和紙文誓いは灰燼に還る · 第2話設定≡

誓いは灰燼に還る第2話

この話は約2567字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

美緒は消毒液の強烈な刺激臭で目を覚ました。

ぼやけた視界の中には、颯弥の充血した目とやつれた顔があった。

彼はベッドのそばで彼女を見守っており、物音を聞くとすぐに彼女の手を固く握り、声には恐怖の色が浮かんでいた。

「美緒!目が覚めたのか!本当に心配した……母さんが……あまりに衝動的で、ただ子供を不憫に思って、一時の気の迷いで……君に少し灸を据えようと……すまない、すまない!」

彼は身をかがめ、彼女の額にキスをしようとしたが、彼女は顔を背けて避けた。

「灸を据える?死ぬところだったよ……」彼女は彼を見つめ、その目は虚ろで、涙が静かに滑り落ち、青白い頬に二筋の痛々しい跡を残した。

颯弥は彼女の涙に心を痛め、必死に保証した。

「これはただの事故だ!保証する!二度とない!君が元気になったら、オークションに連れて行ってやる。君が気に入ったものは何でも落札して、埋め合わせをするから。いいだろう?君が欲しいものは、何でも買ってやる!」

埋め合わせ?

窒息死しかけた苦痛と絶望が、彼の目には、金で簡単に消せる、ただの「灸を据える」ことだったのか?

美緒は目を閉じ、心は死んだように冷え切っていた。

甲高いスマートフォンの着信音が突然鳴り響いた。

「颯弥さん!弘人が目を覚ましたわ!パパに会いたいって泣いてるの、ずっとパパって叫んでるのよ、早く来て!」清香の泣き声がスマートフォンから聞こえ、子供の胸が張り裂けるような、息も絶え絶えの泣き声が混じっていた。

颯弥の顔色が一瞬にして変わり、彼は美緒を見つめ、その目には慎重な探りと焦りが浮かんでいた。

「美緒、弘人が目を覚ましたんだ。ひどく泣いているから、先に見に行かなければならない。すぐに戻って君のそばにいるから……まずはゆっくり休んで、俺が戻るのを待っていてくれ」

美緒は目を閉じたまま答えず、ただ彼の急ぎ足が次第に遠ざかり、二度と戻ってこないのを聞いていた。

退院の日になって、彼女は再び颯弥に会った。

「美緒、行こう。オークションで気晴らしでもしよう」

颯弥は機嫌を取るような顔で彼女を見、彼女は黙ったまま車に乗り込んだ。

道中、颯弥は必死に話のきっかけを作り、車内の沈黙を破ろうとしたが、美緒の返事はほとんどなかった。

車がオークション会場の入り口に着くと、清香が弘人を抱いて待っているのが見えた。

その顔には期待に満ちた笑みが浮かんでいた。

颯弥は一瞬戸惑い、すぐに気まずそうに説明した。

「弘人が家でひどく駄々をこねて、どうしてもついて来たいって……子供だからね、好奇心旺盛なんだ」

オークションの会場で、美緒は颯弥の隣に座っていたが、彼の目線は終始、反対側にいる弘人と清香に注がれていた。

彼は優しい声で根気強く弘人にオークションの流れを説明し、その顔には愛情のこもった笑みが浮かんでいた。

時折、隣の清香と小声で何かを囁いていた。

三人の間には温かく心地よい雰囲気が流れ、美緒は完全に疎外されていた。

このような優しさと気配りは、かつては美緒だけのものだった。

しかし今、彼女が颯弥のすぐそばに座っていても、颯弥は彼女を完全に無視し、まるで彼女がどうでもいい空気であるかのようだった。

オークションの司会者がルビーのネックレスを紹介した時、清香の目に隠しようもない驚きと渇望が迸った。

弘人はすぐに颯弥の腕を揺さぶり、舌足らずながらも心を刺すような言葉で言った。「パパ!ママ、このキラキラしたのがすごく好きみたい!ママに買ってあげてよ、ねえ?」

颯弥はその言葉を聞き、愛情を込めて彼の頭を撫で、優しい声で言った。

「もちろんだとも」

そして、ためらうことなく天井知らずの価格で落札した。

オークションが終わり、颯弥はようやく美緒のことを思い出したかのように、美緒を見て、申し訳なさそうに言った。

「美緒、すまない。さっきは弘人をあやすのに夢中で。何か欲しいものはあるか?」

美緒はゆっくりと顔を上げ、静かに彼を見つめた。その目の奥の最後の光も、完全に消え去っていた。

彼女が今唯一欲しいもの。それは、彼から離れる、この息が詰まるような場所から離れることだけだった。

彼女は無力な笑みを浮かべ、ため息のような軽い声で言った。

「あるわ、家に帰ってから……教えてあげる」

颯弥は彼女がついに埋め合わせを受け入れる気になったのだと思い、眉間の緊張が解け、何度も約束した。

「美緒、安心してくれ。君が欲しいものは何でもいい!たとえ空の星が欲しいと言っても、君のために取ってくる!」

家に帰り、美緒はまっすぐ書斎に入り、引き出しを開け、三年前に封印された離婚届を取り出した。

当時、清香が颯弥の子供を身ごもったと知った時、彼女は心を痛め、絶望して去ろうとしたが、結局は忍びなく、彼との結婚にもう一度チャンスを与えることを選んだ。

しかしなぜか、この離婚届を破棄せず、ただ隠していた。

おそらく潜在意識の中で、彼女はこの結婚がいずれ終わりを迎えることを予見していたのだろう。

彼女は離婚届を颯弥の前に差し出した。

颯弥は何気なく尋ねた。

「欲しいものは何だ?」

美緒は答えなかった。

颯弥が書類を見ようとした時、スマートフォンの着信音が突然鳴った。

彼はすぐに電話に出、その口調には自分でも気づかないほどの優しさと気遣いが込められている。「清香?どうした?」

「颯弥さん、体外受精の準備ができたわ。早く来て!」清香の声がスマートフォンから聞こえた。

颯弥は無意識に美緒を一瞥した。

美緒は無表情で、直接離婚届の最後の署名欄を開いた。

「美緒、俺は……」颯弥は何か説明しようとした。

「彼女がまだ待っているわ」

美緒の声は平静で、何の感情も読み取れなかった。

颯弥はもはやためらわず、ペンを取り、躊躇なく名前を書き、身を翻して足早に去っていった。

美緒は彼が待ちきれない様子で消えていく背中を見つめ、口元に極めて皮肉な笑みが浮かんだが、涙は流れ落ち、離婚届の上に落ちた。

白石颯弥、あなたが何に署名したか、わかっているの?

おそらく、それが何であるかは、全く重要ではないのだろう。

重要なのは、署名した後、あなたは桜井清香の元へ駆けつけられるということだ。

彼女は頭を下げ、躍動感のある「白石颯弥」というサインを見た。

その筆跡からでさえ、彼の心の焦りが読み取れた。

彼女は自嘲気味に笑い、隣に自分の名前を書き入れた。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)