身代わり彼氏を譲ったのに、私が悪いの?第2話
この話は約2114字。当サイトで読める2話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第3話からは公式アプリで読めます。
未緒とは幼い頃からの付き合いで、かつては一番の親友だった。
どちらか一人の話をすれば、必ずもう一人の名前も出るほどだった。お互いのためなら、命さえ惜しくないと思っていた。
それほど仲のよかった私たちが、最後には一人の男をめぐって絶交した。
奏太と未緒が同じベッドにいるところを目にした日は、人生で一番つらい日だった。奏太を問い詰めることはせず、未緒をベッドから乱暴に引きずり下ろし、理由を聞いた。
未緒は悪びれもせず、服を着ながら答えた。
「別に理由なんてないよ。私も奏太が好きだったから、寝ただけ」
未緒と顔を合わせたのは、それが最後だった。それから8年間、一度も連絡を取らなかった。
初めの頃は、両親も時々未緒のことを聞いてきた。
「未緒ちゃん、最近ちっとも遊びに来ないわね」
友人との集まりでも聞かれた。
「最近、澄乃と未緒が一緒にいるのを見かけないね。前はいつも二人でくっついてたのに」
私は力なく笑った。やがて、誰も尋ねなくなった。
もう二度と会うことはないと思っていた。ところが、未緒は彰人の元カノだった。
「どうして帰ってきたの?彰人とよりを戻すつもり?」
未緒は首を横に振った。
「彰人のためにわざわざ帰国するほど、あの人に惹かれてないよ。澄乃のために帰ってきたの」
「私のため?」
未緒はタバコを灰皿に押しつけて消した。ソファに肘をついてこちらを向き、私の髪をひと房すくい上げた。
「澄乃が彰人と付き合ってるって聞いて、すぐに飛行機のチケットを取って帰ってきたの。
私たちって、本当に仲のいい友達だよね。男の趣味までいつも同じなんだから。
前に奏太を奪ったときは、澄乃から8年も連絡が来なかった。今度は彰人を奪ったら、何年連絡をくれなくなるのかな?」
目を細め、髪に触れている未緒の手を押さえた。
「どうしてこんなことするの?私が未緒に何をしたっていうの?」
未緒は笑った。その目に、私には読み取れない感情が一瞬浮かんだ。
「澄乃が私に悪いことなんてするわけないでしょ。ずっと私の親友だもの」
「……」
未緒が何を考えているのか、本当に分からない。ただ、はっきり告げた。
「彰人から離れて。今度は、ただじゃ済まさないから」
未緒は答えず、部屋の中を見回した。家具がどこで作られたものか、各部屋がどう配置されているかまで、一つも間違えずに言い当てた。
驚いて未緒を見た。
「どうして知ってるの?」
「彰人と付き合ってた頃、二人でこの家の内装を考えたの。家具も全部、一緒に選んだ」
一瞬、息が止まった。この家の内装を決めたのは、私が彰人と付き合い始めてからだ。私も一緒に家具や内装を決めたいと伝えたが、彰人はすでに業者へ任せてあるから、今さら変えるのは面倒だと言った。
酒を飲まない彰人が、なぜあれほど大きなワインラックを置いたのか、不思議に思ったこともある。彰人は、同じ間取りの部屋はどこも内装が同じだと言っていた。
今なら分かる。未緒が酒を好きだからだ。
心が乱れ、無意識に指を握り込んだ。その拍子にタバコの火が手のひらに触れ、鋭い痛みに全身がびくりと震えた。
未緒は私の手からタバコを取り、火傷した手のひらにそっと息を吹きかけながら、ぞっとするような言葉を口にした。
「彰人は毎日ここで、誰のことを考えてるんだろうね?」
未緒の挑発だと分かっていても、考えずにはいられなかった。
隅々まで二人の思い出が染みついたこの家で、彰人は本当に私だけを見ていられるのだろうか。
そのとき、ドアが音もなくわずかに開いた。
未緒の目が一瞬鋭くなり、口元に笑みが浮かんだ。
「あのとき、澄乃はあんなにあっさり奏太から離れたでしょう。奏太のことなんて、本当にどうでもいいんだと思ってた。
それなのに、次に選んだのは彰人だった。二人、本当によく似てるよね。私も初めて会ったとき、見間違えそうになったくらいだよ。
どうせ彰人は奏太の代わりなんでしょう?だったら、私に譲ってよ」
彰人と奏太が似ていると最初に気づいたのは、友人だった。
私は、終わった恋をいつまでも引きずるタイプではない。一度終わりにすると決めたら、未練は残さない。
彰人と付き合ったのも、奏太に似ていたからではない。ただ、人の好みはそう簡単に変わらないらしい。
友人に言われて、初めてそのことに気づいた。彰人と長く過ごすうちに、外見だけでなく、性格まで似ていると分かった。
二人とも情に弱く、頼まれると断れない。奏太は未緒を拒めず、最後には一線を越えた。
彰人には、人付き合いのうえで譲れない考えがある。今はそばで見張っていられても、一生そうしてはいられない。
浮気する気がある男は、いつか必ず隙を見つける。しかも未緒は、狙った男を逃さない。
急に、何もかもがどうでもよくなった。
失うのが怖いなら、いっそ最初からいらない。どうせ、初めてではない。
未緒を見た。
「未緒の言うとおり。彰人は奏太の代わりにすぎない。未緒は私の親友でしょう。未緒が欲しいものなら、何だって譲ってあげる。欲しいなら、持っていけばいい」
未緒は一瞬固まり、それまで浮かべていたからかいの笑みを消すと、慌てたように顔を背けた。
ドアの向こうにいた誰かが、乱暴に閉めるのをこらえ、音を立てずにドアを閉めた。
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