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身代わり社長夫人が夫も娘も捨てる第2話

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それどころか、彼女の心に深い悪意まで育ててしまったようだ。

自嘲気味に笑い、使用人に支えられながらようやく立ち上がり、病院へ向かった。

消毒液の匂いが鼻を刺す場所で、私は胎児を失ったことと、今後妊娠できない可能性を告げられた。

最初は涙が溢れたが、すぐ安堵の念が湧いてきた。

「よかった。これ以上苦しむ命が増えなくて」

病院からタクシーで戻ると、ちょうど倫太郎と出くわした。

彼を見た瞬間、成人式に冷たい目で傍観していた彼の表情を思い出した。

佐悦が私を苦しめる一部始終を目撃しながら、彼は一言も言わなかった。

私が倒れた後さえも、何事もなかったように書斎に入り、全てを無視していた。

今、彼は新聞をのんびりと読みながら、私の姿に気付いても顔を上げなかった。

「今日の件、佐悦は悪くない。

あの時お前は金目当てで、母の提案に乗り俺に嫁ぎ、佐悦の面倒を見ると約束した。

今彼女のわがままな性格も、全てお前の教育の結果だろう」

淡々とした口調で、佐悦が私を殺しかけたことを、あたかも些細なことのように語っていた。

それどころか、全て私のせいにした。

私は俯いて浮かぶ感情を隠し、無言でいた。

長い沈黙の末、珍しく彼はまっすぐ私を見た。

「体調は良くなったか?」

「子供が流産しました」

倫太郎は私を見てふと立ち上がり、ネクタイを緩めながら私のほうへ歩いてきた。

「いなくなったほうが、かえって都合がいい」

その言葉の真意を理解し、私は愕然として彼を見上げた。

あの時、彼の母親が結婚を提案したが、最終決断したのは彼本人だった。

全ては私が可憐と瓜二つの顔をしていたからだ。

彼がこの顔を狂おしいほど愛していることは知っていた。

私への情など微塵もないのに、毎晩私の部屋に通っていた。

それどころか、避妊さえ拒んだ。

そうして命を宿った。

孤児だった私はお腹の子を捨てるに忍ばなく、今日まで育ててきた。

だがまさか、流産した当日に彼が性行為を求めてくるとは!

佐悦があれほど人を軽蔑する態度は、まさに彼譲りだと悟った。

私は眉をひそめながら嫌悪感を我慢し、近づいてくる男を押しのけた。

驚きと怒りを浮かべる彼に向かって、静かに宣言した。

「倫太郎のお母さんとの約束、佐悦が成人までの世話役はもう終えました。

明日、この家を出ます」

十数年も二人に尽くしてきたが、倫太郎は一度も結婚を口にしなかった。

おそらく彼らにとって、私はいつでも捨てられる家政婦でしかないだろう。

だがそれがいい。縁を切るのに手間がかからなくて。

男の表情が一瞬で険しくなった。

「言音(ことね)、まだ佐悦のことで怒ってるのか?」

俯いた私を見て、彼は勝手に解釈し鼻で笑った。

「いつの間に小心者になったか?

佐悦はまだ子供だ。そんなことで怒るのか?

それに、お前親もいないだろう。小池家を出たら、どこに行くつもりだ?」

私を完全にコントロールできていると思い込んで、彼の言葉には施しと軽蔑が満ちていた。

私は首からネックレスを外し、テーブルに置いた。

「小池家を出たら、孤児院に戻ります」

倫太郎に嫁いだ日から、彼は私になんの情もないことは分かっていた。

彼と可憐は名門の幼馴染で、家柄も容姿も釣り合い、深い絆で結ばれていた。

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