股切断された私、正気を失った夫第2話
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気力を振り絞ってスマホで助けを呼ぼうとしたが、スマホはすでに壊れている。
夜が訪れ、部下たちも次々と立ち去っていった。
下半身からじわじわと血が流れ出し、恐怖に襲われた私は、そっとお腹に手を当てた。
「助けて……誰か!
誰かいませんか!」
必死に叫び続けたが、通りには誰一人いない。
恐怖の涙と雨が混ざり合い、絶望が胸を満たしていく。
明け方にかけて気温は急激に下がり、両脚の感覚はすでになくなっている。下腹部は断続的に痛み、私は冷たい地面に横たわったまま、通りすがりの誰かの助けを待つしかない。
やがて、遠くから一つの影が近づいてきた。それは家の執事である誠(まこと)だ。
「奥様、ここにいらっしゃってよかった。探し回らずに済みました」
私は焦るように問いかけた。
「恒一が、私を病院へ連れて行くように言ったの?」
これまでの情を少しでも思い出してくれたのだと、失望しきっているはずなのに、どこかでわずかな期待を抱いてしまった。
だが誠は困ったような顔をした。
「いえ、違います。社長は、奥様が逃げ出していないか確認しろと。
それと、夏目さんがまだ怒っておられるので、憂さ晴らしに来いとも……」
そう言うと、誠は恒一にビデオ通話をかけ、カメラを私に向けた。そして家に連れ帰ってよいか尋ねた。
すると、恒一の苛立った声が響いた。
「そいつは子どもを盾に同情を引こうとしてるだけだ。少し痛い目を見せないと懲りない。放っておけ!」
続いて、凛音の涙声が聞こえてきた。
「恒一、もう安井さんに怒らないで……私が馬鹿で、初めての運転で人を轢いて怖くなって逃げちゃっただけなの……安井さんが助けてくれないのも無理はないわ……
安井さんが私を刑務所に入れるって言うならそれでもいい。でも私、もう恒一の子を身ごもってるの。安井さんはずっと授からなかったでしょ?この子が生まれたら、安井さんに育ててもらうわ。私、江崎家の奥様の座を奪うつもりなんてないから」
それを聞いた恒一は彼女を抱き寄せ、優しく言った。
「凛音、安心しろ。最高の弁護士をつける。絶対に刑務所には行かせない……」
その言葉に、私の心は震えた。
「恒一、私だって妊娠してるのよ!血、見えないの?今すぐ手当てしなければ、この子は助からない!」
体の痛みと心の痛み、どちらが強いのかもう分からない。ただ病院へ行きたい。
「お願い……これはあなたの子でもあるのよ。後でどう扱ってもいいから、今は病院へ……」
恒一は一瞬ためらいの表情を見せた。
だが隣の凛音が含みのある口調で言った。
「恒一、安井さんの言うことなんて信じないで。ずっと子どもができなかったのに、急に妊娠なんておかしいでしょ?きっと嘘よ」
その言葉に、恒一の顔は怒りに染まった。
「いい加減にしろ、絵夢!こんな時まで俺を騙すのか。凛音に先を越されたのがそんなに悔しいのか?」
脅すつもりはないが、彼はもう何も聞こうとしない。
「来週お父さんが帰ってくるのを忘れないで。あなたが私にこんな仕打ちをしていると知ったら、自分の立場がどうなるか分かってるの?」
「嘘つきが、また親父を持ち出して脅すのか。どんな手を使おうと、もう君の言葉は信じない!」
今夜、彼からこれほど傷つく言葉を浴びせられ、もう何も感じないと思っていた。
だが悲しみは波のように押し寄せ、私は涙をこらえようと必死に顔を上げた。
すると再び、卑しくすがるように頼んだ。
「今はただ病院へ行きたいの。脚が本当に痛いの……お願い、連れて行って……」
私はドレスをめくり、骨が突き出た脚を見せようとした。
だが彼は苛立たしげに遮った。
「運転手は俺が手配したんだ。大した怪我になるはずがない。まだ分別をわきまえてないようだな」
言い終わる前に、通話は切られた。
誠は不機嫌そうに私を見下ろした。
「まったく厄介な女だ。こんな夜中に余計な手間をかけさせて、しかも社長の父親を盾にするとは。
今さら誰があなたを助けるっていうんだ」
そう言うと、誠は遠慮なく私の両脚を踏みつけた。骨が再び折れるかすかな音がした。
抵抗する力もなく、私は地面に押さえつけられ、平手打ちを浴びせられ、唾まで吐きかけられた。
やがて誠は疲れたのか、最後に一蹴りして立ち去っていった。
私は完全に力尽き、そのまま地面に横たわり、ゆっくりと意識を失っていった。
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