絶望を乗り越え、真の幸せへ第1話
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子供を持たないと誓った夫・結城湊が媚薬を盛られて、私・工藤栞の援助で大学を卒業した桜井莉乃とホテルで一夜を共にした。
その後、湊は全身にキスマークをつけたまま、私に懺悔した。
「俺の油断から過ちを犯してしまった。あの子にはもう十分な補償をして、海外へ留学させた。
栞、お前への愛は永遠に変わらないから」
罪を償おうとするかのように、湊はためらいもなく自分の腹をナイフで三度も刺した。
飛び散る血を見て私は理性を失って、「湊のせいじゃない」と泣き叫んだ。
それから一年後、お盆の親戚の集まりでのこと。
莉乃が湊との間にできた男女の双子を抱きかかえて、私の目の前で泣き崩れた。
「栞さん、子供たちから父親を奪わないでください。どうかこの子たちを哀れんで……
ご恩返しとして、この子たちは栞さんにお渡しします。どうか育ててやってください」
いつも冷静沈着な湊がその場ですぐに目を赤くして、懇願するような口調で言った。
「栞、俺たちは子供を持たないと決めているんだから、代わりにこの子たちを戸籍に入れて育ててくれないか?」
胸が抉られるような痛みを覚えながらも、喉の奥に込み上げる苦さを必死に押し殺して、平静を装って答えた。
「ええ、いいわよ」
結城家に響き渡る歓声と笑い声を聞きながら、私は結婚指輪を外した。
そして、結婚前にサインさせておいた離婚協議書を弁護士に送信した。
* * *
子供を持たないと誓った夫・結城湊(ゆうき みなと)が媚薬を盛られて、私・工藤栞(くどう しおり)の援助で大学を卒業した桜井莉乃(さくらい りの)とホテルで一夜を共にした。
その後、湊は全身にキスマークをつけたまま、私に懺悔した。
「俺の油断から過ちを犯してしまった。莉乃にはもう十分な補償をして、海外へ留学させた。
栞、お前への愛は永遠に変わらないから」
罪を償おうとするかのように、湊はためらいもなく自分の腹をナイフで三度も刺した。
飛び散る血を見て私は理性を失って、「湊のせいじゃない」と泣き叫んだ。
それから一年後、お盆の親戚の集まりでのこと。
莉乃が湊との間にできた男女の双子を抱きかかえて、私の目の前で泣き崩れた。
「栞さん、子供たちから父親を奪わないでください。どうかこの子たちを哀れんで……
ご恩返しとして、この子たちは栞さんにお渡しします。どうか育ててやってください」
いつも冷静沈着な湊がその場ですぐに目を赤くして、懇願するような口調で言った。
「栞、俺たちは子供を持たないと決めているんだから、代わりにこの子たちを戸籍に入れて育ててくれないか?」
胸が抉られるような痛みを覚えながらも、喉の奥に込み上げる苦さを必死に押し殺して、平静を装って答えた。
「ええ、いいわよ」
責め立てることもなく承諾したのを見て、湊は莉乃を助け起こして、興奮した面持ちでこちらを見る。
「栞、本当にありがとう。これからこの子たちの母親はお前だけだ」
湊の慈愛に満ちた視線が双子に注がれて、結城家も普段の喧騒が嘘のように静まり返る。
胸が締め付けられて、唇から苦笑が漏れる。もう、すべてが明白だ。
彼らはとうの昔に裏で口裏を合わせて、このお盆の日に認知を迫ることで、私を逃げ場のない状況に追い込むつもりだ。
湊が赤ん坊を一人抱き上げて、歩み寄ってくる。
「まだ名前が決まってないんだ。栞が名付けてくれないか」
おくるみの中で熟睡する小さな顔を見つめると、脳裏にもう一つのあどけない顔がフラッシュバックする。胸がぎゅっと締め付けられて、湊の顔を見据えた。
「離婚しよう」
湊は一瞬にして顔色を変え、慌てふためいて、すがるような声を出した。
「離婚なんてしない。莉乃は俺を助けるために妊娠したんだ。恩を仇で返して、子供を堕ろさせることなんてできなかったんだ。
子供を作らないことで、親父やお袋からプレッシャーをかけられていたのは知ってる。でも今、この子たちをお前の子供として育てられるなら、みんな幸せじゃないか?」
私を聖人君子のように祭り上げて、みんなのためにこの子たちを育てるはずだと決めつけている。
私の表情が強張るのを見て、ついに義母・結城祥子(ゆうき しょうこ)が口を開いた。祥子は湊がDINKsを選んだことで、ずっと私に不満を抱いていた。
「栞を責めるわけじゃないけど、湊は結城家の跡取りなのよ。あんたのためにプレッシャーに耐えて子供を作らない道を選んでくれたじゃないの。
湊を愛していると口癖のように言っているけれど、どうして彼の子を外に放っておけるの?
莉乃はいい子よ、一気に二人の孫を産んでくれたんだから。本来なら彼女を結城の嫁に迎えてもおかしくないわ。
でも湊はあんたを愛していて、どうしても辛い思いをさせたくないって言うのよ。本当に彼を困らせる気なの?」
「母さん、もう言わないでくれ!」湊が鋭い声で祥子の言葉を遮る。
「離婚はしない。栞は優しいから、子供たちを苦労させるような真似はしないはずだ」
彼の視線が、赤く染まった私の目とぶつかる。
「莉乃のことは心配ない。お前の結城家での地位を脅かすようなことはさせないから」
莉乃の手をきつく握り締める彼を見つめながら、心の底に苦い思いが広がっていく。
その場にいる誰もが知っている。湊と私がやむを得ずDINKsになったことを。かつて、私たちにも可愛い息子がいた。
けれど、1歳になったばかりの時、湊を恨む敵対者の手によって命を奪われたのだ。我が子を失った苦しみを受け入れられず、3年間も精神を病んでしまった。
その3年間、湊はあらゆるプレッシャーに耐えて、決して離婚しようとはせず、私を精神科病院へ送ることもしなかった。
正気を取り戻した後、彼は二度と子供は作らないと誓ってくれた。二度と私に子を失う苦痛を味わわせないために。
あの時の誓いはまるで昨日のことのように鮮明なのに、今、彼は別の女が産んだ子を抱いて、私の良心につけ込んでいる。
かつて学費を援助してやった莉乃に視線を移す。まさか彼女の恩返しが、私の夫の子供を産むことだとは思いもしなかった。
私と目が合うと、彼女はおびえたように肩をすくめて、目元を赤く染めた。
湊は痛ましそうに彼女を見つめる。再び私に向き直った時には、その目から微かに残っていた優しさが完全に消え去っていた。
「栞、莉乃を怖がらせるな」
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