記憶を失った日、私は真の愛を間違えた第3話
この話は約1307字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私の返事を聞いて、優斗はその場で固まった。
やがて顔を上げ、不思議そうに私を見つめる。
「今、なんて言った?」
「あなたの言う通りよ。あなたには彼女がいるし、私にも婚約者がいるから、こういうゲームを一緒にやるのは、やっぱりよくないよね」
私はわざと残念そうにため息をついた。
「しょうがないね。チャレンジ達成できないから、代わりにお酒を飲むことにするね」
グラスを手に取ったその瞬間、優斗が反射的に手を伸ばし、それを止めた。
彼の顔色は、見るからに悪い。
「いや、別に。協力くらいなら」
歯を食いしばるようにして、無理やり言葉を絞り出す。
「もういいよ」
今にも噛みついてきそうな視線を受けながら、私は静かに首を横に振った。
「そんなことしたら、伊東さんが怒っちゃうもん」
そう言って振り返ると、後ろで同じく驚いた表情をしている俊輔を見た。
「前は、こうやって呼んでたよね?それとも、俊輔さん?あっ、俊輔か?」
わざと、優斗の地雷を踏み抜くように、何度も繰り返した。
案の定、次の瞬間、彼は耐えきれなくなったように俊輔の手を掴み、そのまま外へ引っ張っていく。
私は心配するふりをして、その後を追った。
廊下の突き当たりで、優斗の怒りに満ちた声が響く。
「俊輔、お前、梨華に何をしたんだ」
「いや、何もしてないけど?」
優斗の激昂とは対照的に、俊輔はどこか無邪気なまま、表情も口調も変わらなかった。
「前もそうだっただろ。あの子はずっと、そうやってお前と付き合ってきたんじゃないの。何をするにもお前の顔色を窺って、怒らせないようにしてた。今は相手が変わっただけで、やり方は何も変わってないよ」
俊輔の言葉は、優斗の胸の奥にある本音を、容赦なく突きつけた。
優斗は歯を食いしばり、何度も深く息を吐いた。
それでも、ついに何も言い返せなかった。
「とにかく、言っとくよ。あいつに近づくな。お前には演技を頼んだだけだ。本気になるなよ」
「分かってるよ」
俊輔は相変わらず、淡く微笑んでいた。
「知ってるだろ?俺、あの子のこと嫌いなんだ」
二人の会話を遮ることなく、私は静かに背を向け、そのまま部屋へと戻った。
腕を組んで戻ってきた二人は、妙に親しげな様子だった。
個室の中は、相変わらず賑やかなままだ。
私は、時折こちらに向けられるあの挑発的な視線を意識的に避けながら、さりげなくその場の空気に溶け込んでいた。
その態度が、かえって優斗の視線を強く引き寄せることになる。
きっと彼にとって、以前の私は退屈で無口な存在だったのだろう。
だからこそ、今夜の私の変化に、少し驚いているのかもしれない。
夜もすっかり更け、皆ばらばらに解散した。
俊輔は酔った私を支えながら、家へと連れ帰る。
柔らかなベッドに身を沈めたその瞬間、私は彼の手首を掴んだ。
「俊輔」
酔いに滲んだ声はやけに甘く響き、俊輔は一瞬戸惑ったように見えた。
彼は唇を噛み、その場に立ち尽くす。
アルコールのせいで、頬はほんのりと赤く染まっていた。
表面上は酔って意識がぼんやりしているふりをしながらも、私の意識ははっきりしている。
――どうしても、確かめたいことがあったから。
そっと腕を引くと、俊輔はそのままバランスを崩し、私の上へと倒れ込んできた。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R53895- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。