和紙文裏切りの結婚記念日〜私は子を堕ろし、夫を捨てた〜 · 第1話設定≡

裏切りの結婚記念日〜私は子を堕ろし、夫を捨てた〜第1話

この話は約1926字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

8回目の結婚記念日の朝、私、神谷莉子(かみや りこ)のもとに、神経を逆なでするメッセージが届いた。

夫の神谷慧(かみや けい)が支援している女子大生、結城朱音(ゆうき あかね)からのものだった。

写真の中の彼女は、私の結婚指輪をはめ、陽性反応の出た妊娠検査薬を手にしていた。

【莉子さん、私たち、遊びじゃないんです。慧さんと別れてもらえませんか】

【子どもも産めないのに、慧さんのそばに居続けるつもりですか?】

私は画面をそのままスクリーンショットに収め、返信する代わりに慧へ送った。ほどなくして慧から電話がかかってきた。出るなり、頭ごなしに怒鳴りつけてきた。

「朱音はちょっとふざけただけだろ!そんなことでいちいち騒ぐな。大人げないにもほどがある。お前のそういうところ、ほんと気持ち悪いんだよ!」

電話の向こうからは、朱音のすすり泣く声も聞こえてきた。私は何も言わず、そのまま電話を切った。

慧をブロックする前に、最後に一言だけ送った。

【じゃあ、離婚しよう。これでもう、気持ち悪い私と一緒にいなくて済むでしょ】

* * *

8回目の結婚記念日の朝、私、神谷莉子(かみや りこ)のもとに、神経を逆なでするメッセージが届いた。

夫の神谷慧(かみや けい)が支援している女子大生、結城朱音(ゆうき あかね)からのものだった。

写真の中の彼女は、私の結婚指輪をはめ、陽性反応の出た妊娠検査薬を手にしていた。

【莉子さん、私たち、遊びじゃないんです。慧さんと別れてもらえませんか】

【子どもも産めないのに、慧さんのそばに居続けるつもりですか?】

私は画面をそのままスクリーンショットに収め、返信する代わりに慧へ送った。ほどなくして慧から電話がかかってきた。出るなり、頭ごなしに怒鳴りつけてきた。

「朱音はちょっとふざけただけだろ!そんなことでいちいち騒ぐな。大人げないにもほどがある。お前のそういうところ、ほんと気持ち悪いんだよ!」

電話の向こうからは、朱音のすすり泣く声も聞こえてきた。私は何も言わず、そのまま電話を切った。

慧をブロックする前に、最後に一言だけ送った。

【じゃあ、離婚しよう。これでもう、気持ち悪い私と一緒にいなくて済むでしょ】

……

トイレでさんざん吐いたあと、妊娠検査薬に出た陽性反応を見つめ、ようやく現実を受け入れた。ついさっきまで「子どもも産めないくせに」と罵られていた私が、妊娠している。

「……ふっ」

笑ったつもりだったのに、涙が頬を伝って落ちた。

「どうして今なの……。パパはもう、ほかの人が好きなのに」

私はその場にへたり込んだ。

ようやくトイレを出ると、リビングのソファには慧が険しい顔で座っていた。かなり前から待っていたらしい。私が口を開くより先に、スマホの画面を目の前に突きつけてきた。

「莉子、いい年して、あんな若い子相手に何やってるんだ。みっともないと思わないのか。今すぐ朱音に謝れ」

私の額にはまだ冷や汗がにじんでいた。それでも、8年連れ添った夫は、私の様子など目に入っていないようだった。朱音を庇うことしか頭にないらしい。

画面に目を落とすと、案の定、私を挑発したメッセージはすべて消されていた。残っているのは、朱音がしおらしく謝り、許しを乞う言葉だけだった。

「慧、8年も一緒にいたんだから、私が理由もなくあんなことを言うと思う?先にあんなメッセージを送ってきたのは朱音よ。私は言い返しただけ。知らないふりしてるの?それとも、本当に何も知らないの?」

慧の顔つきがわずかに変わった。ようやく私の顔色に気づいたのか、少しだけ語気を弱めた。

「朱音は冗談だって言ってるだろ。お前、最近、何でも悪く取りすぎなんだよ。すぐ人を疑うし、いつもピリピリしてる。少しは朱音を見習えよ。あの子は素直で可愛げがある。お前、なんでそうやって人にきつく当たるんだよ」

目の前にいるのは、10年以上も愛してきた人のはずなのに、まるで知らない人のように思えた。

「あんな写真まで送ってきて、冗談で済むと思ってるの?私たちの間に割り込んできたのは朱音のほうでしょう。それなのに、私が謝れって?」

あまりの言い分に、笑うしかなかった。けれど、その途端、下腹部がずきりと痛み、思わず手を当てた。慧はその仕草を見るなり、冷たく吐き捨てた。

「朱音の言う通りだな。お前、ほんと自分勝手だよ。子どもも産めないくせに、よくそこまで偉そうにできるな。こんな結婚、8年も続けて何になったんだよ」

私はもうこの子を産まないと決めていた。それでも、8年連れ添った夫の口から実際にそんな言葉を聞かされると、さすがに堪えた。

せめて最後くらいは、惨めな姿を見せたくなかった。涙をこらえ、はっきりと言った。

「そこまで言うなら、もういい。離婚しよう」

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