誕生日ケーキが届いた日、私は離婚を決めた第1話
この話は約2189字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
16歳の誕生日。私は自分へのご褒美に、一番おいしいケーキを買ったんだ。
でもその日、ケーキに手をつける前に、喧嘩ばかりしていた両親は私の目の前で離婚届に判を押した。
だから結婚した日、私は夫の松田宏樹(まつだ ひろき)に、「もし離婚したくなったら、誕生日ケーキを贈ってくれればわかるからね」と言った。
宏樹は私を抱きしめて、「安心して。もう、うちで『誕生日』なんて言葉は二度と出てこないから」と言ってくれた。
7年後、宏樹の誕生日に、若い新入社員が内緒で誕生パーティーを企画した。しかし、宏樹は、彼女の顔をひっぱたいて、会社から追い出してしまった。
あの日、私はこの人を選んで本当に良かったって、心の底から思ったんだ。
そして3ヶ月後、私の誕生日に、追い出されたはずの若い新入社員が、いつの間にか夫の秘書になっているのを、私はその時初めて気づいた。
彼女は、私のところにわざわざ特別な誕生日ケーキを届けてきた。
私が電話で宏樹に問いただすと、彼はただ冷たくこう言った。「遥も良かれと思ってやったことなんだ。水を差すようなことはするなよ」
私は一瞬、言葉を失って、そのまま電話を切った。
やっぱり、両親は間違っていなかったんだ。誕生日ケーキっていうのは、離婚届と一緒に味わうものなんだって、私はやっとわかった。
* * *
16歳の誕生日。私は自分へのご褒美に、一番おいしいケーキを買ったんだ。
でもその日、ケーキに手をつける前に、喧嘩ばかりしていた両親は私の目の前で離婚届に判を押した。
だから結婚した日、私は夫の松田宏樹(まつだ ひろき)に、「もし離婚したくなったら、誕生日ケーキを贈ってくれればわかるからね」と言った。
宏樹は私を抱きしめて、「安心して。もう、うちで『誕生日』なんて言葉は二度と出てこないから」と言ってくれた。
7年後、宏樹の誕生日に、若い新入社員が内緒で誕生パーティーを企画した。しかし、宏樹は、彼女の顔をひっぱたいて、会社から追い出してしまった。
あの日、私はこの人を選んで本当に良かったって、心の底から思ったんだ。
そして3ヶ月後、私の誕生日に、追い出されたはずの若い新入社員が、いつの間にか夫の秘書になっているのを、私はその時初めて気づいた。
彼女は、私のところにわざわざ特別な誕生日ケーキを届けてきた。
私が電話で宏樹に問いただすと、彼はただ冷たくこう言った。「遥も良かれと思ってやったことなんだ。水を差すようなことはするなよ」
私は一瞬、言葉を失って、そのまま電話を切った。
やっぱり、両親は間違っていなかったんだ。誕生日ケーキっていうのは、離婚届と一緒に味わうものなんだって、私はやっとわかった。
……
遥は誕生日ケーキと妊娠検査の結果をテーブルに置くと、勝ち誇ったように帰っていった。
検査結果に書かれた妊娠週数を見て、私は黙り込んでしまった。
3ヶ月前、夫の宏樹は会社の新薬開発のため、私に仕事を優先して中絶してくれと頼んだ。
私は、その言葉に従った。
まさか3ヶ月前、彼はすでに別の女との間に子供を作っていた。
妊娠12週。
私が新薬開発のために会社で夜遅くまで働いている間、宏樹は遥を家に連れ込んでいたんだ。
ソファ、トイレ、ベランダ……そして、私たちの結婚式の写真の前でさえ、二人は体を重ねていた。
かつては温かい場所だったはずのこの家が、今は吐き気がするほどおぞましく感じられた。
ちょうどその時、玄関の電気がついて、お酒の匂いをまとった宏樹がドアを開けて入ってきた。
ダイニングテーブルの上のケーキを見ると、彼は少し眉をひそめた。でもすぐに、私の後ろから抱きしめてきた。
彼はネックレスを取り出して、私の目の前に差し出した。声はいつもみたいに優しいのに、体からは遥がつけている香水の匂いがした。
「ティファニーの新作だよ。気に入った?
もう12時は過ぎたから。これは誕生日プレゼントじゃないよ」
顔を上げてネックレスを見た私は、思わず固まってしまった。
私はブランド品には詳しくない。でも、このネックレスには見覚えがあった。
今日の昼間、遥がこれとそっくりなネックレスをつけて、私の前で自慢げにしていたから。
同じデザインのものを二つ買ったの?それとも、これは彼女がつけていたものなの?
どっちでも、もうどうでもいいか。
胸にこみ上げてくる暗い感情をなんとか抑えつけて、私は静かに宏樹の方を振り向いた。
「ちょっと、話があるの」
宏樹は、私がまだ怒っているんだと思ったらしい。彼の目には、かすかに不満の色が浮かんだ。
「遥はただ、君にサプライズをしたかっただけなんだ。君が誕生日を祝わないなんて知らなかったんだ。それに、もうちゃんと叱っておいただろ?
優香、もういい加減にしてくれ。俺は疲れてるんだ」
まるで私が、訳もなく騒いでいるだけみたいに、彼は眉間を揉んで、心底うんざりした顔を見せた。
私は何か言い返そうとした時、宏樹のスマホが鳴った。
彼はちらっと画面を見ただけで、待ちきれないといった様子でスマホを手に取った。そして、嬉しそうに返信しながら寝室に入っていった。
彼の後ろ姿を見ながら、私は乾いた笑いを漏らした。
胸の奥が締め付けられるようだった。
好きになって10年、結婚して7年。私たちはゼロからすべてを築き上げた。でも、毎晩私に甘い言葉をささやいてくれた、あの頃の宏樹はもういない。
今の彼の時間は、もう私のためには使われないんだ。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)