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花婿は俺なのに、オーダースーツを着るのは親友だった第3話

この話は約1884字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

頭が重く、浅い眠りを繰り返していた。

ようやくまどろみかけたとき、ヒステリックな声に叩き起こされた。

「陽色、どういうつもり?」

涼音は俺をベッドから引きずり起こし、リビングまで連れていくと、キャリーケースを指差した。

「荷物をまとめて何をする気?どこへ行くの?来週は結婚式なのよ。まだそんな当てつけみたいな真似をするつもり?」

俺はしばらく黙り込み、やがて口を開いた。「当てつけなんかじゃない。涼音、俺たちは別れよう」

彼女はその言葉が聞こえなかったかのように、苛立ちを露わにしてまくしたてた。

「司は、あなたがこの店の料理を食べたがっていたのを覚えていて、来なかったあなたのためにわざわざテイクアウトまで頼んでくれたのよ。なのに仮病を使って荷物までまとめて。今さら結婚の条件をつり上げようっていう魂胆なの?」

俺は眉をひそめた。

「涼音、正気か?」

「そういうところよ」

涼音は冷ややかな顔をした。

「司が言っていたわ。あなたの家は最初、2000万円を要求してきたって。でも彼が間に入って何度も説得してくれて、200万円まで下げさせたそうじゃない。

陽色、私にはお金があるけど、都合のいいカモになるつもりはないの。2000万円も出せば、あなたより顔がよくて優秀な男なんていくらでも見つけられる。わざわざあなたを選ぶ必要なんてないわ」

俺の口元は引きつり、怒りで体が震えた。

「俺が金目当てでお前と一緒にいるとでも言いたいのか?

7年間、お前が俺にくれたものを全部合わせても、司が履いているスニーカー1足分にも満たない。それでも俺はお前のそばにいた。俺が金を狙っていると、本気で思っていたのか?」

彼女は顔をそむけ、冷たく言い放った。「ほら、またそうやって細かく勘定して。お金なんて気にしていないと言いながら、結局は誰がいくら使ったか計算してるじゃない」

その瞬間、俺は呆れて笑うしかなかった。

涼音をあまりにも愛してしまった俺が、馬鹿だったのだ。

だからこそ、彼女に何度も俺を傷つけることを許してしまった。

「もういい。涼音、俺たちはこれで終わりだ」

そう告げると、俺はキャリーケースを引いて振り返ることなく家を出た。

彼女が俺の「別れよう」という言葉を聞き逃したのか、それともいつものように、ただ俺が拗ねて無視を決め込んでいるだけだと思ったのかはわからない。

だが、もうどうでもよかった。

この女を、俺はもう必要としていない。

その日の午後、E国へ持っていく日用品を買いにショッピングモールへ行くと、角を曲がったところで涼音と司に鉢合わせた。

司がショッピングカートを押し、涼音は彼の腕を親しげに組んで歩いていた。

動揺のあまり、俺は山積みにされていた石けんの陳列棚にぶつかってしまった。

石けんが大きな音を立てて床に散らばる。

2人は俺の姿を見た途端、弾かれたようにサッと身を離した。

「陽色、誤解しないでくれ。涼音に頼まれて、結婚式の買い出しに付き合ってるだけなんだ」

司は慌てて弁解しながら、カートに入った結婚式用の小物や新居用の寝具を見せてきた。

「何を言い訳してるの?いちいち面倒くさい。

たかがスーツ1着のことで、いつまで拗ねてるつもり?」

涼音は俺に見せつけるように再び司の手を取り、レジへと歩き出した。

その背中を見つめていると、胸にぽっかりと大きな穴が開いたようだった。

以前、俺が結婚式の準備のために一緒に買い物へ行ってほしいと頼んだとき、彼女はすべて拒否した。

そのうえ、こう吐き捨てたのだ。

「私は1時間で数十万円稼ぐのよ。あなたの買い物のために時間を空けろって?頭おかしいんじゃないの?」

それなのに今、彼女は司のためにわざわざ時間を空け、本来なら俺たち2人で選ぶはずの結婚用品を一緒に選んでいる。

モールを出ると、司はすでに購入した荷物をすべて車のトランクに積み終えていた。

彼は当然のような顔で運転席に乗り込み、窓を下ろして俺に手を振った。

「陽色、早く乗れよ。行きたいところまで送ってやるからさ」

俺が動かずにいると、司はわざとらしく声を上げた。

「あれ、ひょっとしてこの車、涼音が僕に買ってくれた新車だって知らなかった?」

すると、司が得意げに口を開いた。

「涼音の送り迎えをすることが多いから、そのお礼に買ってもらったんだ。嫉妬するなよ」

涼音も冷たく言い放つ。「乗りたくないなら、無理に乗せたりしないわ。甘やかすつもりもないし。男のくせに、いつまでもネチネチと。本当にみっともないわね」

言い終わるか終わらないかのうちに車は発進し、俺の目の前を走り去っていった。

排気ガスを顔に浴びながら、俺はその場にただ立ち尽くしていた。

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