絶望を乗り越え、真の幸せへ第3話
この話は約1781字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
【離婚の手続きをお願い】
相手からすぐに返信が来る。
【本気か?】
【本気よ】
かつて両親は、結婚後に私が不当な扱いを受けることを心配して、湊にこの協議書へサインさせていた。
彼は、一生私を大切にするからこの紙はただの紙くずになると言っていた。
スマホの画面を閉じて、ベッドに横たわる。息子のベビーリングを握りしめたまま、泥のように眠りに落ちた。
どれほど眠っただろうか。突然、二人の使用人にベッドから乱暴に引きずり下ろされた。太いロープで体を縛り上げられる。
「旦那様からの命令です。連れ去った男の子の居場所を吐かないなら、精神科病院に叩き込むと」
抵抗も虚しく引きずられて、膝を壁に打ち付ける。冷や汗が出るほどの激痛が走る。床に勢いよく投げ出されると、腹部に鋭い痛みが走った。
莉乃が赤ん坊を抱いて、目を赤く腫らして泣いていた。私の姿を見るなり、泣き崩れて土下座する。
「栞さん、私を殴っても罵っても構いません!だからお願い、私の子を傷つけないで!まだ生まれて1ヶ月も経ってないんです、栞さんの折檻なんて耐えられません!」
湊は顔を曇らせて前に歩み出ると、私の首を強く締め上げた。
「お前だって子供を失った経験があるのに、いつからそんなに残酷になったんだ?莉乃に同じ苦しみを味わわせるつもりか」
首を絞められて、息が詰まる。「違う……私、何も……してない」
しかし莉乃は私にすがりつく。
「栞さん、病気なら精神科病院で治療してもらってください。お願いですから、こんな時に発作を起こさないで!」
彼女の叫び声と、赤ん坊の張り裂けるような泣き声が、湊の理性を完全に吹き飛ばした。
彼は私の首を掴んだまま持ち上げて、歯を食いしばって言い放つ。
「発作が出たんだな?いいだろう、今すぐ病院へ連れて行ってやる」
無理やり車に押し込まれて、ドアに頭を打ち付けて鈍い音が響いても、彼が同情の目を向けることはなかった。
車が停まったのは、ある精神科病院の前だ。恐怖で車内の隅に縮こまっていたが、力ずくで引きずり出される。
「今さら怖いのか?だがもう遅い。あの子の居場所を吐くまで、絶対に帰さない」
病室で私を押さえつけて、湊は医師に最も早く口を割らせる方法を命じた。その尋常ではない威圧感に怯えた医師は、震えながら答える。
「も、もっとも即効性があるのは……電気けいれん療法です」
湊の顔に一瞬、ためらいの色がよぎる。すると、ついてきていた莉乃が突然彼の腕を掴んで泣き出した。
「お願い、早く赤ちゃんを見つけて。こんなに長い間連れ去られて、生きてるかどうかも分からないのよ」
再び冷酷に決意を固めた湊の表情を見て、私は恐慌状態に陥る。
「私が罪のない子供に手を出すわけないじゃない!」
しかし彼は私の言葉に全く耳を貸さない。そして、私を治療用の椅子に固定するよう命じた。
「一刻も早く子供の居場所を聞き出せ」
医師は頷いて、問答無用で機器の出力を上げた。一瞬にして電流が体内を駆け巡って、骨の髄まで焼き尽くすような痛みが走る。
拳を握りしめて、悲鳴が病室に響き渡る。腹部の激痛に恐怖を覚えて、荒い息を吐きながら湊に助けを求めた。
「本当に……私じゃない……お腹が、痛い……」
しかし湊は、虫けらでも見るような目で私を見下ろした。
「痛いのが嫌なら、さっさとあの子の居場所を言え。じゃないともっと痛い目にあうぞ」
全身を苛む痛みに頭が真っ白になって、やがて下半身から生温かい液体が流れ出すのを感じた。
最後の力を振り絞る。「妊娠……してるの……早く、病院へ……」
流れ出す血を見て、湊の瞳孔が収縮する。「どうしてこんなに血が出てるんだ?」
莉乃が彼の手を握って、慰めるように言う。「生理が来ただけよ。心配しないで」
「ずっと避妊してたんだ、妊娠するはずがない。どうやら俺はお前を甘やかしすぎたようだな。そんな見え透いた嘘で騙せるとでも思ったか」
湊は安堵の息を吐いて、再び私に向ける目には嫌悪しか残っていない。彼はさらに電流を上げるよう命じると同時、私はついに耐えきれず意識を手放した。
再び目を覚ますと、病室には看護師が一人だけいる。私が目を開けたのに気づいて、彼女はひどく残念そうに告げた。
「……赤ちゃん、助かりませんでした。最善を尽くしたのですが」
痛みの引いた下腹部にそっと手を当てると、目尻から涙がこぼれ落ちる。脳裏にまた、陽太のあどけない顔が浮かぶ。
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