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英雄の恩返し第1話

この話は約1749字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

戦場で、兄は自らの命と引き換えに、仲間の命を救った。

家族全員が英雄の名誉を背負って帰還したその男に嫁ぐよう、私を説得した。

「あの方は立派な人だ。彼に嫁げば、お前の人生は安泰だ」

親友までもが目を赤くして私に言う。

「お兄さんのためにも、あなたが幸せになるのが一番の供養だよ」

そして、生還したその「英雄」もまた、私の前で片膝をつき、一生守り抜くと誓った。

だが私は衆人環視の中で、街一番の悪名を轟かせる放蕩息子の腕を組んだのだ。

「英雄にはその身分にふさわしい人がお似合いよ。私みたいな疫病神無理よ。やっぱり、クズはクズ同士、掃き溜めで暮らすのが一番お似合いだと思わない?」

* * *

戦場で、兄は自らの命と引き換えに、仲間の命を救った。

家族全員が英雄の名誉を背負って帰還したその男に嫁ぐよう、私を説得した。

「あの方は立派な人だ。彼に嫁げば、お前の人生は安泰だ」

親友までもが目を赤くして私に言う。

「お兄さんのためにも、あなたが幸せになるのが一番の供養だよ」

そして、生還したその「英雄」もまた、私の前で片膝をつき、一生守り抜くと誓った。

だが私は衆人環視の中で、街一番の悪名を轟かせる放蕩息子の腕を組んだのだ。

「英雄にはその身分にふさわしい人がお似合いよ。私みたいな疫病神無理よ。やっぱり、クズはクズ同士、掃き溜めで暮らすのが一番お似合いだと思わない?」

……

兄の告別式でのことだ。両親は目を赤く腫らし、私の手を痛いほど強く握りしめていた。

「悦子、蓮君は誠実な人だ。

お兄ちゃんの最期の願いなんだよ、二人が一緒になることが」

母の声は涙で震え、立っているのがやっとという有様だった。

「お兄ちゃんの代わりに、彼があなたを大切にしてくれる。この家には柱が必要なのよ」

私は泣かなかった。

顔にはほんの少しの悲しみさえ浮かべなかった。ただ静かに、遺影の中の兄を見つめていた。写真の中の彼は、眩しいほどの笑顔を見せている。

黒崎蓮(くろさき れん)は、皺ひとつない制服に身を包み、胸にはいくつもの勲章を輝かせていた。その輝きがまるで焼け付く鉄塊のように、見る者の目を灼く。

彼は私の前に歩み寄ると、大木のように背筋を伸ばし、しかしひどく嗄れた声で言った。

「悦子さん。お兄さんとの約束を果たす。生涯をかけて、あなたを守るよ」

彼の瞳には深い罪悪感と揺るぎない決意が宿っていた。それはまるで巨大な山のように重く、私を圧迫する。その場にいる全員が私たちを見ていた。私が頷くのを待っている。この「英雄」の胸に飛び込み、悲壮かつ美しい物語を完結させるのを期待しているのだ。

だが、私は彼を避けた。会場の隅に佇む、派手なアロハシャツを着た男の方へまっすぐに歩き出した。この厳粛な場で、彼はあまりにも異質な存在だった。

——桐生翔太(きりゅう しょうた)。街中で噂される放蕩息子であり、生前の兄が最も軽蔑していたタイプの人だ。

私は親戚一同と蓮の仲間たちが見守る前で、親しげに翔太の腕に絡みついた。真っ赤な唇を歪め、目を刺すような笑みを浮かべる。呆気にとられる人々に向かって、私ははっきりと宣言した。

「紹介するわ。私の彼氏、桐生翔太よ。

蓮は立派な英雄だったけど、私には釣り合わないわ。

私はただのふしだらな女だから、こういう男がお似合いなの」

会場が凍りついた。翔太は反応が早かった。彼は軽薄な口笛を吹くと、私の腰を抱き寄せ、腕に力を込めた。そして顔面蒼白になった蓮に向かって、片眉を上げてみせた。

「英雄さん、悪いな。

この美人さん、俺がいただいた」

ドッ、と会場が沸騰したようにざわめき出した。

父は怒りで全身を震わせ、私を指差したが、言葉にならなかった。人生の風雪に耐えてきたその顔は、怒気でどす黒く染まっている。

蓮の顔色は瞬時に血の気を失い、青ざめて見えた。その大柄な体がぐらりと揺れ、倒れそうになる。隣にいた同僚が慌てて彼を支えた。

私は見た。彼が激しく息をするたびに、胸の輝かしい勲章が上下に揺れるのを。彼は私を見ていた。その目には完全なる信じられぬという色が浮かんでいた。まるで裏切られたかのような表情だった。

私は彼の視線を受け止め、さらに絢爛と笑ってみせた。心の中では、ナイフで切り刻まれるような痛みが走っているのに。

蓮、ごめんなさい。でも、こうするしかなかったの。

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