黙り込んだ。俺の返事を待ってるみたいに。
けど俺は、前みたいに言い訳したり助けを求めたりして、雅也の本性を信じさせようとはしなかった。
雅也が走り去るのを見届けると、震える手で通話を切り、残りわずかなバッテリーで別の番号へかけ直した。
つながった瞬間、全身の痛みを噛み殺して言う。「兄さん、助けてくれ」
耳鳴りで向こうの返事はもう聞き取れない。それでも、兄さん・葉山恭介(はやま きょうすけ)が来るのは分かっていた。
俺は兄さんに最も重んじられている弟で、葉山家では将来、兄を支える立場にある。その身は、家によって厳重に守られている。
身分を隠して安澄と恋人ごっこを続ける――それだけでも、家にとっては我慢の限界だった。
その俺に手を出したと知られたら、相手は生き地獄を見る。百倍どころか千倍で返される。
体を引きずって道路の端へ這おうとした、そのとき。雅也が車で引き返してきた。
窓が下り、陰った目が俺をじっと捉えた。「……安澄が言ってた通りだな。まだ生きてたか」
背筋が冷える。もう一度はねられたら、今度こそ終わりだ。
雅也がアクセルを踏み込むのが見えて、俺は絶望に呑まれかけた。
次の瞬間、赤い車が別方向から突っ込み、雅也のマイバッハに横から叩きつけた。
女が飛び降りて俺に駆け寄り、必死に叫ぶ。「恒一!大丈夫!?」
安澄の姉――一ノ瀬美和だった。
前の人生で、俺を助けようと頭を下げ続け、病室の前で雅也に辱められて命を落とした――その光景が蘇り、胸の奥がぐちゃぐちゃになる。申し訳なさと、ありがたさが渦を巻いた。
今度こそ守る。彼女を、二度と傷つけさせない。
なぜここにいるのか考える暇もなく、俺は美和を押しのけた。
「俺はいい、早く行け!」
だが間に合わない。美和は背後から髪をつかまれ、雅也に乱暴に引きずられた。
口を開く前に、雅也の蹴りが飛ぶ。「このクソ女、どこから湧いてきた?
この俺が誰だか分かってんのか。下っ端を躾ける邪魔をして……死にてぇのか!」
腹を蹴られた美和は、悲鳴も上げられず、その場で脂汗をにじませた。
それでも力いっぱい相手の手に噛みつく。雅也が痛みに唸った瞬間、足元の石を拾って容赦なく振り下ろした。
頭から血を流す美和を見て胸が張り裂けそうになり、俺は怒鳴る。「美和は安澄の姉だぞ!そんなことして、安澄が黙ってると思ってんのか!」
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