脱毛症の親友は私に母乳を求めてきた第2話
この話は約998字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
私は二度と生きられるとは思っていなかった。美香には相応の報いを与えたのだから。
でも神様は私を憐れんでくださったのか、さくらちゃんを失ったままで終わらせず、もう一度さくらちゃんを守る機会を与えてくれた。
美香とは小学校からの付き合いで、十数年来の親友同士だった。
そのため、彼女は私の家の暗証番号も知っていた。それが後になって、取り返しのつかない事態を招くことになるとは。
前世での出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡る中、さくらちゃんはすっかりお腹いっぱいになっていた。
私の腕の中で、すやすやと眠っている。
手を伸ばして、さくらちゃんの口元に残った母乳を優しく拭き取った。
さくらちゃんは良い夢でも見ているのか、指をくわえて嬉しそうな寝顔を見せている。
その姿を見ていると、涙が溢れてきた。失って、また取り戻せた喜びと切なさが込み上げる。
夫は私の様子を心配そうに見て、慌てて声をかけてきた。
「どうしたの?さくらちゃんが強く吸い過ぎて痛かった?」
私は首を振って、大丈夫だと答えた。
今すぐにやるべきことは玄関の暗証番号の変更だ。美香が二度と入れないようにしなければ。
私が親友だと信じていた時、彼女は私を都合のいい道具としか見ていなかったのだ。
時計を見ると、前世で美香が母乳を分けてほしいと言ってきた時刻まであと5分。
そして予想通り、5分後にLINEが届いた。
「ゆうちゃん、母乳を少し分けてもらえない?最近寝不足で抜け毛がひどくて、このままじゃ薄毛になっちゃいそう。
母乳で頭皮マッサージすると毛根が活性化し、髪が生えやすくなるって聞いたから、少しだけ分けてほしいんだけど」
断りの返信を打とうとした瞬間、インターホンが鳴った。
「ゆうちゃん?家にいないの?あれ、ドアロック開かないんだけど、暗証番号変えた?」
返事をしないでいると、ドアを激しく叩き始めた。
「ゆうちゃん?この時間なら絶対家にいるはずなのに」
突然、ドアを叩く音が止んだ。帰ったのかと思った矢先。
次の瞬間、彼女はドアを蹴り始めた。無理やり開けようとしている。
「さっき下から電気ついてるの見たのに。なんで開けてくれないの?私、何か悪いことした?」
夫は30分前に緊急手術の連絡を受けて病院に駆けつけ、私はまだ産休中。今は私とさくらちゃんだけ。
本当は美香にドアを開けるつもりはなかったけれど、彼女の騒ぎ方はエスカレートする一方で、近所迷惑も無視できなくなってきた。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)