身代わりは卒業。甘やかした彼を捨て叔父の妻へ第3話
この話は約1435字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
週末、智也の同窓会があった。
本当は一緒に来たくなかった彩花だったが、智也が何年も想い続けている女が気になってしまい、結局着いてきたのだった。
二人が着いたとき、カラオケボックスの中はもうすごく盛り上がっていた。
智也の親友、柴田翔(しばた しょう)が彼の首に腕を回す。「智也!遅いぞ!綾香が帰ってきたんだろ?お前の長年の片思いもやっと報われるってもんだな……」
智也は少し慌てて、絡んでくる翔の手を振り払った。「変なこと言うなよ」
「変なことって何だよ?お前が綾香のこと好きだったのは、クラスの奴らみんなが知ってることだろ?」
そう話していた翔の視界の隅に、智也の後ろにずっと立っていた彩花の姿が入った。
翔は笑みを浮かべ聞いた。「こちらは……」
智也は少し気まずそうに紹介する。「俺の彼女だ」
翔は呆気に取られた。「彼女?お前、彼女できたのか?なんで俺が知らないんだよ?いや待てよ。お前ずっと綾香のこと待ってたんじゃなかったのか?なんで急に彼女なんて……」
智也の顔色が少し暗くなる。
ちょうどそのとき、人混みの中から、ひときわ目を引くきれいな女性が歩いてきた。「誰に彼女ができたって?」
翔は慌てて言った。「綾香、ちょうどいいところに来た!智也が彼女できたって言うんだけどさ、俺どうも信じられないんだよな」
智也が何年も心に秘めていたその人が、ついに目の前に現れた。
彩花は今までツイッターでしか彼女の写真を見たことがなかったが、これでようやく、本人に会うことができた。
本当にきれいで、ハッとするような、強烈な印象を与える美人だった。
これなら、智也が何年も彼女を忘れられないのも無理はない。
綾香は彩花をじろじろと見つめた。その目には、疑いと、それ以上の敵意がこもっている。「智也。この人が、本当にあなたの彼女なの?」
智也は口を開きかけたが、言葉を詰まらせたのか、ゴクリと喉を鳴らした。「この人は……」
彩花はひきつった笑みを浮かべて言った。「私は、忘れ物を探しに来ただけなんです。さっきまでこの部屋にいたんですけど、忘れちゃったみたいで……」
智也が驚いたように彩花を見た。
彩花は、智也が見ていることに気づいていたが、視線を返さなかった。
ただうつむいて、自分のつま先を見つめる。
翔が彩花に聞いた。「何を探してるんですか?」
彩花はとっさに答える。「……ピアスです」
すると、翔が言った。「俺たちが来る前に、店員さんが掃除してましたけど、ピアスなんてあったかなあ?店員さんに聞いてみたらどうですか?」
彩花は頷いた。「はい、そうしてみます。お騒がせしました」
そう言うとくるりと背を向け、彩花は早足で部屋を出て行った。
背後から、翔が笑いながら智也をからかう声が聞こえてきた。「智也。綾香にやきもち焼かせようとして、あの子を利用したんだろ?忘れ物探しに来ただけなのに、かわいそうじゃないか」
彼はそう言うと、今度は綾香に向かって言った。「綾香。こいつをここまで追い詰めて。もういい加減、智也と付き合ってやれよ」
綾香の声からはさっきまでの警戒心が消え、また軽やかな調子に戻っていた。「私と智也は親友なの。だから、そういうのはやめてよね」
親友?
彩花は思わず足を止め、振り返った。
視線の先では、智也が腑抜けた顔で綾香を見つめていたのだが、綾香の口から「親友」という言葉が出た瞬間、智也の瞳からはさっと光が消えたのだった。
智也は力なく笑うと、綾香に合わせた。「そうだよ。勘違いするな。俺と綾香は、ただの友達なんだから」
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